部品供給不足を背景に、前年度モデルを継続
エプソンは、2021年の年末商戦に向けて、主力となるインクカートリッジプリンタの新製品投入を見送った。
年賀状需要が見込まれ、プリンタにとって最大の商戦期に、主力となるインクカートリッジプリンタの投入を見送ったのだ。
同社では、「部品調達の遅れに伴う商品の供給不足が発生している。そのため、製造現場での新商品切り替えに伴う高負荷を避け、商品供給を最優先した」と、その理由を説明している。
実際、エプソンは、競合他社が新製品を投入をするなか、今年の年末商戦は、2020年10月に発売した製品で戦ってきた。
だが、年末商戦では、エプソンは苦戦をしていない。
セイコーエプソンの小川恭範社長は、「むしろ善戦している」と自己評価する。
エプソンによると、国内プリンタ市場では47%とトップシェアを維持。しかも、平均単価も、前年同期とほぼ変わらない水準で推移している。量販店などのPOSデータを集計しているBCNの調べによると、売れ筋となる「EP-883A」の平均単価は、2020年12月の2万9700円に対して、1年を経過した2021年11月でも平均単価は2万8200円と、わずか1500円しか下落していない。通常ならば、発売直後の新製品でさえも、売れ筋モデルは年末商戦期には2万円近くまで実売価格が下がることがある。
2019年10月に発売された「EP-882A」では、発売時点での平均価格は2万7900円であったが、わずか2カ月後の2019年12月には2万3100円にまで下がっている。
小川社長は、「供給制約が継続しており、それに伴う、部材費の高騰や輸送コストの高止まりが影響している。エプソンでは、価格対応や費用抑制を継続しており、市場価格が下がりにくい状況になっている」とする。
実際、プリンタ売り場では、供給制約を背景に、新製品が入らない状況が続いている。そのため、どうしてもプリンタが必要な場合には、すぐに持ち帰ることができる商品が売れる状況が生まれている。
エプソンが、新製品投入よりも、供給量を優先するという施策を取ったわけだが、それが成功しているといっていい。
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