スタートアップスタジオ協会が設立 DeNA南場智子氏、入山章栄氏が顧問対談
スタートアップスタジオ運営の課題と起業トレンド
理事メンバーによるトークセッションでは、株式会社ガイアックス 佐々木 喜徳氏、Creww株式会社 永野 祐輔氏、Studio ENTRE株式会社 中村 ひろき氏、デライト・ベンチャーズ 坂東 龍氏、株式会社R-StartupStudio 宮原 海斗氏、株式会社quantum 及部 智仁氏、株式会社みらい創造機構 兼城 駿一郎氏、株式会社Mentally 西村 創一朗氏の8名が登壇し、スタートアップスタジオ運営の課題や最近の起業傾向について議論した。
スタートアップスタジオ事業運営の課題として、代表理事の佐々木氏は、スタジオの認知度が低いことによるマネタイズや活動の難しさを挙げる。資金調達の際に、スタートアップスタジオが株を持っていることに違和感を持たれることもあるそうだ。しかしquantumの及部氏によると、海外ではスタートアップスタジオが株主となることはスタンダードだ。
「モデルナワクチンはフラッグシップ・パイオニアリングというVCが運営するスタジオから生まれた。海外ではスタートアップスタジオで孵化したものを外部のVCと協業して大きくしていくのがトレンド」と及部氏。
日本はスタートアップスタジオの歴史が浅く、支援の方法が体系立てられていないことも課題のひとつ。坂東氏は、「正解が見えないので、事業の失敗を繰り返しながら、四半期ごとにチェックポイントを見直している。協会の勉強会では、それぞれのスタジオではどのように支援しているのか、支援の仕方、事業の見極め方を情報交換していることです」と話す。
宮原氏は、「スタジオによって投資の方法、期間設定はまったく違う。それぞれに得意な分野、強みをもつスタジオが組んでリソースを提供することで、起業人口を支えるベースをつくれるのでは」とコメント。
全国にスタートアップスタジオ自体を増やしていくことも課題だ。この4月からスタートアップスタジオを立ち上げる兼城氏は「海外とは株式比率、スタートアップ人口、EXITの金額も違うので、海外の実例や成功モデルをそのまま日本に持ってこれるわけじゃない。我々もスタートアップとしてやっているのが現状です」とスタジオ立ち上げにも課題が多いようだ。
兼城氏は、一般社団法人沖縄スタートアップ支援協会の代表理事でもある。沖縄は、ワーケーションの投資家や経営者が集まり、渋谷などとはまた違ったコミュニティができているという。地方でのスタートアップスタジオ運営は、各地域の特色を出し、強みとするのがポイントになりそうだ。
スタートアップスタジオは、社内起業家も支援の対象としている。オープンイノベーションプラットフォームを運営するCrewwの永野氏は、「起業家支援に比べて、イントレプレナーはまだフォーカスが当たっていないように感じる。大企業の中には潜在的に起業家マインドを持っている方は多い。起業家やイントレプレナーをうまくクロスボーダーできる仕組みを構築できると、国内のスタートアップ創業率は伸びていくのではないでしょうか」と提案した。
最近の起業家の傾向としては、佐々木氏は、「ガイアックスがターゲットとしているのはZ世代中心。我々の世代は、“有名になりたい”、“お金持ちになりたい”といったモチベーションにしていたけれど、Z世代は社会課題や正義感、自分らしさを重視する。Jカーブを描くような成長と彼らの自己実現をどう重ね合わせるのかが重要だと日々感じています」とコメント。
エンタメ系の起業を支援する中村氏は、「ほかのスタジオに比べて、やりたいこと、作りたいものが決まっている人が多い。そのぶん丁寧に市場を見ないと失敗しやすいので、視野を広げるアドバイスをしています。自己実現は大事にしたい気持ちは強く、最終的にサービスが小さくなっても応援したいと考えています」と、やはり自己実現を重視する傾向は強いようだ。
社内起業家の傾向としては、「各業種・業界の専門知識はすでに十分に持っているので、マインドやテクニカルな部分をサポートすることで可能性は広がるのでは」と永野氏。
最近は40~50代のシニア起業もトレンドになっている。坂東氏によると「起業のハードルが下がっているので、起業は考えていなくても、課題感やアイデアを持っている人に声をかけると、起業につながることもある」とのこと。経験豊富なシニア起業は成功率が高いとの論文もあり、これからは還暦起業家も増えていきそうだ。