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商標、特許、ビジネスモデルの権利化 起業家が知りたい知財の疑問を解決

特集
STARTUP×知財戦略

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 この記事は、特許庁のスタートアップの知財コミュニティポータルサイト「IP BASE」(関連サイト)イベントレポートの転載記事です。

 特許庁スタートアップ支援班は2022年11月25日、IP BASE主催のイベント「スタートアップが知りたい知財の疑問を1000本ノックですべて回答 by IP BASE in 広島」を広島市のまちづくりワーキングスペースport cloud(ポクラ)にて開催。イベントでは、iCraft法律事務所 弁護士 内田誠氏、株式会社Be&Do 代表取締役/CEOの石見一女氏が登壇し、知財の基礎知識のセミナーと先輩起業家の知財活動の講演に加えて、スタートアップから多く寄せられるあらゆる質問に答える「知財疑問1000本ノック」を展開した。

特許庁のスタートアップ支援施策

 冒頭では、特許庁総務部企画調査課スタートアップ支援係長の大塚美咲氏より「特許庁のスタートアップ支援施策」について紹介した。

特許庁総務部企画調査課スタートアップ支援係長 大塚 美咲氏

 スタートアップの企業価値は、技術やアイデアといった知財に集約される。しかし、日本のスタートアップは創業時の知財意識が低く、資金調達やM&AなどのEXIT機会を損失するリスクがある。知財特許庁では、スタートアップの知財を支援するための施策として、「知財アクセラレーションプログラム(IPAS)」と「IP BASE」の2つの取り組みを実施している。

 知財アクセラレーションプログラム(IPAS)は、創業期のスタートアップ企業に対して知財メンタリングチームを約5か月間派遣し、知財戦略の構築を支援する。知財メンタリングチームは、VCなどビジネスの専門家と弁理士・弁護士など知財の専門家で構成され、ビジネス戦略と連携した知財戦略が構築できるのが特徴だ。IPASの成果をまとめた事例集をスタートアップ向け知財コミュニティポータルサイト「IP BASE」にて公開中だ。

 またIPASの支援を体験できる2時間のスポットメンタリングも公募している。起業準備中の個人も応募できる。

 IP BASEは、スタートアップと知財の専門家、スタートアップ支援関係者のネットワークを構築するための事業だ。IP BASEポータルサイトでは、知財の基礎知識やインタビュー記事の掲載、イベントや勉強会の開催情報を発信している。また知財専門家の検索機能もあるので活用するといいだろう。

 また今年度からはベンチャーキャピタルへの知財専門家派遣調査事業を試行的にスタート。知財専門家をVCに派遣し、そのうえでキャピタリストとともにスタートアップを支援することで、VCに知財支援のノウハウが蓄積されることを目的としている。2023年度は派遣先VCを公募し、本格実施に移行する予定だ。

スタートアップのための知財基礎知識

 続いて、iCraft法律事務所 弁護士・弁理士 内田誠氏が登壇し、「スタートアップのための知財基礎知識」と題して、知財戦略構築に取り組むために知っておきたい基礎知識を解説した。

iCraft法律事務所 弁護士・弁理士 内田誠氏

 知的財産権の取得は、「技術、アイデア、表現、デザイン技術」を保護する手段であり、目的ではない。本来の目的は、模倣の予防、参入障壁といった保護と、会社の価値と評価の向上にある。これを意識して知財戦略を立てることが重要だ。

 知財権の類型としては、「技術、アイデア」は、「特許権、実用新案権、営業秘密、限定提供データ」の4つ。「表現、デザイン技術」は、「著作権、意匠権、形態模倣(不正競争防止法)」の3つ。ブランドは、「商標権、商品等表示(不正競争防止法)」の2つで守られる。これらのうちどの権利で自社の製品やサービスを保護できるのかを検討していくのが知財戦略構築の出発点となる。

知的財産権には登録が必要なものと不要なものがある

 技術やアイデアは、特許権を取り公開するか、ノウハウとして秘匿するかを選択する必要がある。出願と秘匿の選択基準として、(1)模倣の容易性、秘密保持の可能性、技術解析の容易性、(2)技術価値の長さ、(3)競合他社による権利化の可能性、(4)競合他社による権利化後の回避の容易性の4つを挙げた。

 株式会社Be&Do 代表取締役/CEOの石見一女氏による講演では、同社の事業概要と知財戦略を紹介した。株式会社Be&Doは、心理的資本に着目し、人材育成プログラム、心理的資本を高める認定講座、メンタリングサービス、心理的資本診断ツール「Habi*do」などを提供する事業を展開している。

株式会社Be&Do 代表取締役/CEO 石見一女氏

 同社は、マネジメント&トレーニングツールのHabi*doに関連する特許のほか、多くの商標を取得しているのが特徴だ。積極的に商標を取るようになったのは、Be&Do創業前の人材紹介事業で株式会社キャリアステージの商標を取った際の経験によるものだ。1つは、商標出願のタイミングで大手企業が同名の商標を出願中であり、変更してもらったという。もう1つは、情報商材会社が株式会社キャリアステージを名乗り、詐欺行為をしていたが、商標を持っていたことで被害を防ぐことができたとのこと。不要なトラブルを避けるために、商品やブランド名の商標はできるだけ早く取っておいたほうが安心だ。

 Habi*doを特許取得の目的は、競合他社との差別化と海外進出を目指したものだ。ただ、ITサービスの特許化は難しいと半ばあきらめていたが、INPITに相談して弁理士を紹介してもらい、特許取得に至ったとのこと。

 特許取得のメリットとしては、顧客へのセールスポイントとしてアピールできる、開発の方向性が明確になった、客観的な評価で信頼性が高まったことを挙げた。

2020年にHabi*doに関連する特許を取得

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