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Collision 2022のピッチコンテスト、脳波でADHDを診断するDot Mind Unlockedが最優秀賞獲得

「Collision 2022」ピッチコンテスト

特集
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 カナダ・トロントで2022年6月20日~23日、ハイテクとスタートアップのカンファレンス「Collision 2022」が開催された。3年ぶりのリアル開催となり、合計で3万5000人以上が参加。その中には1550社以上のスタートアップ、1000人近くのパートナーと投資家が含まれている。ここでは、最終日のピッチコンテスト「PITCH」の模様を紹介する。

ファイナルピッチの様子。左からモデレーターのCasey Lau氏、CAEのCarter Copeland氏、Bessemer Venture PartnersのMary D'Onofrio氏、FPV VenturesのWesley Chan氏

 Collisionはテックカンファレンス「Web Summit」の北米版。そのピッチコンテストであるPITCHには今年、約600のスタートアップが応募した。資金調達額300万ドル以下などが応募条件となる。

 イベントの会期中、56のスタートアップがピッチステージでピッチをし、最終的に、ADHD(注意欠如・多動症)など子どもの発達障害に取り組む医療テックDot Mind Unlocked、3DメディアオーグメンテーションプラットフォームのModu、フィンテックのXareの3社に絞りまれた。

 最終選考に残った3社はイベント最終日の23日、メインステージで争った。審査員は、スポンサーを務めたCAEのグローバル戦略担当シニアバイスプレジデントのCarter Copeland氏、FPV Venturesの共同創業者兼マネージングパートナーのWesley Chan氏、Bessemer Venture PartnersのパートナーのMary D'Onofrio氏。そして4人目の審査員として、ピッチを聞いた参加者も、アプリから審査に参加できた(25%の決定権として反映された)。

カナダの医療テック Dot Mind Unlockedが最優秀賞を受賞

 最優秀のPITCH賞を手にしたのは、カナダのDot Mind Unlocked。会場からの投票では47%を獲得した。Dot Mind Unlockedは、増加傾向にあるといわれる子どもの発達障害が抱える、非効率、不正確、高価という3つの課題に取り組むものだ。

PITCH賞を手にした Dot Mind Unlocked創業者兼CEOのYishel Khan氏

 ステージに立った創業者兼CEOのYishel Khan氏によると、メンタルヘルスの問題に直面している子ども(10代を含む)は世界に10億人。「メンタルヘルスの状態の分類は機能していない」とKhan氏。実際の話として、幼い頃から外出が難しいなどの困難を感じていたものの、ADHDの診断を受けるまで「ヘルスケアシステムをあっちに行ったりこっちに行ったりしたので2年を要した」というケースを紹介した。このような精神障害は過去10年で56%増加しており、コロナ禍でそのペースは加速しているとのこと。うつは人口の5%、自閉症は8%、ADHDは15%を占めるという。

 そこでKhan氏とチームが開発したのが、EEG(脳波)を計測するヘッドセットと専用ソフトウェアのセットだ。脳波というデータに基づくため正確(臨床テスト済みのアルゴリズムを用いており、精度は87%という)で、そして現在の手法のわずか5%のコストで済むという。

 ソフトウェアは、医療従事者向けの「Neuron」、患者向けの「Nerve」の2種類を用意する。Neuronは診断の自動化、患者のケア管理などのメニューがあり、Nerveはゲーミフィケーションを使ったセラピーなどを提供する。

 すでにKhan氏が所属するマギル大学でアルファローンチをしており、 300人以上の子どもを対象に検証し、92%の精度を上げているという。現在、2024年7月までに米食品医薬品局(FDA)の承認を得て北米市場でローンチをする計画で、300万ドルの資金調達を狙っているという。

 PITCH賞の授与にあたって、CAEのCopeland氏は「社会のメリットという点でも魅力的なテクノロジー」と評した。Khan氏は「製品を早期に市場に投入して、世界を変える大きなモチベーションになる」とコメントした。

「メディア3.0のプラットフォーム」を標榜する、MODU

 残る2社、MODUとXareを簡単に紹介する。

MODU共同創業者のAbdou Sarr氏

 会場からの投票で33%を獲得したMODUは、3Dを使う没入型コンテンツの作成、キャプチャ、統合を容易にする「メディア3.0のプラットフォーム」を標榜するベンチャー企業。3D写真の作成が容易にできるアプリ「FILM3D」を2019年にリリース、ユーザーは400万人以上(月間アクティブユーザーは40万人)、すでに6000万点の3D写真がキャプチャされているという。

 現在、企業向けにメディア3.0フォーマットの開発を行なっており、Google、Amazon、Nike、全豪オープンなどの名前を挙げた。

 ピッチを行った共同創業者のAbdou Sarr氏によると、今後は3Dフォト、空間オーディオ、ARなどの技術を備えるメディア3.0のプラットフォームとSDK(ソフトウェア開発キット)の提供を進めるという。

「フィンテックの戦い方を変える」、Xare

Xare共同創業者兼CEOのPadmini Gupta氏

 Xareは、クレジット/デビットカードを作成、共有できるフィンテックベンチャー。

 現在、クレジットカード、投資、保険などの財務サービスを利用するには、収入が前提となっている。一方で、世界の人口の58%は収入がない、とXare共同創業者兼CEOのPadmini Gupta氏は話す。収入のない58%の人が世界の消費支出の40%近く(金額にして25兆ドル)を占めていると付け加える。

 Xareは既存のカードを登録し、これを共有できるサービス。使用をモニタリングしたり、上限を設定するなどのこともできる。170以上の国で利用されており、Xareプラットフォーム上で共有された金額は2021年、10億ドルに上るという。「300倍で成長している」とGupta氏は胸を張った。2022年1月までに1万5000枚のカードが作成されたとのこと。これは米国のChime、英国のRevolutを上回るという。

 Xareプラットフォームは分散型で、拡張性に優れる点もアピールした。「フィンテックの戦い方を変える。グローバル、ソーシャル、そして高速に成長するフィンテックを目指している」とGupta氏は述べた。

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