アドビのクリエイター向けイベント「Adobe MAX 2022」が10月18日、19日、約3年ぶりに米国ロサンゼルスで開催された。コロナ禍で2年間はオンラインでの開催を余儀なくされたが、今年はハイブリッド開催となり、6000人を超えるクリエイターが会場となったロサンゼルスコンベンションセンターに足を運んだ。
100以上のオンラインセッションと200以上の対面セッションが実施され、アーティストのジェフ・クーンズ氏、映画監督のシアン・ヘダー氏、コメディアンのケヴィン・ハート氏、ミュージシャンのスティーヴ・アオキ氏ほか著名人も多数登壇した。
19日、20日には日本向けのオンラインイベントも開催された。こちらには篠原ともえさんやチームラボの堺大輔氏、工藤岳氏、TikTokクリエイターの修一朗氏、芸人のアタック西本氏らが参加。30以上の日本オリジナルセッションも用意された。
AIによるアップデートが続々
話題の「Generative AI」にもアプローチ
アドビ40周年の節目となる今年の主要テーマは「精緻さとスーパーパワー」「スピードと手軽さ」「コラボレーションによるクリエイティブワーク」。1つ目の「精緻さとスーパーパワー」は、主にアドビの人工知能AIエンジン「Adobe Sensei」によってもたらされるものだ。Photoshop、IllustratorなどAdobe Creative Cloud製品の多くで、AIによって作業を効率化できるアップデートが発表されている。
近年AIの開発を加速しているAdobeだが、基調講演ではテキストから画像を作成するなど、今話題になっている「Generative AI」についても言及。フェイク防止やクリエイターの権利保護を目的にとした「コンテンツ認証イニシアティブ(CAI)」を活用し、新しい研究に投資することで、クリエイターのためのGenerative AI製品の開発にアプローチしていくことも明らかにされた。
このほか、3D制作ツール群「Adobe Substance 3D Collection」には、新たにモデリングツール「Adobe Substance 3D Modeler」が追加された。PCとコントローラ付きのVRヘッドセット(Meta Questに対応)をシームレスに切り替え、没入型の空間で直感的な操作でモデリングができる。また「Adobe Substance 3D Sampler」でも、画像から直接3Dモデルを作成する3D Capture機能が強化されている。
2つ目の「スピードと手軽さ」の中心は、「Adobe Express」だ。クリエイティビティの民主化を目指すアドビが、昨年末から提供を開始したWEB&モバイルで利用可能なクリエティブツール。多くのテンプレートが利用でき、誰もが簡単に本格的なコンテンツを作成できる。「Adobe MAX 2022」にあわせて、非営利団体向けに「Adobe Express」の有料プランを無償提供する取り組みも発表された。
3つ目の「コラボレーションによるクリエイティブワーク」では、コロナ禍に強化されたオンラインでのコラボレーション機能を、さらに手軽かつスピーディーに使えるようになった。Photoshop、Illusurator、Indesignには「レビュー用に共有(ベータ版)」機能が追加され、作業中のデータを画面を切り替える手間なく、素早くシェアできる。シェアされたメンバーはWEB上で確認してコメントを書き込むことができ、必要であればピンや矢印、マルなどで指示も出せる。その内容はクリエイターのツール上にリアルタイムに通知されるしくみだ。
映像コラボレーションツールのFrame.ioも、現在ではAdobe Premiere Pro、Adobe After Effectsからシームレスに利用できるようになっている。フレームに付けられた指示やコメントを、作業中の画面から確認することが可能。加えて今回、富士フイルムとRED製カメラが、データの直接アップロードできる「Camera to Cloud」に対応したことも発表された。