金沢大学と大阪公立大学の研究グループは、ケタミンの即効性抗うつ作用の仕組みを解明した。ケタミンは古くからある麻酔薬だが、麻酔用量よりも低用量で用いることで、治療抵抗性うつ病患者に即効性の抗うつ作用をもたらすことが2000年代に明らかになっている。ただ、ケタミンには幻覚、妄想などの精神症状や、依存性といった重い副作用があるため、うつ病患者にそのまま投与するには問題があった。
金沢大学と大阪公立大学の研究グループは、ケタミンの即効性抗うつ作用の仕組みを解明した。ケタミンは古くからある麻酔薬だが、麻酔用量よりも低用量で用いることで、治療抵抗性うつ病患者に即効性の抗うつ作用をもたらすことが2000年代に明らかになっている。ただ、ケタミンには幻覚、妄想などの精神症状や、依存性といった重い副作用があるため、うつ病患者にそのまま投与するには問題があった。 研究グループはインスリン様成長因子-1(IGF-1)を内側前頭前野に局所投与すると、即効性の抗うつ作用が得られるという研究に着目し、内側前頭前野に内在するIGF-1がケタミンの即効性抗うつ作用に関与している可能性を検討。実際にケタミンを投与したマウスの脳を解析したところ、内側前頭前野でIGF-1の遊離が数時間にわたって増加していることを発見した。さらに、IGF-1の働きを阻害するタンパク質を内側前頭前野に局所投与したマウスでは、ケタミンの抗うつ作用が消失した。つまり、ケタミンによって内側前頭前野で遊離が増加したIGF-1が抗うつ作用の発現に重要であることが分かった。 研究成果は5月17日、「トランスレーショナル・サイキアトリー(Translational Psychiatry)」誌にオンライン掲載された。今後、IGF-1を標的とした、より安全な抗うつ薬の開発につながることが期待される。(笹田)