今週は連載638回の更新、というか答え合わせの回である。CES 2022におけるインテルの発表内容はこちらにまとまっており、エントリーモデルに関してはKTU氏の検証レポートもすでに掲載されているが、あらためて説明しておきたい。
Core-Xブランドはどうなるのか?
というわけでさっそくロードマップの更新であるが、上から順に説明していきたい。まずXeon-Wに関して。連載638回で、Core-Xが事実上消滅したっぽいと説明したが、このCore-Xの扱いに関して、CESの基調講演の翌日にオンラインでインテルのAaron McGavock氏(Principal Engineer, Desktop, Workstation & Channel Group)とColin Helms氏(Enthusiast Laptop Marketing Strategist)のお2人に「結局Core-Xのブランドはどうするつもりなの?」と直球の質問をぶつける機会に恵まれた。
お2方の返事は以下のとおりだ。
【McGavock氏】「まだハイエンドのデスクトップ製品は未発表であり、未発表の製品に関しての言及はできないが、いずれ詳細が公開されることになると思う。ただ、それは今ではない。そして、私が知らないところでブランドの変更があるかもしれないが、それに関するコメントは出来ない。個人的には、Extreme EditionがDesktopとMobileの両方で復活するのを見てみたいとは思うが」。
【Helms氏】「モバイルでも復活したら素晴らしいだろうねぇ。ただどうなることやら。とりあえず、ようやく素晴らしい製品(Alder Lake Mobile)を世の中に出せた」。
という、公式には肯定も否定はしない態度ではあった。ただハイエンド製品を用意しているのは間違いないところで、問題はそれのブランドということになる。
弾の方はすでにあって、それはSapphire Rapidsベースとなる。Sapphire Rapidsは以下の4つのSKUがあるとされる。
Sapphire RapidsのSKU | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
SPR-SP XCC | 最大56コア。8ソケットまで対応 | |||||
SPR-SP 112L | 最大56コアだが1ソケットのみ。その代わりPCIeが112レーン出るもので、HPC向けのCPU+GPU構成におけるノードコントローラー向け | |||||
SPR-SP MCC | 最大36コア構成で8ソケットまで対応 | |||||
SPR-MSWS MCC | 最大36コア構成ながらワークステション向け |
この世代ではSapphire RapidsもMCM構成に切り替わる関係で、ダイそのものは同一でも複数のSKUを作りやすい。ハイエンドデスクトップ向けはこのSPR-MSWS(Sapphire Rapids-Main Stream WorkStation)向けをそのまま流用する形になる、と見られている。
現状聞いてる限りでは、やはりこれをCore-Xとして投入する可能性はほぼないようで、Xeon-Wブランドということになる。競合製品であるAMDのThreadripperもすでにデスクトップ向けではなくワークステーション向けになってしまっているから、ブランドという意味でもXeon-Wの方がリーズナブルなのであろう。
ところでそのSapphire Rapidsの構成は連載631回で説明し際にで触れたが、「ダイは1種類だが、HBM2Eのコントローラーを2ヵ所に用意する」案と「ダイが2種類」の案が考えられるとした。連載631回の時点では正解が不明だったのだが、昨年10月にLinley Fall Processor Conference 2021が開催され、直接インテルの担当者に質問を出す機会があった。結果は「2種類のダイが存在する」方式であることが確認できた。
以上のことから、Core-Xに関しては引き続きロードマップからは落としている。一方のXeon-Wの方であるが、こちらはまずサーバー向けのSapphire Rapidsがリリースされてからになりそうだ。おそらくはそれに先立ち、現在のXeon-W 1300シリーズの後継として、Alder LakeベースのXeon-W 1400シリーズが投入されるものと思われる。

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