何年かぶりに訪れた場所で以前と同じ猫に出会うと「おおー、生きていたかー、元気かー!」ってなって妙にうれしい。冒頭のあくび長毛猫がそう。小さな駐車場の脇のブロックの上にちょこんと座ってたのだ。
鞆の浦って猫によく出会うし、似た模様の猫が多いので個体の識別が苦手な人には判断しづらいのだけど(わたしがそうです)、これだけ特徴的だと印象に残ってる。長毛でふさふさのキジトラである
おじいさんだかおばあさんだかわからないけど、見た目が老猫っぽいので余計に感慨深いのだ。歯もちゃんと揃ってるし。
以前に会ったのはいつだったっけ、とAdobeのLightroom Classicで古いライブラリを開いて探してみた。Lightroom Classicで写真を管理してるのです。「鞆の浦」ライブラリを開いて大量の写真からだだだっと目視で探してて発見した。2018年の1月2日。ちょうど4年前だ。しかもまったく同じ場所。うしろに止まってる車もまったく同じ。ここが定位置だったんだねえ。
別構図の写真も発見。いい顔をしてますな。さすがに4年前だと今より顔が若い。
となると、この猫が写ってるもっと古い写真はないかと探したくなる。そしたら見つかったのである。なんと2015年。7年前だ。ほぼ同じ場所で、石畳をとことこと歩いてくる写真が残ってたのだ。
撮影したのは2015年の9月。顔の周りはすっきりしてるけど、尻尾はやたらふさふさしてるし、夏だったから毛も短かったんじゃなかろうか。顔の模様も同じなので同じ猫だと思うのだよね。
同じということにしておこう。年に1~2回しか訪れない場所で(しかもコロナ禍もあって久しぶりの訪問で)、旧知の猫に会えたって予想以上にうれしいもんだわ。
そうなると、他にもいないかと探したくなるのだが、意外にいない。外猫って寿命が短いし、貰われていったり違う場所に移ることもあるし、人なつこい猫じゃない限りいつも出てきてくれるとはかぎらないから。同じ猫がいた、と思って真剣に見比べたら微妙に模様が違ってたとかそんなんばっかである。
その中でこの猫は同じかも、と思ったのは階段上にある寺院で出会ったキジトラ。こちらは2019年8月。2年半前だ。こちらへ歩いてくる姿を撮ったもの。
続いて、2022年1月。カメラと天候と季節が違うと難しいんだけど、カットされた耳先(去勢したという印)の場所や形が同じで、おでこの模様も同じっぽいのできっと同じ猫だ。
当然向こうはこっちを覚えてないし、こっちはこっちで覚えてなかったのでアレなんだけど、元気で何より。予想外だったのは港で出会った猫。背景の山や漁港らしい建物がよかったのでローアングルで狙ってみた。
でもって、以前撮った写真をパラパラと見ていたら、「もしや、同じ猫じゃね?」って猫がいたのだ。2019年の8月。2年半前、この小さな港に元気な子猫がいたのである。だいたい、顔に比べて耳がデカければ子猫だ。痩せてるけど元気に走り回っていたのである。
それがこの写真。早朝の長く伸びる影がよかったのでそれがわかる構図で狙った記憶がある。
2022年に出会った猫は、ふくふくしてて顔も大人の顔になってるのだが(2年半もたてば大人にもなるさ)、鼻の周りやハチワレの形がそっくりなのである。左前足にかけての模様もそっくり。
いやあ、無事に大人になれて、しかも健康そうで何より。小さな漁港だし、鞆の浦といっても観光エリアからかなり離れてた場所なので旅行者もまずこないし、交通量も少ないしで猫的には伸び伸びできるいい環境なんだろう。このプチ漁港、以前訪れたときに比べると、係留されている船もめっきり少なくなってた。近海で魚がめっきり獲れなくなり、漁師の高齢化も進んで、漁をする人がいなくなりつつあるんだそうな。
猫が元気なのはうれしいけど、歴史ある街だけに悩ましい問題である。
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筆者紹介─荻窪 圭
老舗のデジタル系ライターだが、最近はMacとデジカメがメイン。ウェブ媒体やカメラ雑誌などに連載を持ちつつ、毎月何かしらの新型デジカメをレビューをしている。趣味はネコと自転車と古道散歩。単行本は『ともかくもっとカッコイイ写真が撮りたい!』(MdN。共著)、『デジカメ撮影の知恵 (宝島社新書) (宝島社新書)』(宝島社新書)、『デジタル一眼レフカメラが上手くなる本』(翔泳社。共著)、『東京古道散歩』(中経文庫)、『古地図とめぐる東京歴史探訪』(ソフトバンク新書)、『古地図でめぐる今昔 東京さんぽガイド 』(玄光社MOOK)。Twitterアカウント @ogikubokei。ブログは http://ogikubokei.blogspot.com/
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