4Kゲーミングも静音でこなせる!
Core i9-12900K&GeForce RTX 3080のデュアル水冷PC「G-Master Hydro Z690/D4」の実力をチェック
2022年02月28日 14時00分更新
サイコムの「G-Master Hydro」シリーズは静音性・性能の両面で魅力的なBTOパソコンだ。CPUもビデオカードも水冷仕様の特殊なモデルなので基本的に価格は高めだが、「G-Master Hydro Z690/D4」はDDR4メモリーを採用することで価格を抑えている。そのため、高価になりがちな第12世代インテルCoreプロセッサー(以下、第12世代Core)搭載機の中では、比較的購入しやすいモデルとなっている。
もちろん、最高性能を求める人なら半端な妥協はせず、DDR5メモリー採用モデルを選ぶほうが満足できるだろう。しかし、メモリーによる速度差が大きいアプリは現状多くはない。費用対効果をシビアに考えるなら、DDR4メモリーの「G-Master Hydro Z690/D4」を選んだほうがコストパフォーマンスは高くなる場合が多い。
G-Master Hydro Z690/D4の内部を中心に、ハードウェア面を中心に紹介したが、今回は性能面をチェックしていこう。試用したモデルは標準構成からCPUをCore i9-12900K、ビデオカードをGeForce RTX 3080、メモリーを8GB×4へスペックアップしたモデルだ。ほかのPCパーツも若干変更しているので、下記の表を確認してほしい。
G-Master Hydro Z690/D4 | ||
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標準構成の主なスペック | 試用機の主なスペック | |
CPU | インテル「Core i7-12700K」(12コア/20スレッド、最大5GHz) | インテル「Core i9-12900K」(16コア/24スレッド、最大5.2GHz) |
CPUクーラー | Asetek「650LS」(簡易水冷、240mmラジエーター)+Enermax「UCTB12P」(120mmファン) | Asetek「670LS」(簡易水冷、240mmラジエーター)+Enermax「UCTB12P」(120mmファン)×2 |
マザーボード | ASUS「TUF GAMING Z690-PLUS WIFI D4」(インテルZ690、ATX) | |
メモリー | 8GB×2、DDR4-3200<メジャーチップ・8層基板> | G.SKILL「Trident Z RGB F4-3200C16Q-32GTZR」(8GB×4、DDR4-3200) |
ストレージ | インテル「SSD 670p Series SSDPEKNU512GZ」(512GB M.2 SSD、PCIe 3.0、システムドライブ) | インテル「SSD 670p Series SSDPEKNU010TZ」 (1TB M.2 SSD、PCIe 3.0、システムドライブ) |
ビデオカード | GeForce RTX 3070(8GB GDDR6、LHR版)+Asetek「740GN」(簡易水冷、120mmラジエーター)+Enermax「UCTB12」(120mmファン) | GeForce RTX 3080(12GB GDDR6X、LHR版)+Asetek「HybridGFX 240」(簡易水冷、240mmラジエーター)+Noctua「NF-A12x25 ULN」(120mmファン)×2+VGAサポートステイ |
無線機能 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2 | |
電源ユニット | SilverStone「SST-ST85F-GS V2」(850W、80 PLUS GOLD) | |
PCケース | Fractal Design「Define 7 Black/White TG Clear Tint」(E-ATX、ミドルタワー) | Fractal Design「Define 7 White TG Clear Tint」(E-ATX、ミドルタワー) |
OS | Microsoft「Windows 10 Home 64bit」 | Microsoft「Windows 11 Home 64bit」 |
直販価格(2022年2月25日時点) | 36万7900円 | 51万9280円 |
CPU性能はUEFIの電力設定次第!?
200Wクラスまで耐えられる水冷クーラー
まず最初に気になる部分と言えば、CPUの性能だろう。第12世代Coreの最上位「Core i9-12900K」は16コア/24スレッドで非常に性能が高いぶん、発熱も大きくなりがちだ。240mmラジエーターの水冷CPUクーラーで、どのぐらい冷やせているのか調べてみた。
CPUの最大性能を見るため、CGレンダリングでフルスレッド動作を実行できる「CINEBENCH R23」を使用した。マルチスレッド処理を行うため、性能だけではなく、CPUの発熱を見る負荷テストとしても活躍してくれる。設定はデフォルトのまま試したので、約10分間の平均性能となる。
Multi Coreテストの結果は21403ptsと、価格帯が比較的近い前世代CPUや第4世代Ryzenなどと比べると非常に優秀だ。しかし、自作したCore i9-12900K搭載PCと比べると低めの値で、CPUのポテンシャルを考えるともっとスコアーが上でもいいはずだ。というわけで、CPUの電力設定をいじってみることにした。
電力設定をいじる前に、第12世代Core世代のCPUの消費電力と発熱量について説明する必要があるだろう。第11世代インテルCoreプロセッサーまでは「TDP」という指標で語られていたものだ。本来はCPUを安全に動かすための指標だったのだが、近年のデスクトップPC、こと自作PCにおいては多くのマザーボードでTDP以上の電力で動くことを前提としたUEFI設定になっていることがほとんどで、もはや形骸化していた。
そこで、第12世代CoreではこのTDPに代わる新たな指標として、2種類の値が示されることになった。1つはターボブースト時の最大値になる「Maximum Turbo Power」、もう1つは従来のTDPの考え方に近い「Processor Base Power」だ。Core i9-12900Kに高負荷をかけた場合、一定時間はMaximum Turbo Powerの241Wを上限に動作させ、この時間を過ぎると、Processor Base Powerの125Wで動作させる、という設定が一般的な動作となる。
この数値はマザーボードの「PL1 Power Limit」(Processor Base Power)と「PL2 Power Limit」(Maximum Turbo Power)設定によって変更でき、デフォルトではそれぞれ125W、241Wになっていた。この数値を引き上げればそれだけより速く動作することになる。ただし、そのぶん当然CPUの発熱が大きくなる。どこまで引き上げても大丈夫なのか確かめるため、まずはデフォルト設定の状態でCPUの温度や電力設定がどうなっているのか、モニタリングソフト「HWiNFO64 Pro」を使ってチェックしてみた。
CPU Package Powerが約124.9Wになっていることからわかる通り、PL1の設定(125W)がしっかりと効いている状態だ。この時のCPU温度は、たったの65度。水冷CPUクーラーの冷却性能にはまだまだ余裕があり、さらに電力設定を高くしても耐えられる余裕がありそうだ。そこで、PL1をPL2と同じ241Wに設定し、常時Maximum Turbo Powerで動作するように変更し、再度CINEBENCH R23を試してみた。
Multi Coreのスコアーは25462ptsと大きく伸びたものの、CPU温度は余裕がなく、常時100度に張り付いてしまっていた。さすがにPL1を241WにしたCore i9-12900Kを冷やすには、240mmラジエーターの水冷クーラーには荷が重かったようだ。
この設定のまま繰り返しCINEBENCH R23を実行していたところ、CPU Package Powerの平均電力は210W前後で安定。このラインが上限となっているようなので、安全な範囲で最大性能を出したいというのであれば、PL1の設定は200Wあたりにしておくと良さそうだ。
なお、ラジエーターファンやPCケースファンの回転数を上げるなどの設定を別途行えば、結果はまた変わってくるだろう。しかし、G-Master Hydro Z690/D4は静音仕様もウリの1つ。性能を上げるために本来の持ち味を手放したくはなかったので、今回はPL1設定の変更のみにとどまった。
また、デフォルト設定ではCore i9-12900Kの性能が出ないかというと、実はそうでもない。CINEBENCH R23のテストはあくまで長時間高負荷が続く用途を想定したもので、負荷が刻々と変化する一般的な用途(ゲームなど)においては十分冷却できており、しっかりと性能を引き出せていたので安心してほしい。