上品でHi-Fi的、絶対満足度できる音
X2800Hのさらに上位となるX3800Hの音も、基本的にはこうした方向性の延長線上にある。しかし、さらに音のクオリティーがアップし、落ちつきを兼ね備えた上品な音調となる。AVR-X1700Hとは3倍程度の価格になるので当然ともいえるかもしれないが、さすがにこのクラスになると違うなぁとも思える。
低域の押し出し感やローエンドの沈み込みなども一段上で、802 D4が持つ潜在能力を十分に発揮してくれる。ほかの機種で感じなかった、床をはうような低域の表現もこのクラスならできるようになる。映画に限定せず、質の高い録音の音楽コンテンツをAVアンプで楽しみたいと思うのなら、やはりこのくらいの製品にすべきかもしれない。
AVR-X3800Hのみマルチチャンネル再生のデモがあった。SACD 5chのオーケストラ再生(カヴァコスのソロ、ゲルギエフ指揮のショスタコーヴィッチのバイオリン協奏曲)では、弦の切り込み感やメリハリ感が強く、非常にスリリングな演奏表現が楽しめた。
また、映画『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』では、ヴェスパー・リンドの墓を訪れたジェームス・ボンドがいきなり襲撃に合うアクションシーンが繰り広げられるが、ここは非常に多様な音の演出が盛り込まれており、聴きどころも満載だ。
大迫力の音響や爆発の後に耳の聞えが悪くなる中、アクションする主人公の内面的な表現もそうだが、それに先立ち対比を作る静寂感のあるシーンで、周囲に吹いている風の表現などと空間の再現など細かな音のニュアンスも豊かに表現していた。映画に対する没入感が圧倒的に高まる印象だ。
サブウーファーは最大4基接続可能
なお、AVR-X3800Hは最大4基のサブウーファーを接続できる。これはサブウーファーを後方にも配置して広い部屋全体を低域で満たす目的(4基で同一の音を出す)のほか、フロントおよびサラウンド用のチャンネルに含まれる低域成分を抜き出し、前方と後方の4chに割り振りなおすこともできる。
一般的に低い周波数の音は方向を感じにくいとされるが、スピーカーユニットはある程度帯域を制限したほうが再生に余裕が出る。ブックシェルフスピーカーを利用した2.1ch再生でもサブウーファーを追加することで、上の帯域の抜けが良くなる場合がある。小型スピーカーで低域を出そうとすると、ユニットの振幅をより大きく取る必要があり、歪みの原因になったり、中音域や高音域の再現に影響を及ぼしたりするからだ。
サラウンドスピーカーには小型スピーカーを割り当てるケースが多く、低域の再現は難しい。それなら敢えて中域より上のおいしいところだけを担当させて、足りない低域はサブウーファーで補うという発想もありだろう。壁掛けなどで、すでに小型のサラウンドスピーカーを設置しており、配線も壁の中を通しているような場合、スピーカーの入れ替えは難しいが、こうした環境でも再生クオリティのアップが期待できそうだ。