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遠藤諭のプログラミング+日記 第147回

VAX-11/780、Etch A Sketch、IBM PC、PC-8201、たまごっち、MyOASYS2

歴史的デジタルを作るブロックdeガジェットが50回を超えました

2022年09月24日 09時00分更新

文● 遠藤諭(角川アスキー総合研究所)

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 ちょうど1年ほど前にスタートした「ブロックdeガジェット」が、先週公開した「IBM PC」でちょうど50回となった。ここのところ、公開したガジェットたちを触れてなかっので紹介させてもらいたい。

1980年代、パソコンユーザーたちの憧れだったVAX-11/780

 1977年発売されたのが、DECの32ビットスーパーミニコンVAX-11/780。1977年といえば、Apple II、Commodore PET 2001、TRS-80 model 100の初期のマイコン御三家が登場して、日本でもマイコンブームとなった時代。アタリの家庭用ゲーム機ATARI VCSが発売された年でもある。

 私は、それを横目で見ながら幸いにして、このVAX-11/780を使いつぶすように仕事をしていた(それだけの理由でアスキーに入社できたような気がする)。記憶では、観音開きの扉の内側に8インチFDDを入れて起動、OSのコマンドもそうなのだが、その後お世話になるパソコンを使っている気分にとても近かった。

お絵描きソフトの先祖 Etch A Sketch

 これはデジタルとは言えないのだが、パソコンソフトでは重要ジャンルとされてきた子ども向け“お絵描きソフト”の先祖ともいえるオモチャ。内部にアルミニウムの粉末が入っていて、左右のツマミを回すことで、透明な板の裏側からそれを削りとるようにして線画を描けるようになっている。

 1960年にフランスで生まれたものだそうだが、なんといっても昔のテレビのチャンネルと音量つまみのようなルックスがかわいい。映画『トイストーリー』に出てくるけど、なんと昭和30年代生まれの私が子どもの頃、すでに日本で売られていた。それが、いまでも現役というのも凄い。

キミはThe PC、初代IBM PCを知っているか?

 1981年に発売された「IBM Personal Computer」(IBM 5150)、いわゆる初代IBM PC。このマシンに採用されたのがPC-DOS(ほぼソフトを立ち上げるための環境という位置づけだったが)。それが、MS-DOSや互換機の世界、今日のWindowsマシンにまでつながっている。

 IBM PCが発売された1981年2月号の『月刊アスキー』に「これからの“マイコン”のOSは“UNIX”で決まりだ」という記事がある。各社から次々に登場するマイクロプロッセッサに対して、マイクロソフトは、同社のUNIXであるXENIXを片っ端から対応させていた。もし、IBM PCのパソコン戦略がこの路線でなかったら歴史は確実に違っていたはずだ。

最初から完成されていたモバイル! PC-8201

 1970年代末に生まれたマイコンだが、やがて持ち歩いて使うコンピューターに対するニーズが出てくる。1981年にはソニーがTypecoder、1982年にはEPSON HC-20が発売。翌1983年に発売されたのが、NECのPC-8201だった。米国ではTRS-80 model 100として、欧州ではOlivetti M10としてOEM発売。

 このマシンについては、塩田×遠藤が語り尽くす! モバイルPCの原点 PC-8201から理想の端末までをご覧あれ。

糞の掃除をしながら育てる! たまごっち

 電子玩具としてだけでなく、コンシューマエレクトロニクスの歴史において飛びぬけて重要な存在に思えるのが、1996年にバンダイから発売された「たまごっち」だ。それは、デジタルデバイスが、人とインタラクションすること、その中に“生命”に似たものを感じえることも含めてだ。

 これを、世界で老若男女たちが体験したことは、ネットデジタルに埋もれて生活しているいまの我々の社会を予見していたようにも思う。いかにもプリミティブな8ビット的世界観のキャラクターのカワイらしさも成功の秘密だと思う。

私の人生を変えてくれたMy OASYS2

 私が、パソコンよりも先に買ったのが「My OASYS2」というワープロ専用機だった。1983年発売時の広告キャッチフレーズは「The 文房具」。日本のパーソナルコンピューティングの歴史のなかでも、最も個人の知的活動を真剣に考えたマシンの1つではないか(このあと液晶のパーソナルワープロは次々発売されることになるが)。

 その頃、私は1人で雑誌を作りはじめたところだったが、フロッピーのまま写植にだせるOASYSは、あらゆるパソコンを相手に回しても話にならないくらい魔法のような夢のマシンだった。私のこのマシンへの思いは、こちらでも触れている(半導体不足と初代MacことMacintosh 128Kと薔薇の名前)。いまはなき、新宿の丸井テクノ館で、このマシンを買って本当にボクの人生は変わったしよかったと思っている。

 ここまで公開したブロックdeガジェットで作った製品たちをジャンル別に並べると次のようになる。

――――― パソコン ―――――
●X68000
●IBM 5150(IBM PC)
●My OASYS 2
●Compaq Portable
●IMSAI 8080
●Olivetti M10
●NEC PC-8201
●Macintosh
●Amiga
●iMac
●Apple //c
●Apple ][
●PC-9801
●J-3100/T3100
●MZ-80K
●HB-F1XD(MSX)
●VAX-11/780
――――― モバイル/ウェアラブル/カメラ ―――――
●Motolora Brick Phone
●Handspring Visor
●iPhone 3G
●MagicLink
●EPOSON RC-20
●QV-10
●Polaroid 1000
――――― 周辺機器/メディア ―――――
●アスキースティック
●音響カプラー
●カセットテープ
●フロッピーディスク
――――― ボード/教育用 ―――――
●Raspberry Pi 3
●Arduino
●LEGO Mindstorms NXT
●LEGO Mindstorms RCX
●RED Brick
――――― ゲームマシン ――――――
●Game Boy
●SEGA Megadrive/Gennesis
●PONG
●ファミコンロボット
●ファミリーコンピューター
●テレビテニス
●テーブル筐体(Pacman)
●Odyssey
――――― ロボット/おもちゃ ―――――
●Aibo(初代)
●Speak&Spell
●トミー アームトロン
●たまごっち
●Etch A Sketch
――――― 電卓/楽器/コンシューマ/そのほか―――――
●HP-16C
●YAMAHA DX7
●Jaminator
●BUSICOM 141-PF/i404
●Roomba
●Walkman
●Valentine
●Utah teapot

 コロナ禍で家にいる時間がふえたときに、なんとなく作り始めたブロックdeガジェット。なぜこんな子供の遊びみたいなことをやっているのかと聞かれると、たぶんちゃんとした答えはない。たぶん、もう少し私なりに中身のある記事を書いたほうが世の中のためだとも思う。

 しかし、先日、ひさしぶりに新作を作ったら頭は使うしとても癒された。どこまで続けるのか不明だが、少なくともまだ紹介していないブロックが少しあるのでお付き合いいただきたい。

 

再生リスト:https://www.youtube.com/playlist?list=PLZRpVgG187CvTxcZbuZvHA1V87Qjl2gyB
「in64blocks」:https://www.instagram.com/in64blocks/

 

遠藤諭(えんどうさとし)

 株式会社角川アスキー総合研究所 主席研究員。プログラマを経て1985年に株式会社アスキー入社。月刊アスキー編集長、株式会社アスキー取締役などを経て、2013年より現職。角川アスキー総研では、スマートフォンとネットの時代の人々のライフスタイルに関して、調査・コンサルティングを行っている。「AMSCLS」(LHAで全面的に使われている)や「親指ぴゅん」(親指シフトキーボードエミュレーター)などフリーソフトウェアの作者でもある。趣味は、カレーと錯視と文具作り。2018、2019年に日本基礎心理学会の「錯視・錯聴コンテスト」で2年連続入賞。その錯視を利用したアニメーションフローティングペンを作っている。著書に、『計算機屋かく戦えり』(アスキー)、『頭のいい人が変えた10の世界 NHK ITホワイトボックス』(共著、講談社)など。

Twitter:@hortense667

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