ここんとこ、今のトレンドは「猫検出AFだー」ってんで、いささかうかれてたこの連載であるが、新製品が全部、猫AF付きってわけじゃない。
こっちへ歩いてくる猫を確実に追い続けるとか、一瞬の予測しがたい動きを捕らえるには、優秀な猫AFがないと難易度がぐんと上がるけれども、そこまでガチな撮影はしないというなら猫AFがなくても猫は撮れるわけで、猫AFの有無よりも軽くて小さくて安くて機動力が高いほうが持ち歩きやすくて、すぐに構えられていい、という考え方もあるわけだ。
で、OMデジタルソリューションズの「OM SYSTEM OM-5」。ブランドロゴが「OLYMPUS」から「OM SYSTEM」に変わった記念すべき1台だ。このカメラは、機能・性能的には最先端じゃないけど、小さくて軽くてゴツっとしたメカっぽいデザインが魅力的なのである。
これを持って、秋の猫撮影だ。秋も深まった雨の翌日。午前の用件と午後の用件の間に数時間の余裕があったので、とあるお寺に猫に会いに行くことにした。
今にも雨が降り出しそうな重い空だったので、こういう日の猫は、雨に濡れないお堂の廻り縁でくつろいでるはず、とのぞいて見ると、気持ちよさそうに寝てる猫を発見。うん、そこなら濡れないし、寒くないものね。
起こすのも悪いので、そっと手すりの隙間からレンズを差し出すと、ちょっとだけ動いたけどまだ寝てる。望遠レンズ万歳。
OM-5に付けているレンズは「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO」。コンパクトながら、望遠端が35mm判換算で300mm相当の使いやすい望遠ズームだ。OM-5のような機動性が高いカメラに、重いレンズは似合わないから。
にしても、いつもは縁側にもっといるのに姿が見えないな、どこだろうと思ったら、何もない広いアスファルトの境内にちょこんと座ってる猫を発見。
この猫に気づいたのがよかった。少し目線をずらすと、そこから少し奥に入った植え込みの下で、乾ききってない枯れ葉の上に2匹が仲良くくっついてたのだ。ノーマークの場所だったので、気づいてラッキーである。気づかれないようにそっと葉っぱの隙間からねらうと、チャトラがミケの毛繕いをしてる。
秋から冬、枯れ葉のじゅうたんでくつろいでる猫を見ることが増えると思うけど、そんな姿を撮るときに気をつけるべきは、ホワイトバランス。
特に、枯れ葉と猫だけって構図はオートホワイトバランスがズレやすい。期待した色よりも青っぽくなりがちなのだ。こういうシーンでは、ホワイトバランスを手動で合わせておくのがおすすめ。晴れてれば「晴天」、曇ってれば「曇天」に合わせると、枯れ葉の色がちゃんと枯れた色になってくれる。
さて、この2匹、仲が良さそうなのだけど、ミケのほうが舐められ続けるのを嫌ったのか、一人でゆっくり寝たいのか、おもむろに立ち上がって場所を変える。すると、チャトラがそれを追っていくのである。
ミケのほうが「こっち来んな」って感じで睨んでるように見えて面白い。そして、しようがないなあという顔でくっつかせてあげたときの写真が冒頭写真だ。そこでじっとしててくれたので、少し近寄って顔のアップである。チャトラのほうから顔をぎゅーっと押しつけてるところがなんか愛らしい。
枯れ葉に埋もれてる秋冬の猫って、季節感もあって、猫らしく、いい感じに撮れるのでおすすめ。
さて、この秋は新しいミラーレス一眼が続々と出たのだけど、OM-5がいちばんコンパクトで廉価な製品。超高性能だけどずっしりとしたカメラのあとで使うと、猫AFはなくても、軽くてコンパクトなカメラもいいなあと思ったりするわけで悩ましい。秋の新製品シリーズ、もうちょっと続きます。
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筆者紹介─荻窪 圭
老舗のデジタル系ライターだが、最近はMacとデジカメがメイン。ウェブ媒体やカメラ雑誌などに連載を持ちつつ、毎月何かしらの新型デジカメをレビューをしている。趣味はネコと自転車と古道散歩。単行本は『ともかくもっとカッコイイ写真が撮りたい!』(MdN。共著)、『デジカメ撮影の知恵 (宝島社新書) (宝島社新書)』(宝島社新書)、『デジタル一眼レフカメラが上手くなる本』(翔泳社。共著)、『東京古道散歩』(中経文庫)、『古地図とめぐる東京歴史探訪』(ソフトバンク新書)、『古地図でめぐる今昔 東京さんぽガイド 』(玄光社MOOK)。Twitterアカウント @ogikubokei。ブログは http://ogikubokei.blogspot.com/
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