auから8月13日に、UQ mobileから9月上旬以降発売予定のシャオミ「Redmi Note 10 JE」は、シャオミが得意とするコストパフォーマンスに優れた5G対応のエントリースマートフォンだ。モデル名につく「JE」はJapan Editionの略であり、日本向けに開発されたモデルだという。FeliCaのみならずRedmiシリーズ初の防水機能も搭載したRedmi Note 10 JEの開発経緯を、シャオミの東アジア地域ジェネラルマネージャー、Steven Wang氏に伺った。
日本市場に合わせてFeliCaや防水防塵対応
さらにエントリークラスで5Gも!
──Redmi Note 10 JEは日本向けの限定モデルとして開発されたとのこと。日本向けにはどのようなローカライズがされているのでしょうか
Steven Wang氏(以下敬称略) Redmi Note 10 JEは3つの日本向けカスタマイズをしています。1つ目はチップセットにクアルコムのSnapdragon 480Gを採用しました。なお、このチップセットの採用はシャオミでも初めてとなります。2つ目はFeliCa(おサイフケータイ)の搭載です。そして3つ目はIP68の防水に対応させました。この防水対応もRedmiシリーズとしてはRedmi Note 10 JEが初めてとなります。
──Snapdragon 480を採用した理由を教えてください。
Wang Redmi Note 10 JEは日本市場で最も理想的な5Gのエントリーモデルとなることを目指して開発しました。一般的にエントリークラスのスマートフォンはスペックが低く、使いやすいとはいいにくい製品が多くあります。Redmi Noteシリーズは究極のコストパフォーマンスと使いやすさを両立した製品です。Redmi Note 10 JEは価格を抑え、使いやすい機能を搭載するだけではなく、日本のユーザーの皆さんが使いやすいようにカスタマイズをしています。
日本のユーザーの方々はチップセットにも高い品質や安定性を求めています。オールラウンドに優秀であり、さらに最新のエントリー向けチップセットとしてSnapdragon 480を選択しました。なお、現在世界的な半導体不足による製品供給不足が懸念されていますが、Redmi Note 10 JE向けのチップセットはクアルコムから十分な供給量のサポートを受けています。
──FeliCa搭載など、ローカライズする際に意識したことはありますか?
Wang 新製品を出す際にSNSでユーザーからの意見に耳を傾けるなど、日本市場で求められる機能については常に調査をしています。その結果、日本ではローカライズが重要なことを強く認識するようになりました。弊社が日本市場に参入してからは、新製品を出すたびにローカライズを少しずつ強化しています。
シャオミはグローバルで製品を展開しており、強力なサプライチェーンを持っています。新製品を出す時は、様々なコンポーネントをどのように組み合わせるかを検討します。さらには市場はどのような機能を求めているか、価格はどのレベルに設定するか等、様々な要素のバランスを検討します。日本市場はユーザーニーズがほかの国と比べてユニークな市場です。これまで日本向け周波数の対応やFeliCa搭載など新しい機能を搭載しローカライズを進めていきました。今回は新しいチップセットや防水へ対応させることで、日本市場のニーズに合った製品に仕上がっていると思います。
防水対応のために内部構造を見直す
──Redmiシリーズ初の防水対応で苦労した点はありますか?
Wang 防水対応は内部アーキテクチャーの再開発が必要ですしコストもかかります。開発チームとして初のチャレンジであり「防水の認証が本当に取れるのだろうか」というリスクを抱えながら開発しましたが、何度もテストをし、かなりの時間をかけ実装できました。
──Redmi Note 10 JEのように、特定の市場向けに特化した製品はほかの国でも展開しているのでしょうか?
Wang 中国では独自機種を多数出している一方で、グローバル向けには市場ごとに小さなカスタマイズをしています。しかし、Redmi Note 10 JEは今までのカスタマイズと比べると、より深いローカライズになっています。ここまでのカスタマイズはシャオミとしても初のことです。
なぜ、Redmi Note 10 JEをここまでカスタマイズしたかと言うと、シャオミにとって日本は重要な市場と位置付けているからです。Redmi Note 10 JEは日本のユーザーが満足するローカライズが必須だと考えたのです。また今回は、KDDIとパートナーシップを結びました。KDDIの販売チャンネルに深い信頼を寄せていることも日本限定モデルを出す後押しとなりました。
──Redmi Note 10 JEのカメラは4800万画素に加えて、200万画素のマクロ、200万画素の深度測定という組み合わせです。最近は超広角を搭載したモデルも増えていますが、Redmi Note 10 JEはなぜこのカメラ構成にしたのでしょうか。
Wang 新製品にどのような機能を搭載するかはユーザーニーズ、コスト、製品デザインなど様々な要素から決定します。個人的には超広角カメラはレンズやセンサーに対する要求が高く、本体サイズにも大きな影響を与えます。確かに市場にはエントリーモデルで超広角カメラを搭載した製品もありますが、実際に使って納得のいくクオリティーの写真が撮影できるかどうかは別の話になります。
スペック表の数字の見栄えをよくするために無理してウルトラワイドカメラを搭載することよりも、使いやすいカメラを搭載することがユーザーエクスペリエンスを高めると思います。Redmi Note 10 JEは4800万画素高画質カメラ、至近距離もきれいに写せるマクロ、そして美しいポートレート撮影用の深度測定カメラの組み合わせが最適と考えました。
──スマートフォンの保護やカスタマイズとしてケースをつけることが当たり前になっています。Redmi Note 10 JEはケースは付属しますか。また今後シャオミやサードパーティーからケースを出すことは考えているでしょうか。
Wang Redmi Note 10 JEをはじめ、弊社の製品の多くには無料でケースをつけています。また日本はケースやディスプレイの保護シートを張り付けるユーザーが特に多い市場と認識しています。将来はケースの展開なども検討したいと考えています。
シャオミが目指すのは単なる「安いスマホ」ではない
最も優れたコスパのスマホである
──2021年2月にソフトバンクから発売された「Redmi Note 9T」は5Gモデルながらもかなりの低価格で発売され、価格も大きくアピールされました。Redmi Note 10 JEも価格を抑えたモデルですが、今回も価格を強く訴えるのでしょうか?
Wang 弊社の製品はどのモデルも価格競争力は非常に強いと思います。Redmi Note 10 JEもエントリーモデルの価格で販売されます。しかしマーケティング上、価格を最も重要視して製品をアピールしていきたいとは考えていません。弊社はどの製品でも価格ではなく最も優れたコストパフォーマンス、すなわち「最も高い価値のある製品を提供すること」を考えています。
Canalysの調査では、シャオミは2020年にスマートフォンで世界シェア2位となりました。これは弊社が10年間スマートフォンビジネスを続けた中で初めてのことです。弊社で最も売れているRedmi Noteシリーズは累計販売台数が全世界で200万台を突破しました。またKantarによるブランド力調査「ブランドZ 100」で70位にも入りました。
Wang これは弊社のビジネスモデルが他社とまったく異なるからです。シャオミの製品は安さそのものではなく、価格性能比で他社製品よりも優れた製品を提供することを目指しています。Redmi Note 10 JEも、この弊社のビジネスモデルの思想をそのまま日本で展開しようと考えています。
──ありがとうございました
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2021年に入ってから立て続けに低価格なスマートフォンを日本に投入しているシャオミ。シャオミのコストパフォーマンスに優れた製品は日本市場で着々と存在感を高めている。日本ではこれから5Gの利用者拡大が見込まれているが、FeliCa搭載のみならず防水にも対応したRedmi Note 10 JEは「誰もが使える便利な5Gスマホ入門機」としてヒット商品になる可能性を秘めている。新製品投入の手を止めないシャオミの動きはこれからも注目だ。