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「たてもの」と「まち」のイノベーション第11回

清水建設 東京木工場見学に行ってきた:

最近の木工職人はプログラ厶も書いている

文●ASCII

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職人=プログラマー時代

── 工場で働いている職人さんには若い方も多いようです。

和田工場長 この3年、いかに新人をとるかに力を入れてきました。昔は高校を出て、都や県の職業訓練校から入ってくる社員が多かったんですが、たくさん社員をとれないこともあり、腕の良い社員がほしいなと思って、OB社員に声をかけて、東京、神奈川、埼玉と、旭川の職業訓練校に行きました。旭川は家具の町で、家具メーカーもたくさんある。生まれたときから家具が好きな、腕利きもいるだろうと。そういう社員がほしかったので色々回りました。

── なんとスカウトですか。

和田工場長 「清水建設です」と言ったら「何をしにきたんですか?」と言われましたが(笑)。ゼネコンが木工場を持っているとは思わないですよね。そうして各地から来た学生を木場に呼んで、5人並べて同じものを作らせて、うちの社員である班長が採点するんですね。作業姿勢から出来栄えから全部を。

── 全国を回って採用される人というのは何が違うんですか?

和田工場長 たとえば高校野球で145km投げるピッチャーはそもそも違うじゃないですか。努力で補えるものもあると思いますが、持って生まれたものがあるというか。145kmのストレートとか、高速スライダーが投げられそうな子を探していたんです。

── なるほど。それはあらゆるジャンルで見逃されていることかもしれないですよね。営業でも事務でもそういう天性のものがあるけど、表面的なもので評価されているところがある気がします。それにしてもいわゆる職人の世界が大ゼネコンの清水の中にあるのが不思議な感じがしました。

和田工場長 本当に不思議ですよね。面白いのは、「こんな作業姿勢じゃ作りづらそうだな」と思っていても、結局はその子が一番早くて出来もいいということもあるんですよ。粗削りな原石に近いものがあるんじゃないかなと思います。

── イチローの振り子打法みたいなものですかね。

和田工場長 仰木さんみたいに「自由でいいぞ」と言ったほうがいいんですかね(笑)。清水建設だとOJTで先輩から教わる文化があるので、手取り足取り教えればいいじゃないかとも思ったんですが、それはたぶん違うんですよ。

── 最初の数年間は道具を触らせず「そこで見ていろ」みたいな?

和田工場長 実際、初めに木工場に入って何をするかというと(道具の)刃研ぎなんですよ。道具の手入れができていなかったらダメというところから。

── いいですねぇ。プライム上場企業でもそういうことをやっていると。

和田工場長 面接の前にもまず道具を持ってきてもらってますね。

── 道具の状態でわかるんですか?

和田工場長 わかります。刃の研ぎ方が曲がっていたりとか。社員が見ればすぐわかるので。

── それにしても、手加工をする人がロボットに興味を持つというのが面白いですよね。それはあくまでも成果物がゴールだからなのかなと。昔、電車で隣に座った人が日本刀の研ぎ師だったことがあったんです。これからどこに行くんですかと聞いたら「カナダへ砥石を買いに行くんです」というんですね。いいものを作りたい人はそういうところが一緒なのかなと。

和田工場長 ロボットを使っている本人は、自分が組んだプログラムがいいと思っていなくて、ちょっとずつ変えてもいるんですよね。試作しているベンチはプログラムに失敗して形がちょっとおかしいんですが、それを完璧にしたいと試行錯誤を続けています。もしかしたら現場にいるよりパソコンの前にいるほうが長いんじゃないかな。

── もはやプログラマーですね。そうやって新しい技術を取り入れることで木工場の伝統が継承されていくところがあるのですかね。

和田工場長 軸足はやっぱり、いかに技術レベルを保ちながらモノを作る部署を続けていけるかということが根本にあります。それが採用であったり、社員に新しい技術を作ってもらうことにつながっているんですよ。

東京木工場 従業員のみなさん

 

(提供:清水建設株式会社)

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