では、実際のユーザーは外部の決済手段を使うものなのか?
アップルのアプリエコシステムの運営に厳しい目を向けるのは、民間企業や開発者だけではない。米国だけで、消費者はモバイルアプリに年330億ドル近くを費やしている。規制当局も目をつけないわけにはいかない市場なのだ。
米上院は8月、モバイルアプリのエコノミーにおける競争を奨励するとして、「Open App Markets Act」という法案を作成した。成立すれば、アプリ内課金システムをはじめとした課金、そして外部のアプリストアへの門戸を開くものとなる。
もちろんアップルにも言い分はある。ティム・クック氏は6月にフランス・パリで開催された「Viva Technology」にオンライン登場した際に、App Storeを経由しないアプリのサイドローディングは自分たちがこれまで大切にしてきたユーザーのプライバシー保護、そしてセキュリティへの取り組みを台無しにすると主張した。また、Androidに比べてマルウェアが少ない(「AndroidのマルウェアはiOSの47倍」だそうだ)ことも自慢した(「欧州では厳しい目を向けられるアップル ティム・クック氏はApp Storeのメリットを強調」)。
「顧客は我々の取り組みに価値を感じている」とクック氏はアピールしている。実際、Epic Gamesとの訴訟でアップルが提出した書類から、世界中で500人近くの従業員がレビューに従事していることがわかった。ユーザーの安全に投資しているというアップルの主張もわからなくはない。
とは言え、最も重要な点は、App Store外での課金などに対して、消費者がどう反応するのかだろう。
なお、和解案は法廷の承認を得る必要がある。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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