コアがZen 3+になったRyzen 6000 Mobile
描画性能はRyzen 7 5800Uの約2倍でUSB4.0にも対応
続いてはRyzen 6000 Mobileについてだ。Rembrandtというコード名で知られていた製品で、TSMCのN6ベース、またGPUをNavi 2ベースにするところまでは予想どおりだったが、意外だったのはコアがZen 3+になったことだ。
このZen 3+については今のところ詳細が一切明らかにされていない。ISSCCでも、“2.7 Zen3: The AMD 2nd-Generation 7nm x86-64 Microprocessor Core”というセッションは予定されているが、これはどう見てもZen 3の話でZen 3+ではないと思われる。
こちらはおそらく2月の製品投入に合わせてなかしら情報公開されることを期待したいが、最悪は8月のHotChipsあたりまでなにも出てこない可能性がある(その前にLinley Spring Processor Forum 2022で出てくるかもしれないが)。
ただ“50 New and Enhanced Power Management Features”や“New Deep Sleep States”などが上がっているあたりは、IPCそのものを向上させたというよりはIPC/W、つまり性能を落とさずに省電力化を進めたという方向性の可能性が強く、その場合でも同じ消費電力ならより動作周波数を引き上げられる余地があるわけで、IPCそのものは変わらなくても実際の性能そのものは引きあがっている可能性が高い。
加えてGPUもVegaからNavi 2ベースになった。12CUのNavi 2ということは、AMDが1月19日に発表したOEM向けのRadeon RX 6400と基本的な構成は同じになる。
もちろんRadeon RX 6400は64bit/16Gbps GDDR6をVRAMとして利用するので、メインメモリーを共有するRyzen 6000 Mobileが同じ性能を出せるとは思えない(ついでに言えば動作周波数もおそらくRadeon RX 6400ほどには上がらないだろう)とはいえ、Vegaベースの従来製品からは大幅に性能が改善している。CU数で言えば1.5倍だが、描画性能で言えば2倍近くまで向上していると考えていいだろう。
問題は実効描画性能で、これはメモリー帯域次第である。Radeon RX 6400は64bit/16Gbpsで128GB/秒の帯域を占有できるが、Ryzen 6000 MobileはLPDDR5-6400×2でも合計102.4GB/秒にしかならないからだ
性能としては、現行のRyzen 7 5800Uと比較してCPU性能で最大で1.3倍、GPUを使ったアプリケーションで2倍前後の性能が発揮できるとしており、また消費電力は15~40%の削減が可能になった、としている。
また内蔵GPUでのゲーム性能はおおむねフレームレートが2倍になったとする。
筆者の体感で言うなら、Ryzen 5000Gシリーズの場合は1600×900ピクセルなら使いものになるが1080pは厳しい感じだったのが、今度は1080pでもそこそこ使い物になりそうではある。実際FSRも併用すると、60fps近い動作が可能というあたりは、だいぶ性能の底上げがなされているようだ。
FSR UltraQuality(1.3x)ではなくFSR Quality(1.5x)なわけで、レンダリングそのものは720p(1280×720ピクセル)でこの数字ということになる。それでもCall of Duty VanguardはFSRなしでも60fpsを確保できている
その他の特徴が下の画像だ。一番驚いたのはUSB 4.0に正式対応することだ。PCIeはGen 4のままだが、これはモバイル向けということを考えれば妥当だろう。
モバイル向けはDDR5/LPDDR5のみのように見えるが、やや疑っている。現時点でこれのみにすると、メモリーの供給が追い付かないためだ。したがってDDR4/DDR5/LPDDR4/LPDDR5に対応するのではないかと予想する
ちなみに発表ではTiger Lakeとの性能比較もあったが、インテルはここにAlder Lake Mobileを投入しているわけで、比較はAlder Lake Mobileと行なうのが妥当だと思われる。スライドそのものは先のKTU氏の記事にもあるので興味ある方はご覧いただきたい。
さて、Ryzen 6000 Mobileは2月に搭載製品が市場投入予定となっており、これはいいのだが、問題はデスクトップ版だ。Warholと呼ばれるコード名で知られているが、こちらはZen 3+コアにNavi 2、TSMC N6で製造と言われており、おそらくRembrandtをデスクトップに転用すると思われる。競合はAlder Lakeの下位製品、つまりP-Core×6でE-Coreを持たないSKUだろう。
このWarholだが、AM4 Socketを利用し、DDR4/PCIe Gen4対応になるとしている。PCIe Gen4はRembrandtがそもそもGen 4対応だから問題ないとして、問題はメモリーである。「DDR4/DDR5/LPDDR4/LPDDR5に対応するのではないかと予想する」と書いたもう1つの理由がこのデスクトップ対応というか、Socket AM4対応である。
Socket AM4を使う限りはDDR4が利用できないとまずいからだ。もちろんSocket AM4を使うとオーバークロックメモリーでもDDR4-4000あたり。がんばればDDR4-4400あたりが入手できるが、それでもメモリー帯域は70.4GB/秒程度になる(DDR4-4000だと64GB/秒、定格のDDR4-3200では51.2GB/秒でしかない)から、CPU性能はともかくGPU性能はこのメモリー帯域がネックになると思われる。そこで、CU数は多少無効化したうえで、動作周波数を比較的高めにした構成で投入するように思われる。
このWarhol、時期的に言えばRyzen 7 5800X3Dとさして変わらない、4月あるいは5月あたりになるだろう。
Zen 4ベースのRyzenは今年後半とされており、おそらくファーストプレビューが6月のCOMPUTEX、8月くらいに発売日を予告、9~10月あたりに製品投入といった感じで、それまでの間を現行のRyzen 5000GシリーズでAlder Lakeと戦わせるのは酷だからだ。
AMDとしても当初はモバイル向けに注力するだろうが、これが一段落した頃にはPro版やデスクトップ向けにRembrandtを振り分ける余力が生まれると思われる。

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