海外で主力の大容量インクタンクモデルに注力
もうひとつ、エプソンが手を打った施策がある。
それは、大容量インタタンクモデルへの注力だ。
エプソンは、インクカートリッジモデルの新製品は発売しなかったものの、大容量インクタンクモデルの新製品は発表してみせた。
大容量インクタンクモデルは、エプソンがいち早く商品化。新興国市場を中心に販売してきた経緯があり、2021年度は、グローバル全体で、前期比19%増となる約1240万台の出荷を見込んでいる。これは、同社のインクジェットプリンタ全体の約7割を占めることになる。
グローバルでは、すでに大容量インクタンクモデルが、同社のプリンタ事業の主力となっているのだ。
日本では、2020年10~11月の構成比は約8%であり、それに対して、92%を占めるインクカートリッジモデルの新製品投入を見送ったことは衝撃的だが、グローバル戦略から見れば、7割を占める大容量インクタンクモデルの新製品だけを投入するというのは、当然の施策だと受け取ることができる。
小川社長は、「部材不足によって、作れるものに限界があるのならば、大容量インクタンクモデルを重視していくことになる。今後のインクジェットプリンタ事業においても、大容量インクタンクモデルを中核に据えるという方向性にぶれはない。力を入れているところに力を入れている」とする。
その効果は、国内プリンタ市場でも生まれている。
2021年10~11月は、エプソンが出荷したインクジェットプリンタのうち、大容量インクタンクモデルが約13%にまで拡大。前年同期に比べて5ポイント上昇しているのだ。
「国内においても、大容量インクタンクモデルが、お客様の選択肢として、だいぶ定着してきた。先進国では、なかなか需要が大きくならなかったが、コロナ禍での在宅印刷需要の増加により、低印刷コスト化でメリットがあること、オフィスにおけるプリンタの分散設置に最適であることからレーザープリンタの置き換えが進んでいること、さらには、インクカートリッジをこまめに交換しなくてもいいという使い勝手の良さも受け入れられている」と語る。
また、環境性能の高さや、サブスクリプション形態による印刷サービスの提供といった新たなニーズへの対応も大容量インクタンクモデルの需要拡大に追い風になっているという。
今年の年末商戦では、大容量インクタンクモデルの構成比が2割を突破する可能性もありそうだ。
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