前回に引き続き、Nikon「Z 9」で撮った鞆の浦の猫シリーズである。写真ってファインダーをのぞいて撮るのが楽しい。撮影に集中できるから。被写体と直接対話しながら(相手は猫だとしても)一番いいタイミングでシャッターを切れる。
ミラーレス一眼だとEVFになるけど、EVFってすごくコストがかかるところだからどうしても低価格なモデルとハイエンドモデルでは見え具合が違う。その点、Z 9はニコンがもともとファインダーにこだわるメーカーな上に、バリバリの最ハイエンド機だからして、のぞいていて気持ちいいのだ。
ただ、ファインダーをのぞいて撮ると腰が疲れる。一番いい構図で撮ろうと思うと、腰を伸ばしたり曲げたりして高さを変えるので、気がつくと負担がかかってるのだ。
これなんか、手前の草がどのくらいボケて入って、背景がどのくらい入って、ってイメージしながら撮ってるうちに、足腰にクルのである。撮影時のちょっとした高さの違いは大事なのだ。
でも、背面モニターで撮る楽しさもある。デジタルカメラが偉大だったのはファインダーをのぞいて撮るという呪縛から解放したことだ、とすら思うのだ。特にZ 9は、最近珍しいチルト式モニターなので、さっと開いてさっと撮れる。ファインダーでは対応できないアングルで、這いつくばらなくても地面にいる猫の目の高さで撮れるのだ。
猫の目線で撮ることで猫の姿をきれいに捉えられるし、背景も入れやすい。人間の目の高さから撮るとどうしても背景に地面が多くなっちゃって、場の雰囲気が伝わりにくくなるからね。
冒頭写真もそう。猫の目の高さで撮ってるのがミソだ。しかも、Z 9の猫瞳AFがすばやく対応してくれたおかげで、向こうを向いた猫が振り返った瞬間でもちゃんと目にピントが来てる。これは撮ってて楽しい。
ちょっと遠くにいるキジトラ猫と目があった、と思ったら、階段脇の斜路をとことこと上ってきてくれたのである。石畳の坂を上ってくる姿っていい。これはZ 9のリアルタイム猫瞳AF+連写性能が活きるパターンだ、としゃがんで撮りはじめた。
もっとこっちへおいでおいでと思いながらシャッターを切ってると、急に横を向いて姿を消してしまったのである。写真の向かって右に排水用の側溝があり、そこに入ってしまったのだ。
理由は数秒後に判明した。階段の上からチャシロ猫がおりていったせいである。どうも2匹は仲が大変悪いようで、キジトラの方が隠れちゃったのだ。
そっと階段を降りて行ってみると、溝からちょっと顔を出して周囲を伺ってるキジトラを発見。無事やりすごせたらしい。
このとき「あ、この姿をこういうアングルでこう撮りたい」ってイメージが頭の中にできちゃったのである。そうなったら、撮りたい。そしておもむろにモニターを縦にチルトさせる。Z 9は縦横両方にチルトするという変態な(褒めてます)可動式モニターなのである。
最近はバリアングル式モニターのカメラばかりになっちゃってチルト式が減ってるのが大変腹立たしいのだが(個人の感想です)、Z 9はチルト式ながら縦横両方に対応していてありがたいのである。撮影スタイルとしては褒められたものではないのだけど、猫の瞳を自動的に捉えてくれるからピントの心配はいらないわけで、あとはモニターを見ながら狙った構図を作りブレないようシャッターを押せばいいのである。
具体的には、右手一本でカメラを持ち、側溝の中へ。
そして撮ったのがこれだ。
かくして、Z 9は手にしてるとどんどんイメージが膨らんでいろいろと撮りたくなるカメラなのだった。いまさら欲しいと思っても、入手できるのはかなり先になりそうなのが悩ましいところなのだけど。
個人的には体力や腰痛的な観点から、縦位置グリップなくていいから連写も弱くていいからそこまで頑丈じゃなくていいから、もうちょっと軽いモデルがいつか出ますように。
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筆者紹介─荻窪 圭
老舗のデジタル系ライターだが、最近はMacとデジカメがメイン。ウェブ媒体やカメラ雑誌などに連載を持ちつつ、毎月何かしらの新型デジカメをレビューをしている。趣味はネコと自転車と古道散歩。単行本は『ともかくもっとカッコイイ写真が撮りたい!』(MdN。共著)、『デジカメ撮影の知恵 (宝島社新書) (宝島社新書)』(宝島社新書)、『デジタル一眼レフカメラが上手くなる本』(翔泳社。共著)、『東京古道散歩』(中経文庫)、『古地図とめぐる東京歴史探訪』(ソフトバンク新書)、『古地図でめぐる今昔 東京さんぽガイド 』(玄光社MOOK)。Twitterアカウント @ogikubokei。ブログは http://ogikubokei.blogspot.com/
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