クボタが、1922年に開発、製造した農工用石油発動機は、同社初の農業関連製品であった。今年は、ちょうど100年目の節目を迎えている。
クボタの北尾裕一社長は、「クボタは、日本の農家に育ててもらった企業である。日本の農業が一番の基盤であり、クボタが世界で培った開発力、調達力、供給能力を活用し、日本の農家に、ソリューションを提供したい」とする。
クボタは、農業の機械化が食料の安定供給につながると考え、多くの製品を世の中に送り出してきた。そして、クボタの製品が、農業の新しい常識になったということが、何度も繰り返されてきた。
たとえば、1997年に製品化した「パワクロ」と呼ばれるパワークローラを搭載したトラクターは、揺動支点を下げるという大胆なアイデアによって、牽引抵抗が高まってもクローラユニットが浮き上がらず、十分なグリップ力や牽引力を発揮できるようになったことで、傾斜地でも作業が行えるトラクターが常識となった。
また、自動で直進走行ができる「GS」は、未熟練者でもまっすぐに走行でき、田植機では、誰でも簡単に、まっすぐ植えられるという新たな常識を作った。
農作業では直進作業が多いが、直進するには熟練の操作が必要となるため、限られた人に作業が集中するという負担が生まれていた。GSの搭載により、アルバイトでも少し指導するだけでまっすぐ植えることができるため、担い手農家では、人員確保がしやすくなり、農業の規模を拡大できるというメリットが生まれた。GS搭載田植機は、2016年に発売して以降、累計1万台の出荷を突破したところだ。現在はトラクターにも採用している。ちなみに、GSは、Go Straightから命名した。
この連載の記事
-
第606回
ビジネス
テプラは販売減、でもチャンスはピンチの中にこそある、キングジム新社長 -
第605回
ビジネス
10周年を迎えたVAIO、この数年に直面した「負のスパイラル」とは? -
第604回
ビジネス
秋葉原の専門店からBTO業界の雄に、サードウェーブこの先の伸びしろは? -
第603回
ビジネス
日本マイクロソフトが掲げた3大目標、そして隠されたもう一つの目標とは? -
第602回
ビジネス
ボッシュに全株式売却後の日立「白くまくん」 -
第601回
ビジネス
シャープらしい経営とは何か、そしてそれは成果につながるものなのか -
第600回
ビジネス
個人主義/利益偏重の時代だから問う「正直者の人生」、日立創業者・小平浪平氏のことば -
第599回
ビジネス
リコーと東芝テックによる合弁会社“エトリア”始動、複合機市場の将来は? -
第598回
ビジネス
GPT-4超え性能を実現した国内スタートアップELYZA、投資額の多寡ではなくチャレンジする姿勢こそ大事 -
第597回
ビジネス
危機感のなさを嘆くパナソニック楠見グループCEO、典型的な大企業病なのか? -
第596回
ビジネス
孫正義が“超AI”に言及、NVIDIAやOpen AIは逃した魚、しかし「準備運動は整った」 - この連載の一覧へ