未来は理想と現実のせめぎあい
── 計画は計画として、実現には難しいこともあるんじゃないですか?
國嶋 そもそも新しいことをするハードルはどの世界でも高いんですよね。豊洲MiCHiの駅でも、敷地内に交通広場を作ってバスが発着できるようにしています。
── そこで事故が起きたらどうするんだと、保険などの問題もからんできそうです。
國嶋 そうです。そこで交通広場は正式な道路ではないのですが、道交法をかける調整をしています。デッキにモビリティを置くにしても、法的な扱いでの調整をしています。
── 法的なところ以外の慣習的なところでの調整も難しそうですね。
國嶋 道路といっても国道、市町村道、都道では管理者が異なりますし、交通管理者である警察との調整も簡単ではありません。
溝口 まちの最適化というものは個々の犠牲の上に成り立っているので、まちのルールがないと実装できない。行政、多くの民間企業、住民の合意形成が無いと実現できないと思います。既得権益との調整がむずかしいと。スマートシティは一見、最新技術を取り入れた未来都市を想像させる華やかなイメージがありますが、その実現には、泥臭い既得権益の調整、合意形成、まさに産官学による共創が必要であると日々実感しています。
── 新しい土地ならやりやすいんじゃないかというところもあると思います。
溝口 そうですね。グリーンフィールド※と呼ばれている更の土地にまちづくりのルールづくりから始める。個別開発の集積になると後から既得権益の調整が必要になるからです。その意味で、豊洲でどれだけできるかというのはひとつのトライアルだと思っています。産官学連携による共創のまちづくり。豊洲MiCHiの駅を起点とする交通防災まちづくりを皆様に共感頂きながら、推進していけたらと思っています。
※インフラ投資関連用語。グリーンフィールドは草が生い茂って開発が必要な土地、ブラウンフィールドはすでに開発されて整地された土地のことをあらわす。
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遠藤諭(えんどうさとし)
株式会社角川アスキー総合研究所 主席研究員。プログラマを経て1985年に株式会社アスキー入社。月刊アスキー編集長などを経て、2013年より現職。角川アスキー総研では、スマートフォンとネットの時代の人々のライフスタイルに関して、調査・コンサルティングを行っている。「AMSCLS」(LHAで全面的に使われている)や「親指ぴゅん」(親指シフトキーボードエミュレーター)などフリーソフトウェアの作者でもある。趣味は、カレーと錯視と文具作り。2018、2019年に日本基礎心理学会の「錯視・錯聴コンテスト」で2年連続入賞。著書に、『計算機屋かく戦えり』(アスキー)、『ジェネラルパーパス・テクノロジー―日本の停滞を打破する究極手段 』(野口悠紀雄氏との共著、アスキー新書)、『頭のいい人が変えた10の世界 NHK ITホワイトボックス』(共著、講談社)など。
Twitter:@hortense667Facebook:https://www.facebook.com/satoshi.endo.773
(提供:清水建設株式会社)
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