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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第678回

Sapphire Rapidsの量産は2023年に延期、Optaneが終焉 インテル CPUロードマップ

2022年08月01日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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Optaneの終焉

3D XPointを採用するIntel Optane Memory

 決算発表のプレゼンテーションでは一切触れられていなかったのだが、同時に公開されたForm 10-Qの中に、こんな注記が入った。

Form 10-Qの注記

 直訳すると「2022年第2四半期、DCAIに含まれるIntel Optane Memory事業の整理を開始した。Intel Optaneは最先端の技術ではあるが、同社の戦略的優先事項と一致していなかった。これとは別に、CXLへの対応は引き続き行なっていく。今回の決定により、売上原価に5億5900万ドルの在庫減損を計上している。Optane Memory事業の縮小にも関わらず、既存の顧客との契約は継続される見込みである。」となる。要するに下記のようになるわけだ。

・Optane Memory Businessは閉鎖の方向

 少なくとも今年3月に開催されたStorage Field Day 23でKristie Mann氏(VP&GM, Intel Optane Group)が語った「CXL向けに第3世代Optaneを投入する」という計画はおそらくなくなったと考えられる。

字幕はStorage Field Day 23におけるMann氏の発言。次世代の技術をCXLに組み合わせる、ということでこれは第3世代Optaneと考えられる

・おそらくコンシューマー向けのOptane SSDも廃止の方向

・サーバー向けのOptane Persistent Memoryは契約を継続

 こちらは、すでにエンタープライズユーザーが多数いるので、いきなり廃止にはできないと思われる。おそらく新規システムには推奨しないという形になり、既存ユーザーに対しては在庫を積み上げてこれで対応する形をとるものと思われる。

 もともと3D XPointを製造していたMicronは3D XPointから撤退。生産拠点だったLehiの工場はTIに売却してしまっている。一方インテルは大連にあった工場(Fab 68)でも3D XPointを製造していたが、こちらはSK Hynixに売却が決まっており、段階的にインテルのオペレーションが減っている状況である。おそらくインテルとしては、この先さらにOptaneでがんばっても、投資に見合うだけの成果は得られない、と見切りをつけた格好だろう。

 すでにデスクトップ向けの32GB Optaneは販売終了になっており、M10も16MB品はやはり販売終了である。近いうちに店頭在庫も払底する可能性が高そうだ。買うなら早めに買っておいた方がいいだろう(買ってどうするか? というとアレだが、とりあえず額に入れて飾っておくといい)。ちなみにDCAIの営業利益が異様に低い理由の1つは、このOptane事業の在庫減損の5億5900万ドルがある。

黄信号が点いたSapphire Rapids

 話を決算に戻すと、なぜDCAIはこんなに売上が低いのか? というと、もう最大の理由はSapphire Rapidsがいまだに出荷されないことだろう。単純な話で、買い控えが起きているからだ。

 現在はIce Lake-SPベースの第3世代Xeon Scalableが販売されているが、Sapphire Rapidsとはプラットフォームの互換性がないし、DDR4メモリーとPCIe Gen3レーンの構成で、もちろんCXLへの対応もない。AMXなどの最新命令への対応もない。

 当初は2021年中に出荷予定だったので、ちょうど2021~2022年にサーバーを導入する顧客にとって、いまさらIce Lake-SPを導入するという案はあり得ない。ところが2022年の8月になっても、Sapphire Rapidsの販売がスタートしないという状況は、顧客にとってもOEMメーカーにとっても予想外だったわけだ。

 前述したDCAIの画像に“Lower revenue on OEM inventory reductions”とあったが、サーバーメーカーはIce Lake-SPベースのシステムの在庫を減らす方向に行っており、本来はその代わりにSapphire Rapidsベースのシステムの在庫を増やすはずだったのにそれができないために売上が減っているというわけだ。

 ということで、当然Earnings Callの最後の質疑応答は、Sapphire Rapidsに関する質問が集中することになった。まずその前にPat Gelsinger CEOとDave Zinsner CFOの説明によれば、以下の事柄が明らかになっている。

  • NVIDIAのDGX-H100がSapphire Rapidsの採用を決めた
  • 営業利益率は、売上高の減少とSapphire Rapidsの生産準備費用(PreProduction)の減少が製造コストの減少で相殺された

 その上で「我々はSapphire Rapidsの品質基準を高くしていたため、高いASPの新製品売上とは対照的に、在庫や引当金の問題を目の前にして、もう新しいステッピングを用意した」としており、現時点でもまだ量産開始に至っていないことが判明した。

 もっともZinsner CFOによれば「Sapphire Rapidsの問題は今年後半には解消し、それにともない年次での収益は改善すると思う」とわりと楽観的であった。さて、それをふまえてQ&Aの方である。

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