情報の目利きを探す場としてのコミュニティの役割
大谷:地方の企業の方と話していて、インターネットの情報は都市も地方もタイムラグがないでしょと言うと、「大谷さんはわかっていない。地方の人は、それを検索するためのキーワードを知らない。だから情報にアクセスできない」と言われました。自分たちに関係がある情報を集めることは、実際はかなり難しいという現実を理解しました。
小島:情報を的確に得るには、“目利き”が非常に重要です。目利きがいると、見通しがよくなる。自社にいなければ、ユーザーコミュニティーに相談してみるのがお勧めです。
大谷:小島さんはAWSの時代から、コミュニティー支援の活動を積極的に行っています。本講演の少し前にも、「CLS(コミュニティーリーダーサミット)高知」に運営として参加されましたね。
小島:このイベントのポイントは、「外の物差しを知る」ことにあります。DXを担う社員は、自分の組織や地域にいると、どうしても外から見た自分が見えません。自社に何が必要で、何を目標にすべきかは、外の意見も聞いて決めていくべきです。
DXのスパイスは「オフ会」で仕入れる
大谷:DXにとって、コミュニティは重要だということですね。
小島:はい。関心軸のコミュニティで、ロールモデルを探すことが、DX成功にとっては重要なスパイスになると考えています。
最初の取りかかりはオンラインでも、いずれ対面で参加する機会も持ってほしい。コミュニティーに、自分を知ってもらうという意味でも重要です。オンラインが浸透したことで、オフラインのミーティングの価値は、むしろ非常に高まっていると思います。
大谷:オフラインのコミュニティは、「発火力」がすごいとよく聞きます。
小島:はい。1社でやっていたときは、キャンプで薪に1人で火を点けている状態。それに比べてオフラインのコミュニティは、大きなキャンプファイヤーを囲んで、全員で火を点けるイメージです。パワーが違います。
大谷:オンラインのコミュニケーションの場合、私は「横が見えない」と感じています。
小島:それが情報量の違いで、話を聞いただけではわからない部分ですね。オンラインでは、欠落する部分があるので、オフラインのメリットを要所で組み合わせながら情報共有をしていく必要があると思っています。
業務をわかっている人がシステムを作る時代
大谷:人同士がつながるのと同様に、システム同士もつながることが重要です。その際、最近のキーワードは「作らない」ということだと思います。
小島:クラウド界隈でも、最近では、「デベロッパー」と言わずに「ビルダー」と呼ぶようになり、レゴブロックを組み合わせるようにシステムを作る方式が増えています。ブロックそのものを作ることにはあまり価値がなく、どんなシステムを作るのかについての才覚が重要なのです。
大谷:大工さんがカンナで削って家を建てることが美徳とされてきましたが、人手不足でそうもいかなくなっています。ITも同じで、一からものを作るのではなく、既存のシステムをつなぐことが必要だということですね。
小島:ローコード、ノーコードの真価も、そこだと思います。ただし、これもDXの話と同じで、どんなに簡単にシステムを作ることができても、何を作るのかを決められる人がいなければ無力です。
大谷:私も取材をしながら、業務に詳しい人がノーコードツールでシステムを作るほうがいいか、それともITに詳しい人が業務知識を仕入れて作るのがいいのか、常に考えてきました。
最近、前者がいいと思うようになりました。そう思う背景には、ツールが進化して、プログラマーでなくても本当に使いやすくなっていることも大きいですね。
小島:DXを支えるツールは、日々進化しています。いよいよ、ビジネスパーソンがDXの主役になる時代がきました。
大谷:システムをつなぐためには、HULFT Square(ハルフトスクエア)のようなデータ連携のツールの活用も重要になります。
小島:このイベントのテーマは「バラバラをスルスルに」ということですが、スルスルさせる目的をしっかり見据えて、ツールを活用していただきたいと思います。