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法人事業の幅広い取り組みを紹介、“通信(5G・IoT)+α”で顧客と社会のDX加速を支援

KDDI、法人事業の成長領域「NEXTコア事業」で2ケタ成長目指す

2021年09月30日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 KDDIは2021年9月28日、法人事業に関する記者説明会を開催した。今年度(2021年度)の法人事業売上高は1兆200億円(前年度比2.8%増)、営業利益は1840億円(同 10.4%増)の目標を掲げる。その中で、特に成長領域と位置づける「NEXTコア事業」を2ケタ成長させ、法人売上全体の3割超を占める計画を示した。

 同説明会ではそのほかにも「KDDIマネージドセキュリティサービス」など、複数の発表も行われた。

KDDIの法人事業説明会で新たに発表された内容

KDDI 取締役 執行役員 専務 ソリューション事業本部長の森敬一氏(左)、KDDI 執行役員 ソリューション事業本部サービス企画開発本部長の藤井彰人氏

今年度2ケタ成長を見込む「NEXTコア事業」の強み

 KDDIの法人事業は、通信サービスを展開する「コア事業」と、DX支援など次世代の基幹事業を目指す「NEXTコア事業」により構成される。同社 取締役 執行役員 専務 ソリューション事業本部長の森敬一氏は、コア事業とNEXTコア事業を「事業の両輪」として、持続的成長を目指すと説明する。

 「5GおよびIoTによる通信と、通信以外の+αによってDXを加速し『さまざまな技術とサービスでDXを総合的に支援する』のがKDDIの役割だ」(森氏)

KDDIの法人事業、昨年度(2020年度)と今年度(2021年度)の推移

 NEXTコア事業は、ニューノーマル時代の多様な働き方を支援する「コーポレートDX」、IoTやクラウドの活用によるビジネス変革を支援する「ビジネスDX」、データセンターやコールセンターなどのサービスで顧客の事業基盤を支援する「事業基盤サービス」で構成される。

 前述のとおり、今年度はNEXTコア事業の2ケタ成長を目標に掲げているが、すでに第1四半期の実績は前年同期比18%と順調な滑り出しを見せているという。コーポレートDX、ビジネスDXの2領域では、今年度20%超の成長を計画する。

 「NEXTコア事業におけるKDDIの強みは、DXを実現する多様なケイパビリティを持つこと、IoTのトップランナーであること、顧客とのビジネス共創の実績があること。通信に限らない価値を提供し、IoT領域における約20年の実績と経験も生かして、顧客の課題を最新テクノロジーやDXを通じて解決していく」(森氏)

通信以外の価値提供で新たな基幹ビジネス化を狙うNEXTコア事業

KDDIが考えるNEXTコア事業の強み

 まずはDX支援のケイパビリティからだ。KDDIの法人事業は、国内約100拠点に2万7000人以上の陣容を持ち、さらに海外でも90拠点、2300人を擁する体制となっている。

 グループ会社のiretでは、AWSの認定技術者が1000人以上在籍し、クラウド導入や運用などのフルマネージドサービスを提供。またScrum Inc. Japanはアジャイル開発の国内普及に貢献しており、すでに2000名以上の顧客にDX支援を行った実績を持つ。データセンターを展開するTELEHOUSEは、国内外の主要都市に40拠点以上を展開。国内外企業約3000社のインターネットハブとして、主要クラウドとの低遅延でセキュアな接続を可能にしている。

強固な基盤と幅広いケイパビリティで顧客のDX実現を支援

 IoT領域における実績と新たな取り組みも紹介した。IoTの累積回線数はこの3年間、年平均成長率40%以上というスピードで増えており、2022年3月には2400万回線に達する見込みだという。コネクテッドカー、電力/ガス向けスマートメーター、ホームセキュリティなどでのニーズが高く、2022年度中には3000万回線を目指す考えだ。

 グローバル展開も強化している。KDDIでは「IoT世界基盤」として、世界最大級となる約230カ国/地域をカバーする体制を確立。グループ会社のソラコムとの連携により、グローバルなIoTプラットフォームサービスを提供するなど、遠隔監視や在庫管理、モビリティといった幅広い産業/用途でのIoT環境を実現している。

グローバルに展開する「IoT世界基盤」を掲げる

 このほか、スペースXのStarlinkとの業務提携を通じた国内全域での高速IoT通信提供、stationとの資本業務提携、各種サービスプラットフォームの提供によるIoT向けサービスアプリケーションの強化などにも取り組んでいる。

 最後が顧客との共創である。KDDI内で培ったビジネス開発の知見を提供し、80件以上のDX案件を実行してきたKDDI DIGITAL GATE、データに基づくビジネスデザインを行える“変革リーダー”を育成するDX人財育成プログラム「KDDI DX University」の展開も特徴だ。「DX Universityでは、現在までに250名の変革リーダーを育成してきた。これを継続して、2023年度には500名規模にまで拡大する」(森氏)。

顧客DXの実現支援はコーポレートDX/ビジネスDXの2方向から取り組む

 顧客DXの支援、推進に関する具体的な取り組みも紹介した。

 多様な働き方の実現を支援するコーポレートDX領域では、2020年春にビデオ会議サービスの申込みが8倍に増加したこと(2020年1~2月/3~4月の比較)、クラウド電話の契約数が17倍に増加したことなどを挙げて、次のように説明する。

 「社内の業務がリモートで遂行されるようになり、多様な働き方を、あらゆる側面からサポートすることが、KDDIに求められている。そこで約1年前に『マネージドゼロトラストソリューション』を発表し、デバイスとネットワークをコアに、6つのコンポーネントから、さまざまなサービスをリリースした。社員一人ひとりに最適な組み合わせを、ワンストップで提供することに力を注いでいる」(KDDI 執行役員 ソリューション事業本部サービス企画開発本部長の藤井彰人氏)

 今回は、このマネージドゼロトラストを強化するものとして、複数のセキュリティサービスから収集した膨大なログを自動分析する「KDDIマネージドセキュリティサービス」を新たに発表した。同サービスは、KDDIグループの1社でありセキュリティ対策を行うラックのノウハウを活用してゼロトラストセキュリティ環境を提供する。KDDIが独自に開発したログ基盤に、ラックのノウハウが盛り込まれた自動分析エンジンを組み合わせ、KDDIデジタルセキュリティのアナリストによるログ調査/分析を迅速に実施し、インシデント発生を早期に検知、対応する。

 「KDDIマネージドセキュリティサービスは、社員一人ひとりが安心して利用できる環境を実現するサービス。2021年下期には、海外拠点対応のSD-WANサービスの提供を行うことほか、マネージドセキュリティを強化し、監視対象サービスを追加していくことも計画している」(藤井氏)

新たに発表した「KDDIマネージドセキュリティサービス」の概要

今後も“マネージドゼロトラスト”ソリューションを強化していく

 顧客のビジネス変革を支援するビジネスDX領域では、9月6日から5Gスタンドアロン(SA)構成のフィールドテストを開始したことを発表した。ソニーとの実証実験では、音楽/スポーツイベントの会場から全国にライブ配信するために最適化された5Gネットワークを実現。またフジテレビとは、中継映像の低遅延伝送やクラウドスイッチングにより、報道中継現場の映像をより簡易に放送、配信することを目指した実証実験を行っているという。

「MECによるエッジコンピューティング環境や、ネットワークスライシングを組み合わせることで、新たなネットワークニーズにあわせたサービスを提供していく」(藤井氏)

5Gスタンドアロン(SA)構成のフィールドテストを開始

 さらに、KDDIが通信事業で培ってきたノウハウを活用し、ワンストップでリカーリングビジネスの実現を支援する「KDDIリカーリングビジネスプラットフォーム」も推進する。具体的なサービスとして「KDDI IDマネージャー」を提供することを発表した。これは、企業がBtoCビジネスを展開する際に必要となるIDベースの顧客管理と、保守、運用を支援するサービスだ。3000万件以上のユーザーを持つKDDIのグループID運営で培ったノウハウを活用し、企業が顧客とつながることを支援するという。

「KDDIリカーリングビジネスプラットフォーム」と「KDDI IDネージャー」の概要

「通信(5G・IoT)+α」の共創事例を多数紹介

 2020年に発足した「5G ビジネス共創アライアンス」では、1000社の企業と立場や業界を超えた協力を進めているという。今回は新たに、富士通と5G技術を活用したパートナーシップを締結したことも発表した。富士通のローカル5G技術とKDDIのau 5G技術を組み合わせ、新たな顧客体験価値の創造や社会課題を解決するサービスを創出していくという。

 「ローカル5Gとキャリアが提供する5Gは競合関係にあるとも言われるが、顧客価値向上のために連携していく。顧客企業の業務ノウハウを持つ富士通と、KDDIのリカーリングビジネスを組み合わせることで、リアルとバーチャルを融合したBtoBtoXサービスを共創することができる」(藤井氏)

社会課題解決に向けた富士通とのパートナーシップ締結も発表

 すでに実施している共創事例も紹介した。JR東日本とは、品川まちづくりにおいて「空間自在プロジェクト」を推進。これは海外の都市や日本各地とリアル/バーチャルにつながる“分散型都市”を形成するものだという。三井物産とは「次世代型都市シミュレーター」に取り組み、人と都市のさまざまなデータを分析し、独自のアルゴリズムで都市の未来を予測しているという。渋谷区とはDXによる区民生活の質的向上を目的として、高齢者のデジタルデバイド解消に向けた実証実験、「バーチャルハロウィンフェス」開催などデジタルを活用した地域活性化に取り組んでいる。電源開発とは、スマートドローンを活用した風力発電設備の点検自動化を図り、作業時間を10分の1に短縮。そのほか地方課題の解決に向けて、全国で168プロジェクトを推進していると明らかにした。

 カーボンニュートラルの取り組みについても触れた。KDDIでは2030年度までにCO2の自社排出量を50%削減する「KDDI GREEN PLAN 2030」を推進しており、その一環として、NECネッツエスアイと共同でデータセンターに液浸冷却式サーバーを設置、消費電力の35%削減を目指していると紹介した。

 KDDIでは、次世代社会構想として「KDDI Accelerate 5.0」を掲げている。

 これを推進する技術の研究開発を行っているのが、映像伝送や暗号化技術などに関する世界最先端の拠点である先端技術研究所と、新たなライフスタイルを提案する研究拠点と位置づけられるKDDI research atelierである。

 「先端技術研究所では、世界初となる太平洋横断の衛星テレビの中継や受信、海底光ケーブルなどに取り組んできた。最近では、脳神経科学や水空合体ドローンまで取り組んでいる」(藤井氏)

 H.266|VVCによる映像符号化方式を用いた8Kライブ伝送や、世界最高水準となる50ミリ秒の超低遅延映像伝送に成功した例を挙げ、「これらの技術を活用することで、遠隔での作業支援、行動監視による警備の強化、指導や育成面での活用のほか、複数台の自動運転遠隔操作、ロボットの遠隔操作などにも活用できる。人間の能力を、空間を超えて伝搬させることができる技術であり、リモートオペレーションを拡充することができる」とした。

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