日本で起業した動機、すさまじい製品点数とコスパの理由とは?

17歳で日本縦断ヒッチハイク!ディスプレー市場の新星、JAPANNEXTのフランス人社長が色々スゴイ

文●宮崎真一 編集●ジサトライッペイ

提供: 株式会社JAPANNEXT

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PSPの輸出から始まったJAPANNEXT
そして、自分が欲しいディスプレー開発へ

――起業するにあたり、取り扱う製品で液晶ディスプレーを選んだ理由は?

ベッカー氏:起業当時は液晶ディスプレーではありませんでした。ちょうど大学院に進学した頃ですが、当時はソニーの携帯ゲーム機「PSP」の輸出から事業がスタートしました。そして、数年はゲームやカメラ、レンズ、それに海外では発売していない電化製品の輸出を手掛けていました。その後、円高になると輸出業は難しくなってくるので、逆に輸入を始め、10年間で4つの事業を展開してきました。

――初期は輸入・輸出事業だったんですね。

ベッカー氏:そうですね。10年後には扱う品目が5万点にも達しましたが、正直なところ、これだけ点数が多いと中にはよく知らないものもあるわけです。そこで、お金では得られない満足感というか誇りが欲しかったので、1つの品目に注力して、事業展開していきたいなと考えるようになりました。長い間そのように考えていましたが、6年前にその思いが実現して液晶ディスプレーの企画、販売をするようになりました。

――1つの品目に絞るというのはわかりますが、なぜそこで液晶ディスプレーなのでしょうか?

ベッカー氏:普段の業務を行うにあたってPCを使うのですが、1画面よりは2画面のほうが効率が上がります。それを3画面、4画面と増やしていくのですが、それなら大画面のディスプレー1台でもいいんじゃないかと考えるようになりました。また、事業とは別に先物取引とかトレーディングも行っていたのですが、そうなると画面数はすごく重要になってきます。

――トレーディング環境だと6画面の方もざらにいらっしゃいますもんね。

ベッカー氏:ですよね。でもその時に、例えば大型の4K曲面ディスプレーがあれば、もっと便利に活用できるのではないかと思い、いつかそういった製品を作り上げようと、液晶ディスプレーの事業を始めることにしました。2017年には、当時では世界初の65型4K曲面ディスプレーを発売できて、その時はすごく興奮していたのを覚えています。あとは、液晶ディスプレーは参入障壁が大きく、ほかの企業が容易にはマネしにくいというのもありました。

JAPANNEXTが2017年に発売した「JN-VC650UHD」。当時、世界初の65型4K曲面ディスプレーだ

――自分が欲しかったものを手掛けたという感じでしょうか?

ベッカー氏:そうですね。ですが、それだけではなくて、解像度やサイズ、スペックはいろいろな需要があります。そういった需要に応えることができるよう、尖ったスペックの製品も手掛けていきたいと考えてきました。

――液晶ディスプレーを手掛けて難しかった点はありますか?

ベッカー氏:全部難しいですね。例えば、品質管理も難しいですし、新しい技術や規格が出てきた時に、それを製品に取り込もうとするといろいろなバグが発生します。もちろん、それらのバグを取り除かないと発売できません。そういった作業が難しいのと同時に、ファームウェアに改良を加えていく点がおもしろいと思っています。また、コロナ禍では液晶ディスプレーでも半導体は多用されていますので、パーツの供給不足となりました。そのため、ほかのメーカーとパーツの取り合いが起きてしまうところが難しいですね。それこそ、毎日戦いです。

――壁が高ければ高いほど熱くなる感じでしょうか。

ベッカー氏:まさにそんな感じですね。壁が高いほど、それを達成した時の満足感や達成感も大きいです。私の中では、「壁が高いからやめる」という選択肢はありません。

壁は高ければ高いほどおもしろいというベッカー氏

「安い」に潜む「怪しさ」の払拭
高いコスパの理由は仕入れと広告

――液晶ディスプレー事業を手掛けてから、日本市場に対して何か印象的なことはありましたか?

ベッカー氏:日本のお客様は優しい方が多い半面、インターネットは怖いなと思いました。これは日本市場だけではないと思うのですが、たとえいいものを発売しても、価格設定が安いと、安っぽく思われてしまうというのがあります。当初はマーケティングに割く予算もなかったので、JAPANNEXTがどういった企業なのか、お客様にアピールすることができず、「怪しい」と思われる方がいらっしゃったかもしれません。

――そういったイメージを払拭するために、何か取り組みはされていたのでしょうか?

ベッカー氏:正直なところ、これまではしてこなかったんです。最近になって会社が大きくなり、ソニーマーケティングから日本マイクロソフトを経た方やパソコン大手メーカーで長い経験のある社員などが入社しました。それでセールス&マーケティング機能を強化できたので、今後はマーケティングもしっかりと取り組んでいきたいと考えています。

――液晶ディスプレーの技術も日進月歩の勢いですが、それに対応していくのもなかなか難しくはないですか?

ベッカー氏:難しいですが、仕事的にはおもしろい点でもあります。例えば、HDMI 2.1が発表された時に、ようやくそれに対応した4Kゲーミングディスプレーを発売できると興奮しました。ですが、私の中では興奮99%、不安1%です。新しい規格や技術というのは、これまでの上積みがありませんから、最初の企画フェーズから商品化できるまでの開発チームによる検証プロセスはもちろん、最後のデバッギングフェーズはすごく大変です。しかし、困難なことこそ前向きにチャレンジして妥協なく取り組んでいます。そういった挑戦こそがおもしろいところでもあります。

HDMI 2.1対応で31.5型の4Kモデル「JN-315IPS144UHDR」。昨年10月に発売した当時は同規格対応ディスプレーで最安と、大きな話題になった

――昨今の液晶ディスプレーはリフレッシュレートがどんどん高くなる傾向になりますが、その点はどう捉えていますか?

ベッカー氏:私がコアなゲーマーではないので、144Hzでも十分と個人的には思います。とはいえ、コアなゲーマーにとってはリフレッシュレートは高ければ高いほどいいという話も聞きますし、弊社でもリフレッシュレート360Hzの液晶ディスプレーを3月に発売しました。今後、480Hzなどより高リフレッシュレートに対応した液晶パネルが登場した際には、手掛けないという選択肢はないと思っています。

360Hz駆動に対応した24.5型モデルの「A-360」(型番:JN-I245FR360)。Amazon.co.jp限定で税込価格は5万3980円とコスパは抜群だ

――御社製品のコストパフォーマンスは非常に高いと思います。どうして他社製品に比べて安い価格設定ができるのですか?

ベッカー氏:1つは仕入れの仕方ですね。弊社は取引先が非常に多くて、安価に仕入れることが可能なタイミングがどこかにあります。それを逃さず、仕入れを行っていることが大きいですね。しかも、弊社は少人数で小さなチームを組んで開発を行っていますから、そこから2~3ヵ月で新製品を市場に投入できます。あと、弊社はほとんど広告を出していないので、広告費用を抑えることで、そのぶん製品の価格を抑えられるというところもあります。

――広告費を抑えるというところは、製品の総コストを抑えられるというメリットもあれば、当然デメリットもあると思いますがいかがですか?

ベッカー氏:もちろん広告費用を大きくかければ、それだけお客様の目にも留まりやすいと思うのですが、品質的・機能的にいいものを作れば、お客様の間にも自然と広まっていくのではないかと考えています。広告費の有無はどちらにもメリットがあるとは思いますが、お客様のコストを少しでも抑えることができるように広告費を最低限に抑え、最高のコストパフォーマンスの製品の開発、お客様の満足度をトップ・プライオリティーとしたカスタマーサポート体制に力を入れています。

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