エリアLOVEWalker総編集長・玉置泰紀の「チャレンジャー・インタビュー」番外編
かつて北陸の要だった加賀の國は温泉から名水、工芸、食まで多層的な観光満載のエリア
加賀地域連携推進会議(オール加賀会議)の招きで、石川県南部の加賀6市町のエクスカーション(体験型見学会)に2022年10月12〜13日、参加してきた。6市町は加賀市、小松市、能美市、川北町、白山市、野々市市。この金沢市以南のエリアは加賀の國と呼ばれ、北部は能登で、石川県はこの二手に分かれる。加賀国は律令制の令制国に遡り、823年に、北陸道の国として設置された。最後に設置された令制国だ。加賀一向一揆の後は、前田家が、加賀藩、大聖寺藩(一時期、大聖寺新田藩も)として統治した。
今回は、北陸の空の玄関口とも呼ばれる「小松空港」から入ったが、東京からも行きやすい。金沢もすぐそばで利便性が高いのだが、自然にも恵まれ、加賀温泉郷などリゾート感も高く、住みやすさランキングでそれぞれ上位に入るエリア。ものづくりが盛んな産業集積エリアでもあり、世界最先端の技術や製品に触れることができる。
ようこそ加賀の國公式サイト國
https://allkaga.com/?lang=ja
6市町は住みやすさ最強の個性豊かな観光チーム
エクスカーションは一日で回り、二日目は現地の人たちと意見交換会だったが、見学は、小松空港から、【野々市市】旧北国街道・喜多家~【白山市】白山比咩神社~【川北町】加藤和紙工房~【能美市】ウェルネスハウスSARAI~【小松市】観音下石切り場とオーフ~【加賀市】山中・ゆげ街道という日程で、昼食は、白山市の人気イタリアン、もく遊りん 食工房、宿泊は、粟津温泉の「のとや」に泊まった。合間合間に街歩きや、石切場の軽い山登りもあり、個性的な6市町の様々な観光のレイヤー(層)を楽しめて、全体が理想的なメタ観光と言える。
いくつか紹介してみたい。
【野々市市】旧北国街道・喜多家
喜多家住宅は、国指定重要文化財であり、加賀地域に残る最も古い町家形式の建物だ。金沢に深く根をおろしている茶の文化に裏付けされた趣をもつ金沢町家の最高の家として評価されている。喜多家はもとは越前武士で、貞享3年(1686)に野々市に移住して灯油の製造販売業を始め、代々油屋治兵衛を名のっていた。幕末からは酒造業に変わり、昭和50年頃(1975年頃)まで営業していた。元々の建物は、明治24年(1891)の野々市大火で一部を残してすべて焼失し、現在の建物は金沢市材木町の醤油屋田井屋惣兵衛の主屋を買い求めて移築した。通りに面した外観は、細い縦格子や2階の妻にみられる腕木に支えられた袖壁など、加賀の町屋の典型的なもので、非常に評価が高い。
野々市市は人口6万人弱で、金沢市のベッドタウン的な場所に位置するが、2020年の東洋経済「住みよさランキング」で全国812都市の中で1位に選ばれている。2022年の同ランキングでも3位(白山市が5位、金沢市が6位。あたかも石川県ランキング感が!)を誇る。室町時代には、守護の富樫氏(歌舞伎の演目「勧進帳」で有名)が野々市に館を構えていて、この一帯が政治の中心地だったことがわかる。
喜多家住宅のある本町地区は、旧北国街道の暦的な街並みを楽しめる。滋賀県から新潟県までを結んでいた北国街道の上街道で、金沢からの最初の宿場町が野々市宿。荷物を運ぶために、加賀藩内で 5 本の指に入るほど多くの人や馬を常に準備していたという。京都方面への旅人の見送りや、金沢城下へ入る前の着替えが行われたとも。
今回は、ののいち里まち倶楽部の水毛生貴之さんに案内をしていただいたが、水毛生家自体が旧家で、ご自宅も市の指定文化財だった。
野々市市ホームページより「観光マップ 国指定重要文化財喜多家住宅」
https://www.city.nonoichi.lg.jp/soshiki/9/2614.html
【白山市】白山比咩神社
しらやまひめじんじゃ、と読む。白山市は「はくさんし」。日本三名山の一つ(残りは富士山と立山)であり、石川県の最高峰である白山(はくさん)を神体山とする白山比咩神社は、全国に約3千社ある白山神社の総本宮。地元では「しらやまさん」とよばれ親しまれている。
白山の水は、特別な水。山頂から流れる雪解け水は手取川(石川県)、九頭竜川(福井県)、長良川(岐阜県)、庄川(富山県)の4水系になり、大地を潤してきた。白山を源に、長い年月をかけて地中を流れる伏流水は、酒づくりにも最適で、全国に名だたる銘酒を醸してきた。手取川扇状地である白山市の全域が、白山手取川ジオパークとして、大地の遺産の保護とその活用を目的とする自然公園日本ジオパークに認定されている。
境内には水があふれており、琵琶滝(写真2点目)や平成18年に造られた禊場(写真3点目)には清浄な空気が流れている。
公式サイト
http://www.shirayama.or.jp/index.html
【川北町】加藤和紙工房
加賀雁皮紙(かががんぴし)は、天明3年(1783)より、石川県能美郡川北町で漉かれる。原料の雁皮がんぴは栽培が難しいため自生のものを使わなければならず、とても希少なもので、現在は加藤和紙工房ただ1軒だけが残っている。加藤和紙工房は200年前から雁皮紙をつくり続け、その伝統的な製法を継承している。雁皮紙は強じん・なめらかで光沢があり、その上虫害に強いことが特徴で、古くから和紙の中で紙王と言われている。紙漉き体験を受け付けている。
・手漉き和紙作り体験(1650円)
江戸時代から続く伝統的な紙漉き体験を行う。
・一閑張体験(4500円)
自身で作った和紙を竹籠や干支の人形等に貼り付け、一つの作品を作り上げる。
住所
石川県能美郡川北町中島ヲ152
電話
090-4689-6055(加藤和紙)
【能美市】ウェルネスハウスSARAI
能美市ふるさと交流研修センターが2022年7月に「ウェルネスハウスSARAI(さらい)」として、ウェルネスと工芸をテーマにリニューアルオープンした。従来の研修施設のほか、九谷作家がプロデュースするホテル、地元の食材を使ったカフェ&レストラン、最新の美容を取り入れたスパやスタジオが利用出来るようになった。ホテルは「九谷ステイ」と名付けられ、能美市在住・出身、ゆかりのある九谷焼若手作家8名が1室ずつプロデュースし、インテリアや内装など、アートや文化、伝統を感じ取れる、世界でオンリーワンの客室に。現在は5室が改装済みで、全8室が2022年度内に段階的に改装予定だ。
レストランは、食材は地元産の低農薬・有機栽培の食材を中心に使い、東京のミシュラン星付きレストランで働くスタッフが監修した、これまでの健康食のイメージを一新するスタイリッシュな「NOMI 創作料理」を九谷焼の器で提供する。例えば、サラダランチは、市内農家と契約した野菜約20種類を使った地物野菜など、地域の⾷材を豊富に使⽤している。
SPA&ラウンジは、豊潤なミネラル成分を基剤配合した薬用入浴剤や話題の美容シャワーヘッドなど最新の美容を取り入れたスパ施設になっている。
公式サイト
https://www.nomi-sarai.com/
【小松市】観音下石切り場(かながそいしきりば)
大正初期から始まった日華石(浮石質凝灰岩)の石切り場。石切り場としては現在、使われていないが、露天掘りによってできた高さ50m以上という採石場の石壁が圧巻。この黄色い石は、白山の火山灰が堆積してできた凝灰岩で、石質が軟らかく加工しやすい。多孔質で、耐火性があるのが大きな特徴で、加賀では塀や蔵に利用されている。国会議事堂や甲子園ホテル、旧前田侯爵邸など、全国の近代建築に活用されていて、ピザ窯や囲炉裏、薪ストーブの床などにも利用されている。付近の住宅も柱や土台など、ほとんどの家に使われていて、統一感を感じさせる。
小松市の「石文化」は2016年4月、「『珠玉と歩む物語』小松~時の流れの中で磨き上げた石の文化~」として、文化庁から日本遺産認定を受けている。写真の1枚目の階段は、2018年にスコットランド出身のアーティスト、ジュリー・ブルックさんが日華石を使って制作した「上昇」という作品で、2021年11月の「日本遺産サミットin小松」では、サテライト会場にもなった。
石川県小松市観音下町の公式ホームページ
https://kanagaso.info/stone/
【加賀市】山中温泉・ゆげ街道
山中温泉は、1300年前に奈良時代の高僧・行基が発見したと伝えられている。松尾芭蕉は、奥の細道の旅の道中、八泊九日という長逗留を果たし、「やまなかや 菊は手折らじ ゆのにおひ」と詠んだが、その句にあやかり、山中温泉の総湯は「菊の湯」と名付けられている。山中温泉の名所「鶴仙渓(かくせんけい)」は、春の桜、夏の新緑、秋の紅葉、冬の雪景色と、四季折々、楽しめる。春から秋には「川床」が設けられる。また、「こおろぎ橋」(写真4点目)や「黒谷橋」、「あやとりはし」といった個性的な橋も見もの。
山中温泉旅館協同組合が運営する「山中座」(写真1点目、2点目)は山中温泉街の中心に位置し、菊の湯(女湯)に併設している。館内の内装がのべ1,500名からなる山中漆器職人によって造られていて、漆塗りの柱や格子戸風の壁面、蒔絵を施した格天井など山中漆器の粋を集めた格調高い造り。毎週土・日・祝日には、山中節の唄や、芸妓の踊りなど、山中伝統の芸能を味わえ、コンベンションホールとしても活用されている。
温泉街のメインストリート「ゆげ街道」(写真3点目)は、山中漆器や九谷焼のギャラリー、カフェ、食事処、土産物店などが軒を連ねる。
加賀温泉郷公式サイト
https://www.tabimati.net/feature/detail_3.html
「肉のいづみや」。ゆげ街道の名物コロッケの店。手作りコロッケと和牛の専門店で、俵型にまとめられた手作りコロッケは、外はサクサクで、中はホクホクで癖になる美味しさ。
南町ゆげ街道公式サイトの「肉のいづみや」
http://yugekaido.jp/yuge-idumiya.html
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