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サイボウズ、アドバイザー、星野リゾート、ジヤトコで共同作成

エンタープライズ企業にkintoneガバナンスガイドラインはなぜ必要か?

2022年07月15日 17時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 2022年7月15日、サイボウズはエンタープライズ企業でのITガバナンス強化を支援る「kintoneガバナンスガイドライン」の無料公開を開始した。同日に開催されたCybozu Media Meetup Vol.10では、DXにおけるノーコード・ローコードツールの重要性、エンタープライズ企業でのガバナンスガイドラインの必要性について解説された。

Cybozu Media Meetup Vol.10でガバナンスガイドラインについて説明したサイボウズ 事業戦略室の山田明日香氏

大企業のkintone活用が進み、新たな課題に直面

 Media Meetupに登壇したサイボウズ 事業戦略室 山田明日香氏は、DXに向かう外部環境の変化として、システムとビジネスのギャップ、IT人材不足、SaaSの市場拡大などを挙げる。こうした外部環境の変化に対応しようとすると、堅牢性を重視した従来のシステムより、現在は柔軟かつ迅速なシステムの方が重要になる。「長く使い続けられるではなく、変化し続けられるシステムが必要になっている」と山田氏は指摘する。

変化し続けられるシステムの重要性

 また、現場とIT部門の関係性も大きく変わる必要がある。今までIT部門は既存システムの運用保守で手一杯で、現場の声になかなか耳を傾けられなかった。しかし、今後は業務改善や課題解決の主体は現場にシフトすることで、今後IT部門は支援者に変わるべきだという。具体的にはツールを提供し、ルールを作成し、現場の活用を支援。そして高度な技術要件が出てきた際には、そこに対応するという役割だ。

 こうした現場のニーズに応えた業務改善や課題解決に最適なのが、サイボウズのノーコード・ローコードツールであるkintoneになる。kintoneでは現場のユーザーがドラッグ&ドロップでアプリを作り、プラグインや個別開発で機能を拡張できる。既存の基幹システムとの連携や棲み分けも可能。kintoneは企業の内製化を加速し、DX推進の鍵となっている。6月時点でのkintone契約社数は2万5000社に達し、2021年は月に550社ペースで導入企業が増やしてきた。

 現場主体のアプリ作りを支援するkintoneは、導入担当者も非IT部門が93%を占める。一方で、大企業を中心にIT部門主導のkintone活用事例も増えている。申請承認業務や回覧業務をデジタル化した日清食品グループ、POSやEC基幹システムとの連携を実現したアルペン、現場主体の業務改善基盤として導入したジヤトコ(関連記事:現場主体でのkintone開発を成功させるため、IT部門がすべきこと)、コミュニケーション基盤としても活用している星野リゾートなどだ。

IT部門主導のkintone導入事例

 一方で、kintone活用が進み、新たな課題に直面できるIT部門も出てきた。「簡単にアプリを作れるので大量のアプリができてしまい、管理がわからない」「リスクの高いデータを扱う場合に不安が残る」「習熟度の低いメンバーがセキュリティ規則を逸脱したアプリを作って運用しようとしていた。どうやって教育すべきか」など、シャドーIT、野良アプリ、人材育成といった課題だ。

 ここで求められるのは、現場が主体的に関わり、事業や業務の変化にあわせてスピーディに対応する「攻めの観点」と、適切に情報を管理し、属人化と野良アプリの氾濫を防ぐ「守りの観点」だと山田氏は指摘する。現場主体を後押しするためにIT部門に求められるのは、ガバナンス体制の構築。そのためのルール作成に役立つのが、今回公開したkintoneガバナンスガイドラインだ。

サイボウズ、アドバイザーとともに星野リゾートやジヤトコも参加

 今回公開されたガバナンスガイドラインは、汎用的なガバナンスガイドラインを出発点とし、kintone導入企業から現状の課題や各社のガバナンスの取り組みや理想を共有。kintone流のガバナンスガイドラインに仕上げたという。具体的にはkintoneの大企業向けユーザー会である「kintone Enterprise Circle」に参加する星野リゾートとジヤトコの2社と外部アドバイザー、サイボウズで検討を重ねて作り上げたという。

kintoneガバナンスガイドライン検討の流れ

 全社員のIT人材化を目指している星野リゾートは、全スタッフが自由にノーコード開発でき、情報システムは監督する立場をとっていた。とはいえ、利用は活発化したが、誰が設定変更したかわからない、同名アプリが乱立している、カスタマイズ担当者が退職して動かないなどの課題にぶちあたった結果、「ガードレールくらい」というものでガイドラインを作った。1人でなく、チームでガイドラインを作り、特に情報の閲覧範囲や顧客情報の扱いに配慮しているのも特徴的だ。

 一方の自動車部品メーカーのジヤトコは、現場主体の業務アプリ開発基盤としてkintoneを導入しており、もはや情シスはアプリを作らない。いつでも、誰でもアプリは作れるが、ID、スペース、アプリ運用、カスタマイズ・プラグイン運用などの要素を対象に運用ルールを定義した。さらに本格利用の開始、ユーザー増加にあわせてガバナンスを強化。具体的には全社標準の品質保証ルールを整備し、新規ユーザーの教育や利用ユーザーの状況把握、ポリシーに準拠したアプリ作成や棚卸しルールの強化などを図った。

 こうしたリアルユーザーの声を反映したガバナンスガイドラインは「ガバナンス方針策定のポイント」「ガバナンス構築のポイント「リスクおよびコントロール例」などをまとめた全37ページ。ガバナンスは一度作成して終わりではなく、繰り返しブラッシュアップすることが必要だと山田氏は指摘する。さらに「ガバナンスマップ」によって、ユーザー企業が現在どのポジションにおり、どこを目指すのをきちんと検討することが大切だという。

 星野リゾートもジヤトコも全社への拡大に際して、各組織のあり方や役割を検討した。たとえば、星野リゾートは顧客情報の有無によってアプリの所属環境を分離。顧客情報のあるアプリの作成は情シスに限定し、顧客情報のないアプリは幅広い社員に権限を付与する。一方、ジヤトコはトライアルアプリで自由な開発を担保し、本運用に移る際はIT部門が品質をチエックし、要件を逸脱したアプリの作成を防止しているという。

星野リゾートの組織体制と役割

 公開したガバナンスガイドラインに対しては、「独自に作り始めていたので、参考になるモノがあってありがたい」「考えに抜け漏れがないか、照らし合わせて使えそう」「自社のガイドラインをアップデートする際に活用したい」などの反響があったとのこと。今後は教育に関するコンテンツの拡充やkintone導入事例の充実、kintoneらしさや特徴の盛り込みなどもやっていきたいという。

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