社内やディーラーの協力も得ての参戦
この活動は、社内的にも大きな意味があるという。「モータースポーツは人も育てます。現在、兼務という形でマツダのエンジニアが関わっていますし、メカニックも普段は広島マツダのディーラーでサービスをしている方です」。これは言うまでもなく、人を育てる活動だ。話によると自ら志願・応募して来ている方がほとんどで、その人数は明かせないものの、かなり多いとか。割合としては、メーカーのエンジニアは7割、ディーラーのメカニック3割といったところ。メカニックは現在広島マツダの人だが、ほかの地域の関係者も視察に来ていた様子。今後は採用エリアを増やしていくことだろう。
とはいえ、プロモーションの効果を考えると、国内で最も人気の高いSUPER GTの方が望ましいのでは? 「スーパー耐久はプロドライバーのほかに、アマチュアドライバーや自動車メーカーの開発ドライバーも参戦しています」との返答。しかし、マツダがスーパー耐久シリーズに参戦するのと、どのような関係があるのだろう? 「モータースポーツを、もっと身近にしたいんです。そして将来までモータースポーツを続けていきたい。その時、クルマが好きな人と一緒に走るよろこびの未来を作っていきたいんです」とのこと。人馬一体のクルマを作り続けるマツダらしい理由だ。
「モータースポーツのカテゴリーはピラミッドがあって、スーパー耐久の下にも当然クラスがあり、ナンバーのついた車両で行なうレースもあります。たとえばロードスターのワンメイクですね。そこから、上位カテゴリーに挑戦したいという方は大勢いらっしゃいます。そういう方々に挑戦する門を開こうということで、昨年のもてぎ戦からST-5クラスにロードスターを投入しています。まだ試行錯誤の段階、体制を含めてトライアルという形ではありますけれども、そういったシステムを作っていきたいです」。
現在マツダは、ロードスターを使った様々なレースを実施している。手軽にサーキット走行できるパーティーレースものから、地方のシリーズ戦、そして全国大会とカテゴリーはさまざま。そして、今後は上位入賞した方に、スーパー耐久シリーズで走ってもらおう、という構想なのだ。
さらに「最近はeスポーツが盛んですよね。今までモータースポーツの選手になるには、よほど親からの英才教育を受けてきた人じゃないと入れなかったと思うんです。ですが、ゲームで始めた人たちがリアルでも走りたいという希望が増えています。私たちとしては、今年からグランツーリスモで年間全5戦のマツダスピードレーシングカップというのを実施しています。そこで上位の方にリアルのサーキットを走る機会を作ろうと思っています」。
eスポーツからリアルへの道筋を作ろう、というところまで、マツダは考えているわけだ。ちなみに参加条件は、マツダスピードレーシングアプリに登録するだけ。もちろんグランツーリスモをプレイする環境は必要になるが、車両そのものを所有する必要はない。その人材が有望だったら、スーパー耐久シリーズで走ることができるかもしれない。アプリではイベント情報のほか、グッズの情報、そして会員同士の交流(SNS)も用意されている。
すでにキャップやブルゾンといった応援グッズなども用意(サーキットでは販売していない)しており、展開によってはスーパー耐久で培ったノウハウをつぎ込んだ部品や車両を販売する可能性を、否定はしていなかった。
「私達はクルマやモータースポーツのファンを増やしたいです」というマツダの取り組み。それは先代からの意思でもあるように思う。30年ぶりに復活したマツダの取り組みにこれからも注目していきたい。