メモを取った場所の記憶を手繰り寄せるクイックメモ
クイックメモは、言ってしまえばメモアプリの機能を強化して、アプリを使っていないときでも、どこででも使えるようにしたもの。しかし、それだけでは片付けられない画期的な機能を備えている。連想記憶のような、人間の記憶の呼び出し方法を取り入れたように見えるもの。使い方によっては他に代わるものがない強みを発揮しそうだ。
まず、どこでもクイックメモを取る機能自体は、それほど驚くようなものではない。たとえば、Safariなどのページでメモとして残したいテキストを選択し、マウスの右(副)ボタンをクリックして表示されるメニューから、「新規クイックメモ」、または「クイックメモに追加」を選べばいい。
ちなみに、以前のメモアプリでも、この同じメニューにある「共有」サブメニューから「メモ」を選ぶことで、選択範囲のテキストをメモとして残すことはできた。クイックメモは、同じメモアプリに記録されるものの、それとは別物だ。
これで新たにクイックメモが作成され、内容を確認できる新規メモのウィンドウが表示される。
このウィンドウは、メモアプリが表示しているもので、この状態ではすでにクイックメモはメモアプリに記録されている。メモアプリのメインウィンドウでも、他のメモとともに、メモの内容を確認したり、編集を加えたりすることが可能だ。
ここまでは、クイックメモによって記録したものが、メモアプリに集約されるというだけで、言ってみれば当り前の機能だ。
ちょっと驚かされるのはここからだ。このメモのことはいったん忘れて、再びメモを取ったウェブページを開いたとしよう。この場合はアップルのNewsroomのMontereyのページだ。するとそれだけで、画面の右下に、どこからともなく、このページで取ったメモが、ミニチュア表示でポップアップしてくる。
このポップアップをクリックすれば、上で見たようなメモの確認、編集ウィンドウが開く。これは、いわば場所と記憶を結びつけるような画期的な機能だろう。人間も、ある事柄を知ったり聞いたりした場所と、その記憶そのものが結びつくことがある。その結果、そうした事柄に再び触れると、その場所を思い出したり、逆にその場所に行くと、その事柄を思い出したりする。これは、場合によって、非常に面白い効果を発揮するものと期待できる。
クイックメモとは直接関係ないが、メモアプリには他にも大きな機能の進化が盛り込まれている。1つのメモを複数のユーザーで共有して編集する場合、誰がどのような編集をいつ加えたかを簡単、確実に把握できるアクティビティの表示機能と、メモの内容にタグを付けて分類、検索する機能だ。今回前者は試していないが、後者はすでに実用的な機能として動作していることが確認できた。
これまでも、メモアプリはアップル製の複数のデバイス間で情報を交換したりする際に、意外に便利に使えると感じられる存在ではあった。しかし、今回の機能強化で、その存在感自体が何段階もレベルアップしたように感じられる。活用範囲も大きく膨らんで、情報交換、蓄積、活用のためのメインアプリにまで昇格しそうな勢いだ。
今回は、Facetimeやメッセージなど、Montereyの新機能として真っ先に挙げられるような、目立つ機能には目をつぶり、個人としてMacを使う際に、特に生産性の向上に直結するような機能を中心に取り上げた。一見地味なMontereyだが、成熟の粋に達したような機能が組み込まれていて、実際に登場するのが楽しみだ。
この連載の記事
-
第22回
Apple
仕事&エンタメに無双の活躍!macOS Montereyパブリックベータを試す -
第21回
Apple
iPadとMacの境界がさらに曖昧になる「iPadOS 15」パブリックベータの注目点 -
第19回
Apple
アップル「iPadOS 15」は日本語の手書き文字認識に対応で、仕事にも勉強にも便利 -
第18回
Apple
iPhone「iOS 15」パブリックベータを体験! 即戦力になる機能はこれだ -
第17回
Apple
Apple Watch「新watchOS 8」パブリックベータ、集中モードやマインドフルネス試した -
第16回
iPhone
iOS 15のパブリックベータが広くインストール可に 新機能「集中モード」に注目 -
第15回
iPhone
iOS 15/iPadOS 15のパブリックベータが登場 -
第14回
Apple
アップル担当者に聞くwatchOS 8に初搭載「マインドフルネス」アプリの効果 -
第13回
Apple
WWDC2021 トピックの時間配分から浮かび上がるアップルのプライオリティ -
第12回
Apple
Apple Musicに「空間オーディオ」登場! 楽しむ方法を徹底解説 - この連載の一覧へ