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確定申告事件簿 第6回

【2022年提出 確定申告】医療費控除はなにが対象? 人間ドックやサプリは?

2022年03月17日 09時00分更新

文● 前川亜紀 監修●高橋創(税理士) 編集●飯島恵里子/ASCII

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医療費控除は「治療」はOKで、「予防」はNG
セルフメディケーション控除もチェックしておこう!

 まず、医療費控除の適用についてざっくりと覚えておきたいのが、「損なわれたものを治すためのものはOK、現状維持や予防のためのものはNG」という考え方です。

●主な医療費控除の対象
・医師・歯科医師による医療機関での診療や治療にかかった医療費
・入院の際の部屋代や食事代の費用などの入院費
・医療機関で診察を受けるための通院費
・処方された薬代
・出産費用や定期健診などの費用、通院費
・あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師、はり師、きゅう師の施術に支払った費用
・市販の胃薬や風邪薬などの治療薬の購入費用
・子供の不正咬合のために必要とされた歯列矯正費とその交通費(付き添い人分も含む)

 ほかにも介護にかかる費用などいろいろありますが、こうして並べてみると、「現状維持や予防」を目的とする人間ドック(病気が発見されれば医療費控除の対象)、予防接種、サプリメント類の購入、美容整形などが認められないのがお分かりいただけると思います。

 続いて控除金額について。「医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定額(この場合は10万円)を超えたら、その超えた部分についての所得控除が受けられる」という制度なのです。つまり医療費控除の対象になるのは、支払った医療費すべてではなく「一定金額を超えた分」のみです。ここでは年収が200万円以上の人を例にとって解説していきます。

 医療費控除の計算式は「1年間に支払った医療費」-「保険金などで補填される金額(医療保険等)」-10万円です。例えば、所得が200万円で年間の医療費が20万円の人がいたとしましょう。その人は、3万円の医療保険金を受け取っていたと仮定します。この場合の医療費控除の対象額は7万円(20万円-3万円-10万円)です。所得が200万円ほどの方の税率は5%ですから、7万円×5%の3,500円分の税金がやすくなることとなります。

 そう考えると「微々たる効果しかないのか」と思ってしまいますが、そうではありません。負担した医療費や年収によって金額が変わりますが、万単位で納税額が減ることもあります。

 さて人間ドックを毎年実施している優梨愛さんの場合は、2017年に導入された「セルフメディケーション税制」の特例を今後考慮に入れるといいかもしれません。

 これは、健康の維持を心がけたり、病気の予防に関する一定の取組み(優梨愛さんの場合には人間ドックで検査をしていること)をしている人が適用の対象者になります。

●一定の取り組み
・保険者(健康保険組合、市区町村国保等)が実施する健康診査(人間ドック、各種健(検)診など)
・市区町村が健康増進事業として行う健康診査(生活保護受給者等を対象とする健康診査)
・予防接種(定期接種、インフルエンザワクチンの予防接種>)
・勤務先で実施する定期健康診断(事業主検診)
・特定健康診査(いわゆるメタボ検診)、特定保健指導
・市町村が健康増進事業として実施するがん検診

 セルフメディケーション税制は「スイッチOTC医薬品」(要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品)を購入した場合、年間購入額が1万2000円を超えた分のみ、所得控除が受けられます。

 一般によく知られている製品でいうと、鎮痛剤として有名な「ロキソニンS」や、鼻炎薬「エスタック鼻炎24」などがそのひとつ。対象医薬品のパッケージには「スイッチOTC薬品」であることが記載されているので、店頭でもすぐにわかるはず。ただ上限8万8000円の限度額があります。なお、セルフメディケーション税制を選択した場合、医療費控除は受けることができません。

 最後になりますが、確定申告書類の作成時には、基本的には医療機関の領収書や交通費の明細などが必要となります。普段から管理・保管しておきましょうね。

 

監修者紹介――高橋創税理士(髙橋創税理士事務所)
 1974年東京都生まれ。東京都立大学経済学部卒業。専門学校で所得税法の講師,会計事務所勤務を経て2007年に新宿で髙橋創税理士事務所を開設。税理士業の傍ら新宿ゴールデン街のバー「無銘喫茶」の経営なども行う。
 著書に『桃太郎のきびだんごは経費で落ちるのか? 日本の昔話で身につく税の基本』(ダイヤモンド社,2021年)、『「知りたい!」がすぐひける 小さな会社の経理・人事・総務』(西東社,2022年)などがある。

髙橋創税理士事務所 https://takahashi-hajime.jp/

 

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