低音に浸りたい人は注目の完全ワイヤレスイヤホン
ゼンハイザー「CX Plus TrueWireless」を聴く、初のaptX Adaptive対応製品
2021年09月21日 13時00分更新
低域好きが満足できる迫力と聞きやすさを両立したサウンド
音作りについて見ていこう。
傾向については全体に低域に寄った再現。ポップスやロックなどをノリよく楽しめるリスニング寄りのチューニングだと思う。高級イヤホンでは中庸もしくは高域に寄ったブライトな傾向を選択している機種が多い。そういった機種と比較すると、ピアノの重量感やキックの迫力を感じる一方で、弦や子音などの抜けは一歩譲る印象。とはいえ個性を出しつつ、全体のバランスが破綻しない範囲でうまくまとめているように思う。エネルギッシュさやグルーブ感のある音が好きな人、特に低域の量感を重視する人に合ったサウンドだろう。
aptX Adaptive対応のメリットは、CDを上回る情報量を持つ24bit伝送と低遅延だ。伝送品質は aptX HDと同等の最大48kHz/24bit。また、通信状態に合わせてビットレートを落として途切れをなくしたり、aptX LowLatency並みの低遅延の伝送もできる。対応スマホやプレーヤーを用意する必要があり、特にiPhoneで恩恵が得られないのは残念だが、最新に近いAndroidスマホでは対応している機種が増えている。ハイレゾ品質で音源を提供しているAmazon Music HDなどではaptX Adaptiveで接続するメリットを感じた。試聴すると圧縮音源にありがちなやせた感じが軽減され、音のボディー感が増し、空間の表現や音に包まれる感じがよくなる印象を持った。
本体は密閉性が高く、ノイズキャンセルをオフにした状態でも外部の音をよく遮音してくれる。静かな室内で使用する場合はこのままでも十分だ。ノイズキャンセル機能の有用性を感じるのは、定常的なノイズが多くイヤホンを着けていても感じる場面。幹線道路沿いに脚を運んで確かめてみたところ、クルマが通り過ぎる際のゴーっとした騒音がほぼ聞こえなくなるなど高い効果を感じた。タクシーの車内、新幹線や飛行機などでの長時間の移動で、快適に音楽の世界に没頭したい場合に効果を実感できると思う。
外音取り込み時の音質も自然だ。マイクが拾いやすい音と人間が聴きたい音の間には差がある。作り込みが悪い機種では、あまり必要ではない音が目立って違和感が出る場合がある。聞きたい音は人の声や危険にかかわる音だが、外音取り込みすると、普段はそんなに大きく感じない「紙をめくる音」「衣擦れする音」「部屋に置いてある時計の音」といった細かな音、遠くのほうで動いている車の音などが目立ったりする。ここは単に性能が高いマイクを乗せただけではダメでチューニングが必要なところだ。CX Plusはそつなくまとめている方だと思う。
CX Plus TWSは中級クラスの製品だが、機能はその枠を超えた上位機に匹敵するものと言える。合うジャンルとしてはロックやジャズなど。低域の太さや深さがあるメリットを感じる。ボーカルものや空間の広がりや弦の開放感が欲しいクラシックを聴く場合は、少し調整を加えるのがいい。
なお、解像感や抜けといった音の感じ方は、周波数特性の影響が大きく、歌詞などをハッキリ聞きたい場合は子音の聞こえに関係する数千kHzの帯域を持ち上げるといった対策ができる。CX Plus TWSは簡易的だがEQ調節機能を持っている。独特なUIで少々慣れが必要ではあるものの、重低域を絞って高域を若干持ち上げるとフラットな傾向に近づく。EQの適用による音質劣化がほぼない点もよく、積極的に利用したい機能だ。
ストリーミングでもロスレス/ハイレゾ再生ができるようになっている現在、aptX Adaptiveによる24bit対応の恩恵も大きいだろう。ゼンハイザーの高音質をリーズナブルに楽しみたい人にオススメだ。