カーボン風VRMヒートシンク、ドットパターン、LED発光など、トレンドを取り入れた見た目もバッチリ
第12世代Coreに合わせるべきZ690搭載マザーボード、MSIのアッパーミドルモデル「MPG Z690 CARBON WIFI」
せっかくなので第12世代Core i9-12900Kと組み合わせた際のVRMヒートシンクの効果を見ておこう。CINEBENCH R23のMulti Coreテストを用い、10分間実行した際の温度を計測した(室温24℃の環境で計測)。モニタリングツールから見ると、CPUパッケージパワーは最大270WでCPUパッケージ温度は36cmクラスの同社簡易水冷「MPG CORELIQUID K360」を用いて最大95℃だった。肝心のMOSFET温度は最大65℃。今回は比較対象がないので参考値としていただきたい。過去に検証してきた温度よりも高めだが、第12世代Coreだからなのだろうか。少なくとも製品化前の評価用ボードでありながらセットアップからWindowsの動作までなんら問題なくスムーズで、10分間の負荷を繰り返し行なっても不安定な素振りはなかった。
DDR5メモリ&PCI Express Gen5の安定動作を実現するSMT
第12世代CoreおよびIntel Z690チップセットではDDR5およびDDR4メモリがサポートされている。MPG Z690 CARBON WIFIはアッパーミドルでありハイエンド志向のユーザーをターゲットとし、DDR5メモリスロットを4本搭載する。
DDR5メモリはDDR4メモリよりもさらに高クロックで動作する。マザーボードではこのメモリの高クロック化に対応する回路設計が求められる。MSIでは、DDR5メモリの信号の安定を高めるため、スロットの実装方法を従来のIMT(挿入実装)からSMT(表面実装)に変更している。マザーボード裏面を見れば分かりやすい。IMTは挿入実装、つまりピンがボードのスルーホールを貫通し、そこを半田付けしていた。一方、SMTは表面実装なので裏面はフラットだ。一般的なチップの実装を例にSMTのプロセスを説明すると、まず表面にクリーム半田をプリントし、そこにチップを置きリフロー炉で加熱して半田付けを行なう。スロットはプラスチックなので熱の加え方に違いがあるかもしれないが、このような流れだ。
拡張スロットも、1番目および2番目スロットでSMTが採用されている。第12世代CoreおよびIntel Z690チップセットではPCI Express 5.0をサポートした。こちらもPCI Express 4.0 x16世代の64GB/s(双方向)からその倍の128GB/s(同)へと高速化され、やはり信号の安定性を高める必要がある。面白いのは3番目のスロットだ。チップセット側に接続される3番目のx6スロットはPCI Express 3.0 x4動作なので従来どおりIMTが採用されていて裏面にはピンが貫通している。MPG Z690 CARBON WIFIのマザーボード裏面はIMTとSMTという実装の違いを見比べられるので、入手された方は組み込み前にまずは一度裏面をじっくり見てみよう。
その他の新世代マザーボードを感じさせる箇所を紹介しておこう。まずPCBもIT-170というサーバグレードのものを採用している。2オンス銅箔層を用いた8層基板とされている(同社上位モデルではIT-170の12層基板を採用するものもある)。そしてPCI Express x16スロットの1番目と2番目はレーン分割によるマルチGPUもサポートしているが、そのためのPCI Express 5.0対応スイッチングチップと見られるものがPCI Expressスロットの間の基板裏にある4つの「JYS13008」だ。DDR5やPCI Express 5.0といった次世代高速インターフェースを安定して利用できるのは、こうした実装技術やチップのおかげである。
ストレージはM.2スロットが5基、Serial ATA 3.0が6ポートだ。M.2スロットが5基もあればもうM.2不足はほとんど生じないのではないだろうか。動作モードは最大PCI Express 4.0 x4で、1スロットだけPCI Express 3.0 x4が上限のものがある。そしてスロットの排他利用は1つだけ、4番目のM.2スロット(PCI Express 3.0 x4またはSerial ATA 3.0対応)にSerial ATA SSDを搭載した際にSerial ATA 3.ポートの7番が利用不可になると記載があるだけだ。計算上、ストレージは最大10基といったところだろう。
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