家電メーカーのフィリップスと言えば老舗企業で、日本では電気カミソリや電動歯ブラシなどがメジャーでしょうか。そのフィリップスが中国でスマートフォンや携帯電話を販売しています。といっても、フィリップスが開発や製造をしているのではなく、ブランドだけを貸して中国のとある企業が製品を展開しているのです。
そのフィリップスの主力モデルはフィーチャーフォンで、4G対応の格安端末を多数出しています。中国では通称「老人機」と呼ばれるシニア向けのらくらく系の携帯電話が今でも一定の需要があります。ちなみに、フィーチャーフォンのブランド名は「Xenium」。このXeniumはフィリップスが自ら携帯電話を作っていた2000年ころにも使われていた製品名で、由緒ある名前でもあります。
そんなフィリップスも古くはWindows Mobile(Windows Phoneではありません)のスマートフォンを中国展開していたことがあるなど、地道に低価格なスマートフォンを作り続けていました。しかし、いくら家電で有名なフィリップスの名のついた製品であっても、スマートフォン市場はライバルが多く、ここ数年はほとんど製品展開をしていなかったのです。
ところが2021年12月に久々となるスマートフォン2機種が登場しました。製品名は「PH1」と「PH2」。PHはPhilipsの名前から取ったと思われます。過去のスマートフォンはまったく別のモデル名であり、この2機種から改めてスマートフォンの展開を本格化しようとしているのかもしれません。
とはいえ、日本人的に注目するような製品ではありません。PH1、PH2どちらもチップセットはUNISOCのT310を採用、これは格安中華タブレットによく使われているもので、性能はエントリーレベル。PH1は6.51型(1440x720ドット)ディスプレーに1300万画素+200万画素カメラ、PH2は6.21型(1520x720ドット)ディスプレーに1200万画素+200万画素カメラ。価格はそれぞれ549元(約9900円)、779元(1万4000円)でエントリークラスのスマートフォンであることがわかります。
性能にこだわる日本人には興味を引かれる部分がとくになさそうなフィリップスのスマートフォンですが、ちょっと面白い機能を搭載しています。中国販売のスマートフォンはグーグルサービスを搭載せず各社独自のOS(UI)と独自のアプリストアを搭載していますが、PH2はファーウェイのモバイルサービス、HMSを採用しているというのです。数年ぶりに本格的なスマートフォンを発売するにあたり、ファーウェイの実績あるエコシステムを採用するのは悪くない考えです。
実際にアプリストアの様子などを見てみたいのですが、マイナーな製品であることからか詳細な情報は不明。中国大手ECサイトの情報やユーザーレビューを見る限り、確かにHMSを採用しているようです。PH1のほうはロック画面にグーグルロゴのアイコンが見えるなど、この2機種で異なるOS・サービスを搭載しているようですが、その実態は実機を入手しなくてはわからさそうです。
ファーウェイと他メーカーの提携の動きでは、ノキアブランドのスマートフォンを展開するHMD Globalが中国向けスマートフォンにファーウェイ開発のHarmonyOSを搭載するとの噂が流れたこともあます。中国の消費者にアプリやサービスをしっかり提供するなら、すでに多くのユーザーを擁するHMSに頼るというのは手っ取り早い方法でもあるのでしょう。
ファーウェイはHarmonyOS/HMSをグローバル展開することでAndroid、iOSに対抗する第三のモバイルOSの座を狙おうとしています。国によっては他メーカーへのOSライセンス提供でエコシステムを拡大する動きも出てくるかもしれません。フィリップスが今後のスマートフォンにHMSやHarmonyOSを搭載すれば、ファーウェイ陣営として面白い存在になりそうです。
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