プロトタイプでLinux動作を確認
2023年前半に量産出荷予定
ちなみにこの2018年時点でTachyumの考えていたラインナップは下の画像の通り。ハイエンドが64コアのT864で、その下に32コアと16コアのT432およびT216がラインナップされる。それとは別に、HPC向けにT864のメモリーチャネルを半減させ、高密度化したTH24という製品も予定されていた。
さてその後はどうなったか? であるが、やはりTSMC N7でこれはいろいろ無茶があった。一応チップの製造には成功したようで、2019年にはLinuxの稼働を確認したというリリースも出ている。ただ、製品向けに改めて設計をやり直したようだ。
2021年3月にFPGAベースでのプロトタイプが稼働を開始、同年8月にはそのプロトタイプ上でのLinux動作を確認している。今年7月1日には評価用プラットフォームのプレオーダーを受け付け開始しており、今年中に評価プラットフォームの出荷、来年前半に量産出荷を開始の予定となっている。
構成も少し変化しており、CPUコアのベクトルユニットは1024bit幅に拡張、仮想化の機能も搭載された。また“Out-of-Order, 4 instructions per clock”の文字も踊っているが、これは2018年発表のものと同じで、単に最大4命令BundleのVLIWのままな気がする。
またキャッシュはL1が命令/データともに64KBに増量、DDR5-6400×8chをサポートになった(HBM3はもう構成から落ちた模様)。PCIe 5.0は最大64レーンになっている。製造プロセスはTSMCのN5に変更になり、VLIWのネイティブISA以外にx86/Arm/RISC-Vのバイナリーをエミュレーション動作できるとされている。
ラインナップは以下の表の通り。AI性能に関しても公開されたあたりが、以前と異なる点である。
Prodigyのラインナップと性能 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
製品 | コア数 | メモリー | PCIe | AI性能 | HPC性能(DP) | |
Prodigy T832 | 32 | DDR5-6400×8 | x32 | 1.5PFlops | 12TFlops | |
Prodigy T864 | 64 | DDR5-6400×8 | x32 | 3PFlops | 23TFlops | |
Prodigy T16128 | 128 | DDR5-7200×16 | x64 | 12PFlops | 90TFlops |
ところで冒頭、スロバキアとのつながりが強いと説明したは、2020年のITAPAにおけるTachyumの発表スライドの1枚が下の画像だ。
Tachyumはデザインセンターをスロバキアに2ヵ所(ブラチスラヴァとコシツェ)抱えており、チップ設計とアセンブリ、サーバー機器の製造、サービスの提供をスロバキアで行なっている、としている。現状ではまだチップもないため、AI性能を評価するのは時期尚早だが、ある意味(VLIWとはいえ)控えめな構成でどこまで性能を上げられるのか、というのは興味深い。来年あたりのMLPerfに数字が上がることを期待したい。
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