実用的なEV実現目指す。日本発の防災強化・脱炭素も兼ねた地域バスを開発
バッテリーコア技術から電気自動車を変えるEVモーターズ・ジャパン
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独自の商用EV開発におけるコンセプト
EVモーターズ・ジャパンは商用EVを開発するにあたり、以下のコンセプトを設定した。
1)航続距離:200km以上
2)販売価格:エンジン車両の1.5倍以内
3)バッテリーは5年もしくは50万キロ保証(実質8年~10年持つという検証結果あり)
これはイニシャルコストとランニングコストの合算で5年以内にエンジン車のそれを逆転することを目標に設定したものだ。実現に向けた基盤が、佐藤氏が30年以上にもわたって研究・開発を行ってきたリチウムイオンバッテリーおよびその充放電システム技術だ。同社はその技術を活かした独自のアクティブ・インバータとBMS(バッテリーマネジメントシステム)技術を持っている。
従来のEVでモーター制御に用いられていたインバータは反応速度が遅く加減速時の出力コントロールにおいて多くの無駄を生じていた。この無駄は不要な熱を発生させることとなり、その結果バッテリーの劣化と電力消費の増大を招くこととなっていた。
EVモーターズ・ジャパンが開発したアクティブ・インバータはマイクロ秒単位でのリアルタイムトルク制御が可能で、加減速時にも無駄なピークを生じないスムーズなモーター制御を実現している。これはバッテリーの長寿命化や省電力化に貢献できるという。
すでに10年前からこれらの技術を用いたEVバスの共同開発を中国メーカーと行っている。さらに急速充電のCHAdeMO規格に準拠した充電インフラや蓄電システム、リユースバッテリー、ならびに商用EVの屋根や建築物の壁面に設置可能な軽量フレキシブルなソーラー発電パネルの開発も行っている。
EVインフラは人々の暮らしを災害から守る
国際的な環境保全のために求められているEV化ではあるが、一方で全面的なEV化は電力系統に非常に大きな負担をかけることになる。特に夜間、自家用車や商用車が家庭や事業所で一斉に(急速)充電を行ったらどうなるか。また、極端な電力ピークによって電力系統が破綻してしまう恐れもある。
スマホの例を待つまでもなく、電気は現代人にとって欠くべからざる生活インフラとなっている。東日本大震災の際、長期にわたって停電に悩まされた経験を持つ人も少なくない。安心・安全、そして健康で持続可能な社会を構築するためには、どのような災害が来た場合でも利用可能な電力インフラが必要であり、EVのために電力インフラの更新が求められるなら、災害対策という側面も含めた形に仕上げなければ道理に合わない。
EVモーターズ・ジャパンでは商用EV向けの電源インフラとして、充電システムに蓄電バッファとなるバッテリーを組み合わせたエネルギーマネージメントシステムを開発している。「10フィートのコンテナにリユースバッテリーを最大500kWh搭載し、50KWのPCSや消火器、エアコンなどを入れたオールインワンパッケージをキロワット単価4万円台から5万円台くらいでリリースしようと計画している。本来ならソーラー発電所にも電力安定化用にバッテリーを置かないといけないが、日本ではまだ設置できていない。電力安定化用途、蓄電システム、ゼロエネルギー化に向けて我々のリユースバッテリーを使ってもらえるようにしたい」(佐藤氏)
加えて、大きなバッテリーを持ち、広い客室には椅子もあって風雨も防げるEVバスは被災地での防災システムの核として活用できる。想定しているのは、軽量ソーラーシステムを搭載したEVバスとリユースバッテリーを組み込んだ地域電源インフラの組み合わせだ。
またEVモーターズ・ジャパンは、CHAdeMOの新規格であるCHAdeMO2.0に準拠したEV向け充電器の開発を進めている。これは商用EVの世界標準であるDC750Vをサポートしており、海外の規格に対しても十分な競争力を持つという。
日本が生み出したEV規格であるCHAdeMOは、欧州・米国・中国などが開発した規格に対して後れを取っている。EVや電源インフラを海外に売り込む際の大きなハンデとなっている現状の巻き返しを狙ったものだ。海外に後れを取った原因の1つは日本の電源電圧の低さにあり、より高い電圧で充電を行う欧州や中国のシステムと比べると約2倍の充電時間が必要となる。また、一般乗用車を中心に開発されてきた日本のEVは大規模なバッテリーを搭載した商用EVに比べて急速充電に対するニーズが低かったこともその要因となっている。
EVモーターズ・ジャパンはこの10月、体感型EV複合施設「ゼロエミッション e-PARK」の建設を発表した。当施設には商用EV組み立て工場の他、EV体験(試乗/試運転)、工場見学、EV資料館等の施設も含んでおり、まずは組み立て工場の2023年秋に稼働を目指し、順次施設は拡充させていく予定となっている。そして2025年開催予定の大阪万博でEVバスの実際の運行を目指している。北九州に基盤を置く日本のスタートアップが生み出すEVおよび電源インフラ基盤の将来に期待したい。
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