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前田知洋の“マジックとスペックのある人生” 第168回

充電池のすべてがわかる!? マルチ機能充電器「XTAR VC4 Plus」

2022年06月07日 16時00分更新

文● 前田知洋 編集●ASCII

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世界をすごく便利にしたリチウムイオン電池

 ノートPCやデジタルカメラ、スマートフォンやEV(電気自動車)の性能を大きく進歩させたリチウムイオン電池。正しくは、充電と放電が繰り返せることから、リチウムイオン二次電池という名前です。

 それまでの充電池、ニッカド/ニッケル水素電池よりも容量が大きく、より使いやすい充電池として開発されました。あまり話題にはなりにくいですが、国際宇宙ステーション、日本の潜水艦、ロケット、人工衛星、小惑星探査機にも使われています。

身近だけど、謎が多い充電池

 現代では、多くの電化製品に使われている充電池。しかし、これだけ身近になった充電池ですが、筆者にとっては、以下のような謎もあります。

○同じ充電池でも、使い方や個体差で寿命が変わるのは本当か
○急速充電ができる/できないがあるのはなぜか
○高い充電池と安い充電池の違いとは
○スペックに書かれている容量って本当?

 上記の謎については、ネット検索するといろいろな理由が説明されています。しかし、電池の中身が見えないだけに、いまひとつピンと来ません。怪しいサイトのなかには「ダメになった充電池を復活させる方法」など、荒技を紹介したページさえあるほど……(危険なので試さないでくださいね)。

充電器「XTAR VC4 Plus」を購入

 そんな充電池の謎にせまるために、筆者が購入したのは「XTAR VC4 Plus」(以下、VC4 Plus)。XTARは、充電器などを製造、120ヵ国で販売しているという会社です。筆者はAmazon.co.jpで4499円で購入しました。

 VC4 Plusは、一般的な充電器と違い、以下のような特徴があります。

XTAR VC4 Plusの特徴

●最大3Aで急速充電できる
●最小0.25Aで、ゆっくり充電もできる
●充電池を長期保存に適した状態に充電できる
●カタログスペックではない、本当の容量を確認できる
●リチウムイオン/ニッケル水素/ニッカドを同時に4本まで充電できる
●0Vになった電池を復活させるアクティベーション(復活)機能がある
●電池寿命の目安「内部抵抗」が測れる

インターフェイスが見ていて楽しい

 VC4 Plusは、エネループのような一般的なニッケル水素(1.2V)から、特殊なリチウムイオン(3.7V)まで、さまざまなサイズを充電できます。

 メーターのような電光表示と数値、電池タイプがリアルタイムに表示されます。このインターフェイスは見ていて楽しいだけでなく、どれくらいの電圧と電流で、どれくらい充電されているかが一目でわかります。

「充電モード」で表示されるのは、充電電圧(白いメーター)、充電電流(青いメーター)、充電量(白い数値)、電池の種類(青い英字)

付属のQuick Charge 3.0対応のACアダプターとケーブル(USB Type-C)。差込口がオレンジで区別しやすい

 つまり、筆者が「謎」として考えていた、「使い方や個体差で寿命が変わるのか」「スペックに書かれている容量は本当なのか」がわかるだけでなく、「高い充電池と安い充電池の違い」も表示してくれるのです。

どちらが良いの?「急速充電vsゆっくり充電」

 巷では「急速充電」をセールスポイントにする製品が多いですが、筆者は「ゆっくり充電」派。その理由は、急速充電は便利ですが、電池内部の急速な化学反応で電池が熱くなります。じつは、この熱が充電池の寿命を縮める大きな原因とされています(大電流放電も同様に発熱します)。

 できるだけ電池にダメージを与えないよう、充電池のスペアを用意しておき、充電電流を最小設定の0.25Aで時間をかけて充電しています。もちろん、急いで使用したい場合は3Aで充電できるのがVC4 Plusの頼もしいところでもあります。

 注意点は、3A充電時は50度くらいまで熱くなることと、3A充電時は1本だけという制限です(2A充電は電池2本、1A以下は電池4本まで同時充電が可能)。

便利な「実容量測定機能」と「長期保存準備機能」

 実際にどれくらいの容量まで充電できるか、電池の性能を調べる「実容量測定機能」。これは「満充電」→「放電」→「満充電」を連続で実施することで、それぞれの容量を測定します。だいたい一晩くらいかかるので、毎回ではなく電池寿命が気になったらやるのがベストかもしれません。

 充電池は、満タン状態での保存も寿命を縮め、逆に充電が少ない状態での保存も厳禁。なぜなら、規定電圧(一般的に1.0V以下)になると「過放電」と呼ばれ、普通の充電ができなくなるからです。

 「長期保存準備機能」は、ほどほどの量の充電(電圧が高い場合は放電)をして、1ヵ月以上の保存にそなえる機能です。知らないうちに充電池が引き出しに溜まっている筆者にとっては、とても便利な機能。

 ちなみに単3、4の充電池保存は「セパレートボックス ロング(品番3234)」(和泉化成)を使うと、引き出しでゴロゴロしません(記事のトップ画像の右。12本収納できます)。

電池寿命の目安になる「内部抵抗」

 充電池の「内部抵抗」は、充電池における本当の寿命の目安になる数値といわれています。一般の充電器でエラーが表示されて充電ができない場合、それが「過放電による充電不可」なのか「劣化による寿命」なのかがわかりません。前者なら、電池のアクティベート(活性化)などで復活させることもできますが、後者であれば、もう捨てるしかありません。

 そんな目安になる「内部抵抗」を知ることが可能なのも、VC4 Plusを購入した理由の一つです。

上に「IR」と表示され、電池の内部抵抗が測定できるモード。筆者はエネループ単3で100mΩ以下であれば「現役」として使用

「電気は貯めておけない」という謎

 「電気は貯めておけない」、こんなフレーズを耳にしたことはないでしょうか。筆者も電子工学の授業で、そう習いました。

 それを聞くたびに「電池やバッテリーがあるのに、電気が貯められないって、どういうこと?」と、いつも不思議に思っていました。

 簡単に充電池のシカケを説明すると、電池の中には電気が入っているわけでなく、2つの電極と電解液が入っているだけ(本当はもう少し複雑)。

 放電時には電池内部のマイナス側の電極が電解液に溶けて、プラス側の電極が大きくなることで電気が生まれる。充電時には、その逆の現象が起き、プラス側の電極が溶けて、マイナス側の電極が大きくなる。電池の中に「電気そのもの」が溜めてあるわけではない、というわけです。

 なんだかマジックみたいな話ですが、そんな充電の原理がなんとなくわかると、発熱や液漏れについても、理解できそうな気がしてくるから不思議です。ポイントは、使わない機器には、電池は入れっぱなしにしておかないこと。それが「過放電」や「液漏れ」など、電池/充電池のトラブルの予防策です。

人はなかなか見られないマジックのタネは知りたがるのに、身の回りにある電池のタネは知りたがらないのは謎

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。

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