自動配送ロボットのサービス実装に向けた協調、共助、官民連携のあり方とは
東:中野さんから政府の環境整備の方針をお聞きかせくださいますか。
中野:スケールさせるために協調が必要、という話は興味深い。各小売業が自前の配送ラインを持つのか、シェアリングするのかは大きな論点。ラストワンマイル配送に限らず、仕入れの物流も個社でやっており人手不足で困っています。ラストワンマイルはこれからなので、最初からシェアリングでやる手もアリ。一方で、イノベーションを考えると各社で競争してもらったほうが新しいサービスも出そうで悩ましいところです。
東:地域によっても共助の範囲や層が変わってきますよね。地方は共助社会を軸にシェアしていくことになりそうですが、玉野市さんで何かアイデアはありますか。
甫喜山:玉野市の利用者はお年寄りの方が中心。地域に根付かせるには、このサービスが便利なのかを伝えないといけない。デマンドタクシーの導入時は、電話で使い方を説明して予約できるコンシェルジュ機能を付加しました。配送ロボットについてもインターフェースを音声にするなどの機能を付けることが必要かなと考えています。
東:世代や多様性に対応したサービスにしていくことが大事になってきますね。つくば市さんの倫理原則は、どのような経緯でつくられたのでしょうか?
森:倫理原則は、生命医学倫理の4原則をベースにつくりました。スマートシティ化の推進で心配していたのがカナダのトロントの例です。自分の個人データがAlphabetグループに取られるのでは、という懸念から住民と対立して頓挫してしまった。本来、スマートシティ化は住民や地域の課題を解決するためにやるものです。その理念を企業と共有するために倫理原則の設定を発案しました。倫理原則を発表したことで住民への理解も進みましたし、企業からは当初は不安の声もありましたが、今は原則があるほうが実証や実装やりやすいという声に変わってきています。
東:ある程度、行政が仕切ると市民が安心してくれる面はありますよね。官民連携の一番のポイントはそこにあると思います。今後は、こうしたステークホルダープロセスでのルールづくりが重要になってきそうですね。
安藤:リビングラボの取り組みに近い話になると考えています。テクノロジードリブンにしすぎず、住民主導でどう使っていくか。データの取り扱いを含めて、コミュニティのルールづくりは必須になってくるでしょう。
牛嶋:お客様が便利に使っていただけるサービスを提供することに尽きると思っています。安全かつ便利なサービスであれば自ずと受け容れられるとも考えられるので、そのようなサービスづくりに尽力していきたいです。
NEDOでは、「自動走行ロボットを活用した配送サービスを普及・発展させていくための人材の育成・交流・研究の活性化にかかる特別講座」としてシンポジウム・セミナーを定期開催している。次回は5月11日に開催予定だ。