クリプトンは4月22日、ハイレゾ対応の小型アクティブスピーカー「KS-33」(ダブルスリー)を発表した。発売は6月下旬。クリプトンオンラインストア専売製品となる。
KS-3HQMの後継機。既発売の「KS-11」の上位機となる。スピーカーユニットなどはKS-11と同等だが、サイドパネルを樹脂製からアルミ削り出しに変更して、筐体に合わせたトーンバランスに再チューニングした。剛性の高い筐体は正確な再生には不可欠。ただ、樹脂素材のキャビネットでは敢えて鳴かして低域の量感を得る……といった考え方もできる。アルミキャビネットの採用によって低域の質自体は上がるが、特に小型キャビネットでは量感を得にくい面もある。そこでアクティブスピーカーという特徴を生かし、低域を少し持ち上げたトーンバランスにして調整を加えたという。このスピーカーを設計した渡邉氏は、この調整に約1ヵ月の時間をかけたとする。
もうひとつの違いは同梱するスピーカーケーブルだ。新設計した無酸素銅(OFC)ケーブルであると同時に長さも2mから3mに増やした。理由はデスクトップ上だけでなく、大画面化が進むテレビとの組み合わせも想定したためだという。「『音がよくなれば、画面の印象もよくなる』というNHKの研究結果もあり、大型ディスプレーの音質改善アイテムとしてぜひ使ってほしい」とする。
本体サイズは幅87×奥行き105×高さ176mmで、重量はペア1.6kg。Tymphany製の直径64mmコーンケーブ・メタルコーン フルレンジスピーカーユニットを採用し、アンプ出力は35W+35W。周波数特性は70Hz~20kHz。デジタル入力は192kHz/24bitのハイレゾ信号に対応。USB 2.0、光デジタル、3.5mmアナログ、Bluetooth入力が可能。BluetoothコーデックはSBC、AAC、aptX HDに対応する。
価格は7万9800円(税別)で、店頭販売はせず、KRIPTON Online Store専売商品となる。
短時間であるが「KS-11」との比較試聴もできた。ニアフィールドで聴くとフルレンジ1発ということもあり定位感がよくとても立体的に音場が形成される。男性ボーカルと女性ボーカルを聴いたが、中央にボーカルが浮かび上がり、その後ろの伴奏がスピーカーの後方にかなり広大に展開される。ここはドライバーやアンプが同等のKS-11とKS-33共通の特徴であり、KS-11の音の良さを改めて実感できた。
KS-11とKS-33の違いだが、筆者が利点に感じたのは曲のサビの部分などで音量が大きくなった際の破綻の少なさだ。かなり音のいいKS-11だが、KS-33と比べるとわずかに音の曖昧さや不明瞭さを感じる。KS-33は大音量時でも明瞭感や解像感が失われず、より余裕のある再現となる。また比べると気持ち音量が大きく、空間も広くなったような感想を持つが、ここは信号処理で低域を持ち上げている効果が出ているのかもしれない。トーンバランスという意味では、女性ボーカル(ダイアナ・クラール)の歌唱が若干ウォームな感じに聞えるなどニュアンスの違いが出た。高域のバランス感の差が多少出ているのかもしれない。
クリプトンのKSシリーズは今回の発表で3モデル構成となる。価格は5万円~10万円のレンジで差がついているが、どれも完成度が高い。単純な優劣というよりは音質傾向の違いなども踏まえつつ合ったものをチョイスするといいだろう。
ゴムの木を使ったオーディオボードなども登場
発表会ではオーディオボードの新製品「AB-777」(税別2万9000円、ブラックとナチュラルの2色展開)とピュア電源ボックス「PB-350」(税別5万9000円)も紹介された。ともに6月上旬の発売。
AB-777はオーディオラックに入れられるよう薄型にしているが9kgと重量がある。素材はゴムの木ランバーコア材。ゴムの木自体、比重が高く重さがあるが、さらに細かい鉄球サンドを中に充填しているためだ。鉄球は中で揺れて振動を吸収する効果を持つとともに、電磁波などのデジタルノイズを減衰する効果があるという。
ゴムの木は樹液を長期間にわたって採取した後、伐採される。これを板材にして活用したもので、環境負荷の低さも特徴だという。樹液を最終後とはいえ、残っている樹脂もあるため振動吸収の効果が高く、比重も高いなどメリットがある。クリプトンではスピーカースタンドなどでも利用してきた。ただ、接着技術などが求められるため、板にして使うケースはあまりないという。
サイズは幅450×奥行き400×高さ37mm。クリプトンではCDプレーヤーやネットワークプレーヤーの下に引く使い方を提案しており、同社が過去に販売していた「AB-3000」(2005年発売)と効果を比較するデモも実施された。
PB-350は既発売の「PB-150」のコンセント数を4基から6基に増やしたもので、大電流機器・高ノイズ機器と小電流機器をフィルターで分離して接続できる2回路フィルター構造を採用している。従来機種のPB-333はパナソニック電工製コンセントだったが、PB-150同様アメリカン電機製コンセントに変えている。また、ステンレス製のコンセントパネルは継承しつつ、シャーシ構造やフット部を改良。従来の1.5mm厚から2mm圧の鋼板に変更。プラ脚のフットを付けている。内部配線材は小電流機器側がOFC、大電流機器側をPC-Triple Cにしている。電源タップだけでなく、PC-5として7000円程度で単体売りしている2mのOFC電源ケーブルが付属する点もメリットだ。サイズは幅300×奥行き126×高さ69mm、重量は約2.7kg。
両製品とも従来機種との比較試聴ができた。まずボードの入れ替えだが、パイオニア製のCDプレーヤーの下に敷いているものを入れ替えただけで、高域がほぐれ開放的で華やかな再現になった。電源ボックスに関してもS/N感の向上が感じられた。楽器など直接音の明瞭さが向上する効果はもちろんあるのだが、演奏するオーケストラの外側、音が広がっていくホールの大きさや壁の材質まで分かるような空間の明瞭性が増すのが印象的だった。
渡邉氏によると「音質をグレードアップするため、アンプを交換する人が多いが、先に電源タップを変えてみることを提案したい」とのこと。数十万のコストを支払わなくても解像感の向上など音質改善効果が得られるとする。ポイントとしては、圧着部の接触抵抗を減らすことだそうだ。医療グレードのコンセントも不慮の事故で外れないようかなり硬い差し心地になっているとする。今回採用したアメリカン電機製のコンセントはユーザーからの評判もよいとのことだ。