「たてもの」と「まち」のイノベーション第15回

赤道直下に住まう「GREEN FLOAT」:

「海に浮かぶ100万人都市」清水建設のとんでもない構想

文●ASCII 漫画● ほさかなお

提供: 清水建設株式会社

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海を埋め立てなくてもビルやパビリオンは建てられる

── これが太平洋の真ん中だと浮いている意味があると思いますが、ここまで陸地に近いと、橋みたいに脚を生やして人工地盤を作れるんじゃないですか。

吉田 それはやっぱり、土地に対するダメージの少なさと思っていただければ。あれだけ杭を多数打ってしまうとダメージがあります。それに比べると浮いていた方がいい。(海面に)影ができる点は同じなんですけれども、ダメージを少なくできて、不要になったら移動できるのが利点です。

── なるほど。「瀬戸内海埋めちゃえばいいじゃん」とか乱暴なことを言いそうになるんですが、それだと環境インパクトが大きすぎると。

吉田 去年、ニューヨークのハドソン川できれいな公園が川の中にできたんですけども、あれも杭を打っているんですね。外から見ると浮かんでいるように見えるんですが、川の流れを考慮して杭を打ったのだと思います。

── 浮体は勝手に海に浮かべても大丈夫なんですか?

吉田 いえいえ、水面はすべて国のものですから許認可をいただかないといけないんです。たとえば、天王洲に「ウォーターライン」という寺田倉庫さんのレストランが浮かんでいます(現「T.Y.HARBOR」水上ラウンジ)。あれは「運河ルネサンス」という東京都が決めた運河の活用指針があり、そこに隣接する土地の何分の一という水面の利用権が設定されていました。

── へえ〜。それは東京都に払うんですね。

吉田 身近なところだと、ヨットを持っている人がヨットハーバーに停められていますよね。あれはヨットハーバーが都や自治体に権利を申し出てまとめて払っているわけです。

── 地代みたいな。

吉田 そこから船主さんに平米あたりの価格を知らせているわけですね。

── 高いんですか?

吉田 土地に比べると水面を借りる権利、海面利用権というのは安くなっています。

── 土地と比べてコストは逆転しないんですか?

吉田 条件によっては浮体の方が安くなります。

── 東京湾だとどうなんですか?

吉田 埋め立ては沖合いに行くほどお金がかかるんですが、20メートル以上の深さになると特殊な埋め立てが必要になってくるので、そこからは浮体式の方が安いというのがざっくりした試算です。

── まだコストよりも機能的なメリットの方が大きいんですかね。

吉田 浮体式がいいのは、簡単に撤去できて、いらなければよそへ持っていけばいけるということです。昔、グレートバリアリーフにすごいホテルシップが浮かんでいたことがありました(フォーシーズンズ・バリアリーフ・リゾート)。中にテニスコートや三つ星ホテルがあるようなところなんですが、景色が海しかなかったためかリピーターが来ず、1年で採算が取れなくなったんです。その後そこをベトナムが買い、ホーチミンに流れている川に係留して、地域を活性化しました。しかしその後、陸側にホテルができたことで不要になり、第三の人生として北朝鮮に行きました。今は使われていませんが、38度線の上に係留されています。

── へえ〜。観光用なんですか?

吉田 観光拠点として南側の人が行くようになったということです。最近は南北交流がなくなったのでただの錆びた水上船になっているそうですけど。

── 浮体って、火力プラントを洋上に浮かべて発電することもできるんですか?

吉田 一定の条件下であれば上にはなんでも載せられますので、できますね。

── それなら陸上にあっては困るもの、迷惑をかけるものを海に出してしまえばいいじゃないですか。ジェフ・ベゾスの宇宙計画はほぼそれらしいですよね。

吉田 ただ、こちらは地球の中なのであまり極端なことはできません。我々はこれだけ小さくてもGREEN FLOATと言い続けていて地球環境のことを考えているんですよね。地球環境を悪くするようなものは商売にしない。GREENの名に恥じないものをやっていこうと考えています。

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