スマートフォンが普及し、モバイルアプリ市場が本格的に立ち上がって、早くも10年以上が経過した。モバイルアプリの現状はどうなっているのか? 世界的なモバイルアプリ調査会社であるApp Annieのデータから考察したい。
モバイルアプリの売り上げの2/3がゲーム
新型コロナ関連も海外では上位も、日本のCOCOAはどこ行った?
実質的にiPhoneとともに生まれたモバイルアプリ市場。スタート期はどんなアプリがダウンロードされているのか、いちいちニュースになったが、今やアプリへの関心が薄れていると言っていい。当時にニュース媒体などでアプリランキングが参照されていたのがApp Annieだ。
そのApp Annieの幹部と話をする機会があったのだが、驚いたのは「モバイルアプリの売り上げの3ドル中2ドルがゲーム」というApp AnnieのCEO、Ted Krantz氏の言葉だ。iPhone登場から14年、モバイルアプリで売り上げを上げているのは結局ゲームなのか。「ゲームしか勝たん」という言葉が浮かぶ。
ここで、同社の最新のランキング(2021年第2四半期)を見てみよう。世界でのダウンロード別では「TikTok」がトップ。そして「Instagram」「Facebook」「WhatsApp Messenger」とFacebook帝国が続いて、5位に「Zoom」が来る。「TikTok」は消費支出でもトップ、そして「YouTube」、出会い系の「Tinder」、エンターテインメント「Disney+」、「Tencent Video」の順となっている。
App Annieでは世界のほか、国別として米国、英国、中国、日本、韓国、フランス、ドイツ、ロシアのランキングを出しているが、こちらはかなり様相が違ってくる。
英国、フランス、ドイツの欧州3カ国はいずれも新型コロナ関連のアプリがダウンロード数ではトップ。政府主導の接触追跡アプリもあれば、フランスの「Vite Ma Dose」はコロナのワクチン接種ができる近くの病院を探すことができるアプリで、25歳の個人開発者が開発したことが話題になった。
ドイツの「CovPass」はワクチンバスポート、ドイツの「Luca」も民間によるもので、レストランや映画館などでQRコードを掲示するタイプの接触追跡アプリだ。「COCOA」の話をすっかり聞かなくなり、そしてワクチン接種も遅れている日本との時差を感じる。
ゲームは今後他のエンタメとの戦いに
ゲームも地域差がある。米国、英国、フランス、ドイツではいずれも「Hair Challenge」(アイテムを拾いつつ、トラップを避けて髪を長くしていくアクションゲーム)がダウンロードで首位。消費支出では「Clash of Clans」「ROBLOX」「Coin Master」などが入っている。日本はダウンロード、消費支出ともに「ウマ娘」がトップ。6月にリリースされた「二ノ国:Cross Worlds」が2位に入っている。
よく考えれば、コロナで需要が高まった仕事関連のアプリ(「Zoom」「Google Meet」など)、フードデリバリー(「Uber Eats」「出前館」など)はアプリは無償で提供される。また、オンラインバンキングや小売、レストランが提供するアプリも無料だろう。そのため、モバイルアプリの売上をゲームがリードしているのは自然ではある。
そのゲームだが、Krantz氏は今後エンターテインメント系メディアとの競争になると予想する。例えば、ゲーム以外のアプリとして消費支出トップ10(世界)には、「TikTok」「YouTube」「Disney+」「HBO Max」「ピッコマ」などとエンターテインメントに分類されるアプリが多数入っている。世界ではトップ10から漏れているが、「Pandora Music」(米国6位)、「Amazon Music」(英国6位)、「LINE MUSIC」(日本4位)、「Deezer」(フランス2位)など、音楽系のアプリも広義ではエンタメに入る。
App AnnieのKrantz氏によると、トレンドはユニバーサルアプリ。PCでもタブレットでもスマホでも使えることが重要だ。エンターテインメントもゲームも、ここを押さえることが重要になるとみる。
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