連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第6回
IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 10月30日~11月5日分
ランサム対策ができている業界は?、日本のDX課題、コロナ緩和後も生活スタイル維持、ほか
2021年11月08日 08時00分更新
本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。今回(10月30日~11月5日分)は、日本のDX課題、ウィズコロナの生活スタイル、取締役のリスクへの意識、製造業とランサムウェア対策、バーチャルオフィスについてのデータを紹介します。
■[DX]日本のDX課題のトップは「DX人材不足」で42%、世界は23%(IDC Japan、11月2日)
・世界の企業は日本企業と比較して、DX実装後のビジネス面の測定を始めている
・売上、利益、効率性など「標準的指標」「カスタマーアドボカシー」などで大きなひらき
・DX推進上の課題として、日本企業は「人材」が42%で最多、世界は22.7%
企業の管理者や経営者を対象としてDX戦略、予算、課題、IT基盤などを調べた「IDC DX Sentiment Survey」の結果を、国内と世界で比較しDX動向の違いを検証したもの。DXの進捗を測定するKPIの比較で大きな差が出たのは「標準的な指標(売上、利益、効率性、投資対効果など)」で17ポイントの開き。ポイントが高いほどDX実装が進んでおり、ビジネス面の効果測定が図られているという。DX推進上の課題については、国内は「必要なテクノロジーを持った人材の不足」(42%)がトップ、世界では22.7%。「推進するリーダーシップの不足」も国内は26%、世界は8.8%と大きく差が出た。
■[生活]リアルに戻したいのは「観光」「飲み会」、オンラインで行いたいのは「役所の手続き」(ビデオリサーチ、11月2日)
・7割が「今の生活スタイルを維持したい」
・リアルでやりたいことは「観光」など娯楽・レジャーに多い
・オンラインでやりたいことは「役所での申請・手続き」「講習会・セミナー」「会議」
ビデオリサーチが東京の12~69歳を対象に、新型コロナ感染リスクが緩和した後の生活について聞いた。69%が「今の生活スタイルを維持したい」と回答するなど、コロナ禍で始まった新しい生活スタイルが定着し始めていることがうかがえた。年齢が高くなるほど、今の生活スタイルを維持したいと思っていることもわかった。リアルでやりたい活動では「観光サービス」が最多(86%)、最も少ないのは「役所での申請・手続き」で10%。「会議・打ち合わせ」も12%しかリアルを希望していない。皆が望んでいる行政のDXが進むことに期待したい。
■[セキュリティ]ランサムウェアで身代金を支払う可能性が低いのは製造/生産業(ソフォス、11月2日)
・2020年、ランサムウェア攻撃に遭った製造/生産業の企業は36%
・製造/生産業界は、身代金の要求に応じて暗号化ファイルを復元する可能性が19%と最低レベル
・バックアップからデータを復元できる可能性は68%で最高
ランサムウェア攻撃の状況を業界別に調査したグローバルレポート「製造/生産企業のランサムウェアの現状2021年版」より。ファイルに暗号をかけて身代金を要求するランサムウェア攻撃は増えているが、製造業がランサムウェア攻撃に遭う比率は36%で全業界の平均とほぼ同じ。身代金を支払った企業の比率は19%と全業種中最低値(全体の平均は32%)、加えてバックアップからデータ復元した比率は68%と最高(平均は57%)。バックアップ対策が万全であれば、身代金の支払いも少ないといえる。
■[経営]取締役会の57%が「リスク選好を高める」、持続可能性が上位の優先課題に(Gartner、11月4日)
・取締役会の57%が「リスク選好を高めた」「2022年にかけて高めるつもり」と回答
・業績へのリスク要因上位は「経済の不確実性」「競合他社からの破壊的なビジネスモデルの出現」「供給不足によるコスト上昇」
・優先課題のトップは「デジタル」だが、「人材」「持続可能性」などで高い増加率
Gartnerが世界の取締役会メンバーを対象に、5~6月にオンラインで調べた。取締役会の57%がリスク選好を高めると回答。業績に対するリスク要因としては、「経済の不確実性」「競合他社からの破壊的なビジネスモデルの出現」「供給不足によるコスト上昇」が上位に挙がった。最優先課題は「デジタル・テクノロジー・イニシアティブ」が最多だが、前回の調査からは減少した。「人材」「EDG、健康、持続可能性」が大きく増加。Gartnerは、この1年半の間にデジタル投資を行い、現在は戦略検証と投資収益率の確認を行う段階に入ったとみている。
■[オフィス]バーチャルオフィス市場は今後5年間、倍増で成長を予測(アイ・ティ・アール、11月4日)
・2020年度のバーチャルオフィス市場は3億2000万円、6.4倍で成長
・コロナの影響は大きく、新規参入も増加
・2020年~2025年の年間成長率(CAGR)は96.8%を予想
アイ・ティ・アール(ITR)による国内のバーチャルオフィス市場についての調査「ITR Market View:ビジネスチャット市場2021」より。バーチャルオフィス市場はまだ黎明期だが、ITRでは「社内コミュニケーションの円滑化や効率化をはかる2D/3Dの仮想オフィス空間」としている。コロナ禍でリモートワークが増えたことで急速に市場が立ち上がっており、2020年度は6.4倍成長して3億2000万円規模に。今後5年間96.8%増で成長し、2025年には95億円市場を見込む。物理オフィスを代替するものではないが、関係者が一堂に会する場を提供する手段として期待されているという。消費者側で進む「メタバース」は働き方にも影響を与えそうだ。
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