逸脱や医療現場受け入れなどの課題も
スターターキットの監修を担当した国立がん研究センター東病院 先端医療科 科長の土井俊彦氏は「良い薬を社会的に使うには治験は不可欠であり、参加する患者のリスクを減らすという点でもDCTは有効だ」と言う。また、DCTはオンライン診療ほど簡単ではなく、すぐ逸脱してしまう点もあり、誰がいつまでに何を誰と行うか明確にするツールの作成は不可欠だともしている。
「治験の質を落とさず医療機関で差が生じないよう、手順の標準化では汎用性に特に注意し、誰でも使えるものにすることを目指した。ただし、医療現場でDXを進めるにはITアレルギーの問題があり、患者だけでなく医療機関にもITコンシェルジェのような機能が必要かもしれない」(土井氏)
ノバルティス ファーマで臨床開発を担当する山田博之氏は、DCT導入のハードルとして、医療機関の選定基準、ペインポイント、協議内容の3つが不明確であることを挙げている。「複雑なDCTの内容を事前に理解できるスターターキットは、医療機関負担を減らして導入のハードルを下げるだけでなく、責任を明確化できるのでトラブルも防げるので製薬会社にとってもメリットは大きい」とし、産学連携だからこそ全体を俯瞰できるものが実現できたともコメントしている。
今回発表されたスターターキットは今後も改善を重ね、フィードバックを取り入れながら他の成果物と併せて進化のサイクルを作ることを目指している。事例も含めた関連情報についてはMICINのページに掲載される予定だという。