業務改善の手順とポイントは? 成功したアイデアも紹介
本記事はユーザックシステムが提供する「DX GO 日本企業にデジトラを!」に掲載された「業務改善の手順とポイントは?成功したアイデアも紹介」を再編集したものです。
業務効率化や経費削減などを目的に、業務改善を必要としている担当者は少なくないでしょう。しかし業務改善といっても、何からどう手を付ければいいかわからないと悩んでいる人もいるのではないでしょうか?
業務改善を成功させるためには、ポイントを押さえて正しい手順を踏む必要があります。ここでは、業務改善の手順やポイント、改善方法のアイデアなどを紹介します。
業務改善とは
業務改善とは業務の内容や業務全体のフローを洗い出し、そのなかから課題を見つけて改善することです。ムリ・ムラ・ムダを削除し、業務が効率的に行なえるように改善します。
一度業務改善を行なうと、新たな課題が見えてくるため、次はその課題を解決するための業務改善を行ないます。つまり、業務改善は一度実行して終わるものではなく、継続的に繰り返して行なっていくものです。
業務改善の対象
業務改善の対象になるのは、ルーチンワークといわれる単純な定型業務が多くなります。効率化しやすく、改善策を講じやすいからです。
一方で、企画やマネジメントなどのクリエイティブな業務や管理業務は、あまり業務改善に向いていないとされています。しかしこれらの業務でも、細かく見直せば標準化やシステム化による効率化の余地があり、そこから業務改善を行なうことは可能です。
なぜ業務改善が必要なのか?
業務改善が必要とされるのには、大きく分けて3つの理由があります。
・働き方改革の実現のため
現状では、働き方改革の実現が難しい現場もあります。業務のムリ・ムラ・ムダがなくなれば、無用な長時間労働が解消でき、時短勤務やテレワーク、フレックスタイム制など柔軟な働き方に対応しやすくなります。働き方改革の実現に近づくことが可能です。
・社員のワークライフバランスの実現のため
労働人口の減少により業界を問わず人手不足が進んでいます。そのため長時間労働が避けられず、社員のワークライフバランスの実現が難しいケースも少なくありません。業務改善を行なうことで適正な労働時間内で業務が終わるようになれば、ワークライフバランスの実現につながることが期待できます。
・コスト削減のため
企業の利益を最大化するため、適切なコスト削減は企業にとっての重要課題です。業務改善を行なうことで、ムダな業務が削減され、その業務にかかっていたコストを削減することが可能になります。
業務改善の効果
業務改善を行なうことで、次のような効果が見込めます。
・業務効率化
業務の標準化やシステム化を行なうことで、無駄な業務を省き、業務を効率化することが可能です。
・生産性向上
業務効率化により、同じ量の作業でも作業時間を減らすことができます。
・コスト削減
無駄な業務をなくすことで、例えば人件費や交通費、消耗品費、光熱費など、その業務にかかっていたコストを削減することが可能です。
・労働環境の改善
無駄な業務の削減や作業負荷分担の見直しにより個人の作業時間が減り、長時間労働の解消が可能です。
これは人件費の削減だけでなく、働き方改革の実現や社員のモチベーション向上にもつながります。
業務改善の概要や向いている業務については、「業務改善とは?進め方や効果、向いている業務・部門まで幅広く紹介」にて解説しています。
業務改善の手順とポイント
業務改善の手順と注意点を紹介します。
業務改善の手順5つのステップ
1. 業務の可視化
どのような業務にどれだけ時間がかかっているのか、だれがどのような作業を行なっているのかなどを洗い出します。ルーチンワークだけでなく、不定期の業務まで含めてリスト化しましょう。そこから、どこにムリ(社員にかかっている過剰な負担)、ムラ(部門ごと・社員ごとの負担の偏り)、ムダ(不要な作業や業務)があるのかを見ていきます。
2. 目標設定
1の手順で見えてきた改善が必要なポイントには、どのような問題があるのかを分析し、改善目標を設定します。業務単位での改善を行なうため、個別の社員や作業ではなく、業務フロー全体での目標を設定することが必要です。また、目標を達成するために必要な改善点とその内容をリスト化し、タスク化します。
3. 優先順位づけ
改善が必要な業務がいくつかある場合は、優先順位をつけ、その順序で業務改善を行ないます。優先順位をつけるときの判断基準には、次のようなものがあります。
・業務の重要度
・改善の難易度や取り組みやすさ
・業務改善に必要なコスト
・業務改善による予測される効果の大きさ
4. 改善計画の立案
タスクと優先順位をもとに、業務改善の詳細を計画します。計画を策定する際には、目標設定時にタスク化した作業を部署やチームに割り振り、マニュアル(業務改善についての手順書)を作成します。マニュアルの作成によって業務改善の手順が明確になり、方向がブレることなく目標を達成することが可能です。また管理職や社員全員に共有することで、業務改善についての認識を共有でき、改善がスムーズに進む効果もあります。
5. 計画の実行
マニュアルに従って改善計画を実行します。ひとつのタスクが終るごとに成果を確認し、PDCAサイクルを回しながら中長期的に取り組みましょう。効果があった改善策はそのまま続け、効果がなければ、再度の業務改善を行ないます。
業務改善のポイント
・QCDの向上を心がける
業務改善によって業務効率化が実現すればいいだけではなく、商品やサービスについてQCDの向上、バランスを心がける必要があります。QCDは「Quality、Cost、Delivery」の略語で、以下のような意味合いになります。
Quality:品質。製品の品質を向上すること、不良品が少なくなること
Cost:費用。企業はコストを下げること、消費者にとっては適正価格で製品が供給されること
Delivery:納期。求められた数量と納期が守られていること
以上のうち、もっとも重要なのはQualityです。Qualityを向上させるには、適切な費用、無理のない納期が必要です。
・目的・目標を明確にする
目的が異なれば、同じ業務改善であっても、改善策の優先順位が異なってきます。まずは、「働き方改革の実現」「経費削減」など、目的を明確にすることが大切です。
また、目的を達成するために行なう改善策の目標は、具体的かつ定量的に設定します。例えば「長時間労働の解消」ではなく「対象となる業務フローで作業時間を20%削減する」と設定するのです。効果を評価しやすくなり、取り組む社員のモチベーションにもつながります。
・優先順位を明確に
すべての業務を同時に平行して改善することはできません。業務単位で優先順位をつけて、着実にひとつひとつ改善策を実行していくのが現実的です。
・長期的な視点を持つ
業務フローの修正には時間がかかり、なかなか結果が出ないことも少なくありません。また、思うような結果が出ず、別のアプローチを検討しなければいけなくなるケースもあります、前述のように業務改善は一度で終わるのではなく、継続的に繰り返すものなので、焦らず長期的な視点で取り組む必要があるでしょう。
・現場の声を重視する
業務改善はトップダウン方式で行なわれることが多いため、現場の状況を無視した改善策や目標が設定されるおそれもあります。より現実的で効果的な改善策になるように、現場の声をしっかり反映させることが大切です。
業務改善のアイデア
業務改善には標準化やマニュアル化、フローチャート化、自動化、IT導入、文書の電子化、ペーパーレス化、オンライン会議の導入などさまざまな手法があります。
以上の手法を組み合わせた業務改善のアイデアで成功した事例を紹介します。
標準化と自動化の導入
小売業A社では、新店舗オープンの際にこれまでの業務プロセスの改善を実行しました。
店員の経験に頼っていた、いわゆる属人化した作業をマニュアルにし、フローチャートを作成することで業務を標準化したのです。これによって業務効率が向上しただけでなく、ヒューマンエラーの削減や効率的な新人教育の実施にもつながりました。
また、手作業で行なっていたマニュアルやフローチャートの作成にクラウドサービスを導入し、当該業務の効率化も実現しています。
文書の電子化とペーパーレス化
製造業B社では、これまで製品検査記録をすべて紙の帳票で保管していました。
IT環境を整備してクラウドサービスの電子帳票管理システムを導入し、電子帳票にすることでペーパーレス化を実現しました。帳票に関するワークフローも効率的になり、帳票の作成・承認・管理の手間を大幅に削減できました。
帳票の保管にかかる作業や場所も減り、検索も容易になったことで、大きな業務効率化につながっています。
オンライン会議の導入
サービス業C社では、オンライン会議の導入により、出張にかかるコストの削減に成功しました。
コロナ禍でオンライン会議やオンライン営業への抵抗が少なくなり、取引先とのやりとりにも活用できるようになりました。オンライン会議システムがあれば、自宅や遠隔地からもスムーズに参加でき、仕事を進めることができます。会議に出席するために出張する必要がなくなり、コストや勤務時間を大きく削減できました。
コロナ禍における業務改善の方法については、お役立ち資料の「【業務改善事例】コロナ禍における、業務現場が知りたい三大効率化事例」もご覧ください。
労働環境やビジネス環境が大きく変化している今こそ業務改善の好機
業務改善は多くの企業で行なわれています。しかし、業務改善には継続的に実行しなければ結果の出ない改善策も多く、即効性がある改革とはいえません。長期的な視野としっかりした計画のもと、繰り返しPDCAサイクルを回すことで、より大きな効果を上げることが期待できます。 現在はIT化が進み、テレワークが普及するなど、労働環境やビジネス環境が大きく変化しており、業務改善を行なうには良いタイミングです。業務改善を行なうことで、IT化をさらに推進し、DXを進めることにもつながるでしょう。事例を参考に、自社ではどのような業務改善ができるか、検討してみることをおすすめします。