午後のセッションでは霧が濃くなり……
それでも無事にゴールまでたどり着いた!
午後のセッションまでの間、2人はSNSをしたり、ご飯を食べたり。いっぽうメカさんは車両の清掃にとりかかります。他のチームはサスペンションの調整などをしているのですが、当チームは空気圧のチェックとホイールの増し締めのみ。
そうこうして、午後のセッションが順次スタートしていきます。結局走行順の入れ替えはなく、大会側はSS走行時にaym選手たちがスタート後、通常1分後にスタートするところ、3分差でスタートすることとなりました。
より霧が濃くなり、前がほとんど見えないようなコンディションの中、傷を絶対につけてはいけないGRヤリスRSを運転するaym選手と、その運転をサポートするほっしー先生。さすがに本日3回目となる同じ道。間違えずにSS3にたどり着き、そしてSS4を走行します。その様子をご覧ください。
実況も「aym最後まで走ってくれよ。この直線滑りやすいんだ、無理するな、無理するな。ここは安全でいこうな。よし、よし」と、ほかの選手とは明らかに違うノリの実況。とにかく無事に完走できることが何より大切です。後続とは3分の差があるので、気はラクでした。
こうして無事に戻ってきた両選手。監督は張っていた気がすべて抜けたように、ホッとした表情を浮かべ、そしてドッと疲れが出た様子。なにより、マシンは無事に戻ってきたことが何より。事故がないことは、何より大切なことです。
両選手に初参戦の感想を伺ってみました。aymさんは「ラリーというと、カッコいいクルマでカッコよく走るというイメージがあったんですけれども、それだけじゃなくて準備だったり、コ・ドライバーと作り上げるレッキやノートだったりとか、チーム全体のチームプレーで成り立っているスポーツなんだなと改めて思いました。そして安全性について考えられた緻密なルールがあることを再確認しました」とのこと。
今回、ラリー初参戦となったほっしー先生は「速く走ることも大事なんだけれども、それ以前に時間の管理とかルールを知っていないと、ちょっとしたことでも減点になったりとか。走るだけじゃダメなスポーツなんだなと思いました。今回コ・ドライバーとして参加しましたが、ドライバーもやってみたいですね」とステップアップを目指している様子。一方、両方体験したaymさんは「どっちも違う面白さがありますね。サポートする側と、それを信じて走る側というのがあって、でもできるならドライバーをやってみたいですね」だそうだ。
そして、ほっしー先生は「自分たちも失敗したし、勉強途中だけれども、新しい人がラリーを知ってやりたいと思うには、私たちのような存在も必要かなと。頑張ればできるよ、と伝えていきたいですね」というと、aymさんは「素晴らしいクルマをご用意して頂いて、スーツも用意してもらえて、こんなに貴重な環境で体験できて、本当にありがたいなと思いました。ありがとうございました」とチームに謝辞を述べていました。
そんな2人を支えたチーム監督の松井 悠氏。今回の参戦意図や二日間の総評を頂きました。
「うちはラリーに興味がある女子をラリー界に引き込むみたいなことをやっているんですけれども、チームとして自分が気にしているのは、モータースポーツというのは常にリスクがあるということ。ですから、SOSの出し方や救助など、安全性に関わるルールは重点的に教えるようにしています。ラリーというのはエントラントが競っているけれども、協力しなければならない場面も非常に多いんですね。今回は練習する時間が想像以上になくて、ぶっつけ本番でやっていることは多く、その分不安だったのですが、まずは無事に戻ってこれてよかったです。ただただ安堵感でいっぱいです。今日は色々なことがありましたけれど、全部ありがちな話ですよね。いつもは、ドライバー、コ・ドライバーのいずれかをベテランとする組み合わせにしています。ですが、今回は初心者×初心者だったので、もっとトラブルが起きるかなと思っていました。最初から全部できるとは思っていないですし、クルマを壊さず、途中で失格にならず、完走できたというのはラリーの工程を学ぶ上でよかったなと思います」と、2人の健闘を称えました。
そして、ほっしー先生のドライバー起用に対しては「状況が許せば、星野さんをドライバーに起用しての参戦はやぶさかではないですね。ただ、あのクルマは売却してしまいますし、残るクルマが4駆ターボになるので、それをいきなり初心者が運転するのはリスクがあるのでできないですけれど(笑)。来年以降、たとえばヤリスを入れてマシンを作るなど、色々な条件がかみ合えばいいんじゃないですかね。今後、ラリーのお仕事を手伝ってくれるという話になった時に、やってもらう立場としたら、よりラリーが好きだったらうれしいというか。実際にやってみて自分に合う合わないがあるでしょうし。ドライバーをやってみたいというポジティブな話が出たのは今回やってよかったですね」
松井監督によると、全日本選手権もTGRラリーチャレンジも、日数に違いはあるが、工程としては変わらないとのこと。逆に1日で行なうTGRの方がドタバタになりがちなのだそうだ。「TGRラリーチャレンジは一番ハードルが低いラリーです。もちろんクルマを用意して、安全装備などはキチンとするなどで、初期費用はかかります。今回からヤリスカップカーが参戦していましたね。ただそのままじゃ出られないので、コ・ドライバーのシートやハーネス、消火器などの安全装備を追加で取り付ける必要はありますけれど」。
普段乗っているヤリスで、時にはサーキット走行、時にはラリーを楽しめるって、凄いことではないでしょうか? ちなみにトヨタでは、ロールゲージや専用サスペンションなどが最初から取り付けられているYaris Cup Carも販売しています。気になる値段は217万1100円(6MT)、238万100円(CVT)とのこと。もちろん車検を通すことができて、街乗りできます。高いクルマを買うより、このヤリスを買って年に数回、レースに挑戦してみるというのも楽しいレジャーの一つかも。今回のTGRラリーチャレンジを見て、そんなことを思ってしまいました。なお、このヤリスカップカーですが、エアコンはついているものの、ディスプレーオーディオは省略されています。
こうしてほっしー先生のラリーチャレンジは終了しました。オープンクラスなので、順位はありません。でも楽しそうな笑顔は誰よりも輝いていました。
初心者講習もありますし、何より運営スタッフの誰もが優しい印象を受けたTGRラリーチャレンジ。ラリーは敷居が高いスポーツに思えますが、そんなことは決してないといえるでしょう。86やヤリスに乗っていらっしゃる方、ぜひ挑戦してみては?
そして最後に、このGRヤリスRS。現在、現車の次のオーナーを探しています……だったのですが、状況が変わって松井監督はやっぱり手放さずにウェルパイン・モータースポーツのデモカーとして手元に置いておくようです(笑)。これでラリーデビューしたい初心者も安心ですね!