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編集部員の「これ、買いました」 第3回

イギリス製のちょっと地味なやつ、だけど好き:

ジョブズも履いた3万円のニューバランス「991」は愛すべき一足

2021年12月09日 16時00分更新

文● モーダル小嶋 編集●ASCII

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貴重なイギリス製の900番台

 991は、990v2の次世代モデルとして2001年に発売されたものです。2021年は発売から20周年のアニバーサリー・イヤーにあたり、11月にニューバランスを代表するグレーが発売され、あっという間に入手困難に。筆者もすぐに店舗で購入しました。

 価格は3万800円。スニーカーとして考えれば、間違いなく高い部類。まあ、ここ数年のスニーカーブームの勢いはすごく、人気ブランドとのコラボアイテムともなれば即完売、プレミア価格が信じられないほど高騰することも珍しくないので、高すぎるとも言い切れないのですが……。

 ともかく、991の特徴をあれこれ見ていく前に、外箱に注目してみましょう。「made in england since 1982」とほこらしげにありますね。

外箱に「made in england」

 991は発売当初こそアメリカ製でしたが、現行モデルのほとんどはイギリスのフリンビー工場で作られています。ニューバランスはアメリカの会社でありながら、継続的にイギリスでの製造を続けており、991のほかにも「770」「1500」などがイギリス製の象徴的なモデルです。

スエード部分はすこしベージュがかったグレーで、この色味はイギリス製の991に特有のもの。有名な「N」ロゴは小さめでつつましい

 900番台として初めて、前足部と、かかと部分に、衝撃吸収と反発弾性をそなえたクッショニング素材「ABZORB」を搭載。前モデルの990v2からハイテク化をさらに推し進め、ソールのデザインを一新したモデルです。ピッグスキンスエードとメッシュ素材による重厚なアッパーのデザインも特筆すべきでしょう。

かかと部分は「ABZORB」のロゴも大きくわかりやすい。「991」という数字をここまで入れなくても……と思う人もいるかもしれない

 991はABZORBを搭載したソールユニットがウリだったようで、側面から見ると、ご丁寧に、ミッドソールの前足部分(ソールの白くなっている部分の真ん中あたり)がビジブル仕様となっています。外側から見ても「かかとだけじゃなくて、前足部にもABZORBを使っています」と示しているわけです。

ソールユニット前側の白い部分の中央に、触るとやわらかいクッション素材が。ABZORB搭載をアピールしています

インソールにまでも、これでもかと「ABZORB INSERT」とあります

 ニューバランスならではの高機能なソールユニットによる、安定感のある履き心地は最高です。それほど重量は軽くないのですが、しっかりフィットして、一日中歩き回って疲れを感じさせません。地面を蹴り上げるときの感触も、やわらかいのに、ふわふわしすぎていない。

アウトソールのかかと部分には耐摩耗性にすぐれるラバーコンパウンド製の「N durance」を採用

 さすがはランニング用に開発されただけあり、快適さについては何の文句もありません。すばらしい。このテクノロジーの粋を極めた履き心地に、ジョブズも惚れたのではないでしょうか。

履きこなすのは難しいかもしれないけれど
なんとなく似合ってしまう魅力

 さて、スニーカーとしては高額なニューバランスの900番台。同社のランニングシューズのフラッグシップモデルとして、機能性には目を見張るものがある……ということは先述した通り。ニューバランスの愛好家たちは、その包み込むような履き心地をこぞって絶賛します。

 しかし、デザインとなるとどうでしょうか。そのボリューミーな外見、地味なカラーリング(派手なものもありますが、それはそれで重たく見えることも)などは、「ダサいのでは?」と思われる要素かもしれません。

後ろから見ると、いわゆるダッドスニーカー的な野暮ったさを強く感じるかも

 この991もその例に漏れません。野暮ったいというか、いなたいというか。軽さと通気性を考えたアッパーのメッシュの割合や、ソールユニットのしっかりした厚みなども、その印象を強くさせます。

 ポッテリとした見た目、このモデル特有のベージュがかったグレーの色味など、地味な雰囲気を持っていることも否めない。実は、筆者も「そんなにかっこよくはないんじゃないかな……」と思います。

 まあ、そもそもランニング用に開発されたものなので、シュッとしたファッションアイテムではないわけです。ランニングシューズとして生まれたがゆえに、ランニングのための服装以外に対しては、微妙にハマらない。どんな格好に合わせても、ちょっと“浮く”というか、すこし違和感があるのですね。

 ところが不思議なもので、逆説的ですが、それがゆえに、何にでも合わせられるといえば合わせられる。きれいめな格好にごついスニーカーを履くと似合わなかったりしますが、991だとアクセントの範囲に収まる。逆に、ラフな格好で991を履くと、ほどよく落ち着かせるまとめ役になると。

上から見たときの表情が個人的に好きです。すこしポッテリしていますが、足を入れると中は意外と細く感じます

 そのような意味で、ばっちり履きこなすのは難しいかもしれませんが、どういうスタイルの人でも、なんとなく似合ってしまうという、妙なオールマイティー感がニューバランスの900番台にはあります。

 ファッションにこだわりがある人が履けば「あえてニューバランスなんだろうな」と、ファッションに興味がない人が履けば「だからニューバランスなんだろうな」と思わせる、というか……。

ほこらしげなユニオンジャック。この「イギリス製でーす!」という主張も愛らしい

 この991は、日本でも人気の高い992や993、廉価版があるために日本でも有名な「996」、最新のクリーンな「990v5」あたりと比較すると、ちょっと地味かもしれません。ただ、個人的には、ハイテク志向になった990v2から、現行のスポーティーな990v5などへの進化の過程で生まれた、なかなか愛らしいモデルではないかと思うわけで。

 ジョブズが履いたニューバランスというと、とかく992が有名なのですが、この991だってけっこう長い間履いていたようですし、人気シリーズの900番台の中でも数少ないイギリス製として、ディテールや表情などには他では得がたい個性もある、愛すべき一足です。

 余談ですが、ニューバランスの900番台、どのモデルもおよそ3万円と、スニーカーとしては高額なモデル。しかし外出などを控えたストレスからか、なぜか今年の筆者は、復刻された990v2も新品で購入したほか、日本展開がなかった993のマイサイズを古着店で偶然にも発見し、思わず手に取ってそのままレジに直行と(新品同様のコンディションで、価格は他の900番台の新品と同じくらい)、900番台を3つも購入していました。貯金ができないわけですね……。


モーダル小嶋

1986年生まれ。担当分野は「なるべく広く」のオールドルーキー。編集部では若手ともベテランともいえない微妙な位置。一人めし連載「モーダル小嶋のTOKYO男子めし」もよろしくお願い申し上げます。

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