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「誰も一人ではセキュリティ課題を解決できない」時代の協働に向け、多彩な登壇者を招いたアンカンファレンス

WithSecure、“Co-Security”をテーマにイベント「SPHERE22」を開催

2022年06月03日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 F-Secure(エフセキュア)の分社化に伴って2022年7月1日に正式発足するWithSecure(ウィズセキュア)が6月1日と2日、本社のあるフィンランド・ヘルシンキの会場とオンライン会場を使ったハイブリッド形式のグローバルイベント「SPHERE22」を開催した。

 WithSecure単独でではなく、顧客企業やパートナー、エコシステムといった他者との協働を通じてセキュリティを作り上げていくという企業理念「Co-Security(コ・セキュリティ、共同セキュリティ)」をメインテーマに据えて、起業家、社会活動家、ジャーナリスト、国防関係者、発明家など、セキュリティ業界に限らない多彩な登壇者を迎えるイベントとなった。

WithSecure プレジデント 兼 CEOのユハニ・ヒンティッカ(Juhani Hintikka)氏

ドーム型のメインシアターは360°を客席が囲む

会場は工場跡地をリノベーションしたダンスシアター施設「Tanssin talo」

一般的なセキュリティイベントとは異なる位置づけを行った意味

 CEOのヒンティッカ氏はイベント冒頭のあいさつで、今回のSPHEREというイベントは「セキュリティ関係者どうしが話し合うような、一般的なセキュリティイベントではない」と強調した。

 WithSecureでは今回のSPHEREを「Co-Security Unconference」と位置づけている。アンカンファレンス(Unconference)とは本来、登壇者も聴講者も含む参加者全体で(ヒエラルキーなしで)作り上げる会合という意味合いを持つ。同社はこの言葉を用いつつ、ビジネスや社会のあらゆる場面でサイバーセキュリティが多大な影響を持つようになった現状をとらえ、その意味を拡張している。

 「SPHEREは(参加者間の)協働によるイノベーションと創造のための場である。なぜならば、サイバーセキュリティは今やすべての人が取り組むべき仕事だからだ。誰も一人ではサイバーセキュリティが抱える諸課題を解決することはできない。われわれが直面する大量の脅威は、新たな視点、そしてCo-Securityのアプローチを必要としている。さまざまなビジネスや多様なバックグラウンドを持つ方々をキーノートに招いたのも、社会が必要としている新たな視点、考えを生み出すためには、異分野との相互作用が不可欠である。それが、われわれがSPHEREをアンカンファレンスとした意味だ」(ヒンティッカ氏)

WithSecureでは「サイバー攻撃により、誰も深刻な被害を受けない未来を作る」というビジョンを掲げている

キーノートにはTomorrow CEOでフューチャリストのマイク・ウォルシュ氏、ジャーナリストであるキャロル・キャドウォルダー(Carole Cadwalladr)氏らが登壇。ウォルシュ氏はCOVID-19以後の新たな世界の姿について、キャドウォルダー氏は民主主義に対する脅威について語った

 もうひとつ、アンカンファレンスという位置づけに基づいて、会期中に参加者と共同で「Co-Securityマニフェスト(宣言文)」を作成する取り組みも実施している。このマニフェストは、「サイバーセキュリティには優れた技術が必要だが、真の意味で価値が生まれるのはわれわれがCo-Secureを実践したときである」「これまでになく速いペースで発生する、より複雑な未来の課題に対処し続けるためには、Co-Securityが標準になる必要がある」など、WithSecureがCo-Securityを通じて実現したい新たなセキュリティのコンセプトを示している。

 参加者には、マニフェストに対する評価や意見をフィードバックできるオンラインツールへのアクセス権が与えられた。そうしたフィードバックに基づき、最終的なマニフェストを完成させるというかたちだ。同時に、ひと言では伝わりづらい「Co-Security」というコンセプトを、より深く参加者に理解してもらう意味もあるだろう。

参加者に「Co-Securityマニフェスト」へのフィードバックも呼びかけた

「戦争/平和とサイバーセキュリティ」も大きな議題に

 WithSecureの本社があり、今回の開催国でもあるフィンランドは、ウクライナと同様にロシアと国境を接している国である。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻という現在の状況も反映して、「Co-Securing Society(社会のCo-Security)」というパートでは、多くのセッションでサイバー空間への戦争の影響、あるいは平和構築のためにテクノロジーがどう役立てられるかといった議論が展開された。

フィンランドはウクライナと同様にロシアの西側にある隣国。長い国境線で接している

ちなみにヘルシンキ市内でも公共施設や民間施設、個人の住宅まで、多くの場所で連帯の意思を示すウクライナ国旗が見られた

 英国軍でシニアインテリジェンスオフィサーを務めていたフィリップ・イングラム氏は、国家を背景としたサイバー脅威やサイバー諜報活動は目新しいものではないものの、世界のデジタル化を通じて非常に身近な存在になっていることに警鐘を鳴らした。一方、フィンランドの平和構築活動団体であるCMIのCEO、ヤンネ・ターラス氏は、デジタルの世界を通じて、紛争のさなかで声を上げられない人々に発言/発信力を与える「デジタル・インクルージョン」の取り組みや、紛争地域で起きていることを世界の人々が理解しやすいコンテンツとして発信していく取り組みを進めていることを紹介した。

元英国軍 シニアインテリジェンスオフィサーのフィリップ・イングラム(Philip Ingram)氏、CMI - Martti Ahtisaari Peace Foundation CEOのヤンネ・ターラス(Janne Taalas)氏

 またWithSecureの首席研究員であるミッコ・ヒッポネン氏は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を軸として、サイバー兵器やサイバー空間にどのような変化が起きているのか、当事国や関係諸国だけでなくIT業界、サイバー犯罪組織など幅広い視点から解説した。

WithSecureの主席研究員(CRO)を務めるミッコ・ヒッポネン(Mikko Hyppönen)氏

* * *

 そのほか今回のSPHEREでは、WithSecureが企業のパーパス(目的)として掲げる「信頼(Trust)」の構築について同社 創業者 兼 会長のリスト・シラスマ氏が、またミッションとして掲げる「アウトカムベースのセキュリティ」について同社 CTOのクリスティン・ベヘラスコ氏が、それぞれセッションを行った。加えて、プレス向けのセッションやインタビューでも、WithSecureが目指す新たなセキュリティベンダー像が繰り返し説明された。

 本稿で触れた一部のセッションを含め、詳細についてはあらためてレポート記事を掲載したい。

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