シャオミやOPPOは、最近日本でも知名度が上がっており、スマートフォンの新製品も定期的に投入されています。グローバル市場ではサムスン電子とアップルを除くと中国メーカーがシェア上位にランクイン。vivo、realme、OnePlusそして忘れてはいけないファーウェイやZTEなど、世界のスマートフォンはほぼ中国メーカーの製品で占められています。
その中国ではMeizuのように中堅ながらもがんばっているメーカーがある一方、Smartisanなど撤退するメーカーも増えています。製品種類と生産台数で大手メーカーと互角に戦くのは至難の業なのです。ところがそれらメーカーとの動きとはまったく無縁かのように、毎年1機種ずつスマートフォンを出しているメーカーがあります。それがGree(格力、珠海格力電器)です。
Greeはエアコンなどで中国大手の家電メーカーです。エアコンでは国内トップで、中国では知らない人はいないほどです。この家電トップが中国で5Gスマートフォンを出しているのです。
Greeのスマートフォンブランド名は「大松・TOSOT」。このブランドでスマートフォンをこれまでに5機種出しています。最新モデルの「TOSOT G7」はSnapdragon 870を搭載する5Gスマートフォンで、2021年11月に発売になりました。カメラは6400万画素を含む3つ、ディスプレーサイズは6.67型で価格は2599元(約5万4000円)。しかし、Greeがスマートフォンを出していることを知っている中国の消費者はほとんどいないでしょう。
Greeのスマートフォンは中国大手ECの一部と自社ストアのみで販売されています。ところがGreeのスマートフォンのウェブサイトを見ても、G7の製品紹介はありません。現在表示されているのは2020年発売の5Gスマートフォン「TOSOT G5」。最新モデルはECサイトでしか買えないというのは、やる気があるのかないのかわからないところですよね。
このG5はチップセットがSnapdragon 765G、カメラは6400万画素+800万画素(超広角)+200万画素(マクロ)+200万画素(深度測定)という性能で、価格は2999人民元(約5万4000円)です。このミドルレンジならこれくらいかと思える価格かもしれませんが、大手メーカーなら1999元、約3万6000円程度の製品でスペックが高いものが多数存在します。日本で販売中のシャオミ「Xiaomi Mi 11 Lite 5G」がSnapdragon 780Gに6400万画素カメラを搭載して4万円台であることを考えても、G5の割高感がわかるでしょう。実際にG5が発表された時も中国のメディアでは「どうしてこんなに割高なのだろうか?」という論調の記事が出ていたほど。
それ以前のGreeのスマートフォンもコスパが悪く割高感のあるものばかりで、Greeが何を目的にスマートフォンを展開しているのか理解に苦しむ製品ばかりでした。しかも、新製品の投入ペースは約1年ごとです。そういえば中国家電メーカーのスマートフォンというと、ハイセンスが唯一活発に動いているものの主力モデルは電子ペーパーディスプレーモデルというニッチな製品。本来は自社のスマート家電とスマートフォンを連携させようとしているのでしょうが、現実にはそこまでシームレスな接続は実現されていません。
Greeがスマートフォン展開をしているのも、いつの日かスマートホームが広く普及し家電連携が必須のものになると考えているからかもしれません。とはいえ、誰もがスマートホームを使うようになった時にGreeのエアコンユーザーが使っているスマートフォンは今と変わらずシャオミやOPPOであり、わざわざGreeスマートフォンに乗り換える、とはならないでしょう。Greeが今後どんなスマートフォンを出してくるのか、期待よりも「何を考えているのだろう」という疑問ばかりが先行しそうです。
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