なぜスライムができるのか
PVA(ポリビニルアルコール)は、炭素原子が鎖(くさり)のようにつながり、その周りに酸素原子と水素原子がくっついた構造をした高分子化合物です。PVAにホウ砂の水溶液を混ぜると、2本のPVAのくさりの間にホウ砂が入り込み、2本のくさりをはしご状につないだ分子構造を作ります。
橋がかけられたPVAはもう自由には動けません。小さな部屋が集まった網目のような構造になり、ゆっくり引っ張ると形を変えて伸びますが、急に引っ張ると切れてしまいます[3]。これがスライムの正体です。
ホウ砂なしで作る方法
ワークショップをしていると、ホウ砂がすぐに手に入らなかったり、毒性を心配されたりする方もいらっしゃいます。より身近にあるもので実験する方法として、ホウ砂の代わりに重曹と目薬を使うものもご紹介いたします。
PVA入り洗濯のり50mlに重曹小さじ1を入れてよくかき混ぜた後、目薬を入れます。1滴、2滴というよりはジョボジョボーっと、スライムっぽくかたまってくるまでゆっくりと加えて混ぜていきます。
そして、全体が黒くなるまで砂鉄を加えてかき混ぜたら完成です。目薬に含まれるホウ酸と重曹が混ざることで、先程のホウ砂の役割を果たすとされています。目薬の取り扱いも注意してください。個人的には、こちらのスライムの方が固くなくて、砂鉄スライムの動きが分かりやすくなったような感じがしました。
まとめ
今回は、お家でできる砂鉄スライムの作り方とその原理をご紹介しました。磁石の周りに働く力について考えながら、不思議な動きをするスライムを作ることができるのでとても楽しいコンテンツです。
磁性流体を使ったアート作品なども存在しますが、顔を描いた紙の上に砂鉄スライムを乗せて髪の毛にしたりする子もいて、創作活動としても楽しめるのではないかと思いました。お家で過ごすことが増えた今、ぜひハロウィンなどにチャレンジしてみてください。
■注意事項
・小学生など低年齢の子どもが実験をするときは、必ず保護者の指導のもとで実施してください。
・ネオジム磁石を使用する場合は、とても強い磁石のためくっつける時に指を挟んだりしないように十分注意してください。また保管する時も気をつけてください。
・磁性流体は触らないよう注意してください。(そのため、今回はディスプレー用を使用)
・周りに磁石で壊れてしまうものや、磁気を発するものがないか注意しながら実験してください。磁気を発するものがあると、思わぬ方向にものが飛んでいってくっついたりすることがあり危険です。
・ホウ砂を使用する場合は、毒性があるため目や口の中に入れないように注意してください。また、目薬を使用する際も十分注意して扱ってください。
■参考文献
[1]名古屋市科学館
[2]下飯坂潤三 磁性流体について
[3]山本新一 手づくりスライムの実験(さ・え・ら書房)
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