ゲーミングとASMRには共通点が多い
興味深いのは、こういった試みがゲーミングイヤホンとして開発した「VR3000 for Gaming」と共通している点だ。ゲーミングでは音の方向感が分かりやすい点だけでなく、集中力を生める没入感が大事であるとfinalでは考えている。つまり、VR3000 for GamingもASMRに向いた機種ということになる。
自分でも通常版のCOTSUBUとCOTSUBU for ASMRを比較してみた。COTSUBUはコンパクトながら、final監修らしいとても良い音質だ。TWS04Kなどに比べるとやや低音が強調され、コンシューマー寄りの音づくりだと感じた。
ASMR音源を通常版のCOTSUBU/COTSUBU for ASMRで聴き比べてみると驚くほどの違いがあるのがすぐにわかった。通常版のCOTSUBUは客観的で少し離れたところに音があると感じるが、COTSUBU for ASMRでは耳元や首筋など至近距離で語り掛けられる感じがする。これが没入感というものかと思った。
面白いのは刺激成分を抑えているとは言うが、COTSUBU for ASMRの方が声が鮮明でよりリアルに聴こえるということだ。音源が耳の左右に回り込む時もCOTSUBU for ASMRの方がより滑らかに動きリアルさがある。音楽でもささやき声のようなボーカルは似たように再現される。ちなみに、COTSUBU for ASMRで普通の音楽を聴くと、COTUBUに比べ、音が少し軽く感じられた。
iPadと有線接続し、E500で同じ音源を聴いてみた。ASMR音源についてはかなり似たようにリアルに聴こえる。COTSUBU for ASMRがE500のワイヤレス版というのは正しいと感じた。E500の方がより密着感があるが、E500とCOTSUBU for ASMRでは似たような感じで、やはり通常版のCOTSUBUの音表現とは大きな差がある。
VR3000 for GamingもE500に近い密着感がある。VR3000 for Gamingを使っている方はゲームだけでなく、ASMR音源も聴いてみると良いと思う。E500、COTSUBU for ASMR、VR3000 for Gamingは、ASMR音源を聴くことにおいてはかなり似たような傾向があり、普通のイヤホンとは密着感、つまり没入感に大きな違いがあると言える。
取材を通じて、「ゲーミング向けイヤホンとASMR向けイヤホンに似たような性質が求められる」と分かったのは興味深いことであった。これは人の感覚を重視するfinalならではの研究成果と言えるのかもしれない。

この連載の記事
- 第124回 Knowlesが提唱する新しいターゲットカーブが登場、イヤホン音質の底上げを進めるか
- 第123回 Pixel Buds Proが登場、Android 13のオーディオ機能はどう変わる?
- 第122回 iPodがついに終焉、ウォークマンとの対比でそのインパクトを思い出す
- 第121回 Sonosが独自のボイスアシスタント機能を開発中? 米国で報道
- 第120回 ヘッドフォン祭 miniで見つけた気になる新製品(佐々木喜洋)
- 第119回 開放型、骨伝導、再認識されつつある外の音が聞けるイヤホン
- 第118回 Apple Musicのクラシック音楽専用の再生アプリが登場⁉
- 第117回 第3世代AirPods、空間オーディオの付加価値はユーザーに刺さっていない?
- 第116回 アップルが高指向性スピーカーの特許を申請、自分だけに音が聞こえ、空間オーディオとも相性がいい?
- 第115回 2021年米国で久しぶりのCD売上増加、物理回帰の流れは進む? RIAA発表
- 第114回 日本限定のハイレゾ再生ソフト「Audirvana 本」、一瞬「?」なネーミング
- この連載の一覧へ