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仕上げ焼き専用のサラマンダーモードを搭載:

う、うめええええ! バルミューダ「BALMUDA The Toaster Pro」

2022年09月01日 10時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)編集●ASCII

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記事末ふろく・寺尾玄社長の語り再現コーナー

 バルミューダの発表会は、寺尾社長の熱く語るプレゼンテーションがおなじみ。最後に寺尾社長の語り再現コーナーをどうぞ。(※編集しています)

 1年半前、あるホテルのバー。チリ産のオーガニックワインが入ったというので、私はそれをお願いした。ワインはビビッドな味で強烈なおいしさがあった。これは杯が進んでしまう。少し食べておいたほうがいいだろうとメニューを見ると、ステーキがあった。ホテルのバーでワインを飲みながらステーキを食べるというのはぜいたくだ。だけどステーキはちょっと重いんじゃないかと思い、自家流のステーキハッシュを作ってくれないかと頼んでみた。

 ステーキハッシュとは、牛ひき肉だけで作ったハンバーグのこと。表面だけ焼いて中はレアで食べる。それを私は自己流にカスタムしていて、ステーキを先にレアで焼き、それを6〜7mmのダイス状にカットして、オイルや塩コショウをかけ、タルタルステーキのようにして食べている。こうすると軽くて食べやすく、とてもおいしい。

 それを作ってくれないかとバーテンダーに言ってみたら、バーテンダーは「うーん」とうなり、「シェフに相談してきます」と言ってきた。「断らないのはえらいなあ」と思いながら待っていたら、シェフがやってきた。私のわがままレシピを細かに聞いて「わかりました、作ってみます」と言ってくれた。それから待つこと20分──私のステーキ・ハッシュは寝かして火を入れるので時間がかかる──お皿が目の前に出されてきた。

 見た目がものすごくきらきらしていた。肉のまわりにオイルがコーティングされ、水分と塩こしょうがほどよく混ざっていた。一口食べたら(味が)きらめいていた。あれだけ家で研究を重ね、うまくできたと思っていた自分はなんだったのか。やはりシェフの解像度は違う、すごいなと思った。

 当然ながらワインも進み、まあまあ酔った。帰るときにシェフにお礼をしたいと思い、シェフを呼んでもらった。「ありがとうございます、ものすごくおいしかったです」と伝えた。まあまあ酔っていたので、電話番号も伝えた。本人からすればかなり迷惑だったと思うが、それだけ感動していた。それから1ヵ月半ほど経ち、あのステーキハッシュの味が忘れられない。「あれをどうしても食べたいから作ってくれないか」とメールでお願いした。そうしたら「あのホテルやめるんです」と言う。ちょっと待てよ。次は何をするのかな。

 「週末会ってもらえませんか」とお願いした。

 そして、会った。

 次の週末も会った。

 「一緒に仕事してもらえませんか」とお願いした。

 シェフも我々と同じ、キッチンの道具を通じておいしいものを届けるのが仕事だ。

 シェフは「いいですよ」と言ってくれた。

 1年数ヵ月前、バルミューダ初めてのシェフが誕生した。それがあそこにいる岡嶋シェフだ。もともとピアニストをめざして武蔵野音大を出て、なぜかその後シェフの道を選び、リッツカールトンや、マンダリン オリエンタルの厨房で腕をふるってきた。メゾンカイザーにもいたことがある。(音楽の経験があることは)我々とも相性がいいんじゃないかということで入ってもらった。

 数ヵ月後、シェフが提案したのはサラマンダーモードをつけることだった。サラマンダーとは、洋食の店にも和食の店にもある、大きく前があいたトースター状の機械だ。魚の皮目を焼いたり、ピザの表面を焼きつけるという使い方をする。そういう存在があることは知っていたが、「改造して上火だけ強くすればサラマンダーになる」とシェフから聞いたときは、確かに色々できるでしょう、きっとね、と思った。でも、私たちのBALMUDA The Toasterはパンをいかにおいしくするかにこだわり抜いた商品だ。あれもこれもできるというのは便利だが、そんなに魅力には感じなかった。

 だが、あれこれ試食をして衝撃だったのが、バタートーストだった。なかば命がけで作ったわれわれのトーストモード。BALMUDA The Toasterにはトーストモード、チーズトーストモード、クロワッサンモード、フランスパンモードがある。細かな温度制御とスチームの力で最良の焼きたてパンを再現するということで作ってきたが、花形はバタートーストで、これ以上ないほど作りこんできた。トーストモードで普段焼く人は2分30秒、残り30秒は、上火だけで追い焼きをする。

 それがびっくりするほどおいしかった。

 焼き時間は調整できるので、好きな焦げ目を作ることができる。オリジナルモデルのトーストモードは焦げつかせないように作っている。十分にメイラード反応が効き、黄色く、さっくりになる。そこに好みの焼きを追加することで、世界一のトーストが「世界一自分が好きなトースト」になる。

 それを前にしたとき、これはもう商品を作るしかないな、と思った。

 

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