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業界人の《ことば》から 第474回

自分流の経営手法はない、日本ブランドを子会社化し再建したシャープ戴会長

2022年03月01日 09時00分更新

文● 大河原克行 編集●ASCII

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液晶日の丸連合を蹴ったシャープ

 そして、戴会長兼CEOは、こんなことにも言及した。

 「かつて経済産業省が主導した『液晶日の丸連合』は、シャープが参加しなかったことで、その構想が頓挫したが、私は日本の将来のためにも、日本にディスプレー事業を残し、再び世界をリードしていくべきだと考えている。かねてより、ディスプレー事業を集結させた『日の丸連合2.0』の必要性を訴えてきた。今回のSDPの完全子会社化が、こうした動きを加速するきっかけになることを期待していている」

 2011年9月に設立したジャパンディスプレイは、日立製作所、東芝、ソニーの中小型液晶ディスプレー事業を統合してスタートした。もともと東芝のディスプレー事業にはパナソニックが、ソニーのディスプレー事業にはセイコーエプソンや三洋電機の事業がそれぞれ統合されてきた経緯があり、そこに、産業革新機構が2000億円を出資して設立した経緯をみれば、まさに「液晶日の丸連合」そのものであった。

 このとき、経済産業省からの参加要請を断ったのがシャープだった。

 だが、戴会長兼CEOは、いまこそ、「液晶日の丸連合2.0」が必要だとする。

 1998年頃までは、日系メーカーの液晶生産能力シェアは全世界の70%を占めていた。だが、2003年にトップシェアの座を韓国、台湾に奪われて一気に3位に転落すると、その後もシェアは大きく減少。2014年以降は、10%を切る水準にまで落ち込んでいる。そして、ジャパンディスプレイも低迷したままであり、シャープが完全子会社化するSDPも赤字が続いている。

 戴氏にとって、「液晶日の丸連合2.0」の実現は、シャープの経営者として、最後の夢なのだろう。CEO退任を発表した社員向けメッセージのなかで、「液晶日の丸連合2.0」という言葉を持ち出し、SDPの完全子会社化に多くのスペースを割いたことからもそれが伝わってくる。

 日本の液晶事業をこれから再建するには、強力なリーダーシップが必要だが、それが見当たらない。このままでは残念ながら絵に描いた餅のままで終わってしまう。

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